「にほん」と「にっぽん」どっちが正しい?
「日本」という文字を読むときに「にほん」と「にっぽん」と2種類の読み方がある。
NHKのアナウンサーなどは、
「にっぽん」
と発音するし、今話題のニッポン放送もそうである。
紙幣には「日本銀行券」と「NIPPON GINKO」と印刷されているから、これも「にっぽん」である。
一方、東京の「日本橋」は「『にほん』ばし」と読むし、「日本書紀」も「『にほん』しょき」と読む。
さて、どちらが「正しい」のだろうか?
いろいろ調べてみると、政府としては、「にっぽん」が「正しい」としたかったようである。
実は、読み方を統一しようとした動きが戦前にあったらしい。
1934年(昭和9年)に文部省臨時国語調査会で「にっぽん」に統一された。
(例外的に前出の東京 日本橋と「日本書紀」だけは「にほん」と読むことになった)
しかも、その時に外交文書における国号の英文表記を「Japan」から「Nippon」に変更されたという。
ちょうど、この頃、満州事変が勃発。
侵略行為を非難された日本は、国際連盟を脱退し、次第に世界の中で孤立を深めていたころである。
そうした中で「保守回帰」が起こり、「Japan」ではなく、「日本」を採用。
穏やかな語感の「にほん」よりも音韻的に力強い「にっぽん」を選んだという経緯があったようである。
文部省臨時国語調査会の決定を受け、帝国議会でも審議された。
1941年(昭和16年)には、帝国議会で国号である「大日本帝国」の発音を「だいにっぽんていこく」と定めるべく検討がされたが、結局保留のまま法律には至らず。
日中戦争などの戦局の悪化や太平洋戦争直前でもっと大きな問題が山積していたのせいもあったのだろう。
そして、戦後。
1946年(昭和21年)、帝国憲法改正特別委員会で「日本国」と「日本国憲法」の正式な読み方について質疑行われた。
この時の金森徳治郎 憲法担当大臣は、
「決まっていない」
と答弁し、再びうやむやに。
その後、この件は忘れ去られたと思いきや、戦後25年が過ぎた1970年(昭和45年)に札幌冬季オリンピック開催の前のタイミングで再び復活。
同年7月に佐藤 栄作内閣は、「日本」の読み方について、
「『にほん』でも間違いではないが、政府は『にっぽん』を使う」
と、「にっぽん」で統一するとの閣議決定を行ったが、やはり法制化にまでは至らず。
こうしてみると、戦前の延長線上で政府は「にっぽん」という読みを推して来たようである。
どうも「にっぽん」の呼び方に権力臭を感じたのもそのせいかも知れない。
同じように考える向きもいるようで、現在の日本で純粋な意味で唯一の「野党」ともいえる日本共産党。
やはりというか「日本共産党」は「『にほん』きょうさんとう」と読むそうです。
今は、社会民主党(社民党)と党名が変わってしまいましたが、旧名の社会党は、正式名称を「日本社会党」と言っていました。
この時の読みは「『にっぽん』しゃかいとう」。
同じ左翼政党でしたが、読み名をみると、両者の権力からの距離というかスタンスの違いが感じられてなかなか興味深いものですね。
あなたは、「にほん」と「にっぽん」どちらを選びます?
私ですか?
私は強制されることと、他人と同じことをするのが大嫌いなので、昔から「にほん」派でした。
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コメント
初めまして。いつも興味深いお話、楽しく拝読しています。
私も「にほん」派です。
だいたい、パピプペポの音は日本語らしくないですよ。
そもそも日本語だって「にっぽんご」なんて読まないし。
それにしても「ひのもと」っていう読み方はどうして定着しなかったんでしょうね?
「にほん」にせよ「にっぽん」にせよ音読みだから、そもそもは中国式の読み方ですよね・・・
投稿: KYO | 2005/03/17 22:02
こんばんは、KYOさん。
はじめまして。
ご訪問&コメントありがとうございました。
同じ意見の方がいらっしゃってうれしいです。
変に力んで「にっぽん」と言わなくても、もっと自然体でいいんじゃないかなって思います。
昔は「やまと」とか言ってたみたいですね。
「日本」になったのも、当時から、大国のマネをしたがっていたのではないでしょうか?
昔、中国。今、米国といった具合に。
そう考えると、「やまと」から「日本」に変わった時、その頃の日本人からには、「南セントレア市」みたいなイメージだったかも知れませんね(笑)
投稿: cyro | 2005/03/23 00:42