そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『死神公女フリージアはさよならを知らない』について

こんにちは、神島竜人です。今回は『死神公女フリージアはさよならを知らない』について紹介します。


死神公女フリージアは、さよならを知らない (角川スニーカー文庫)
著者:綾里けいし
イラストレーター:藤実なんな
レーベル:角川スニーカー文庫
発売日: 2024/10/1
出版社: KADOKAWA
ASIN: 9784041153161

あらすじ

死神は人と繋がり恋することで――最期にすべてを理解した

「私は人が生き抜いた末の『死』が観たい。その果てに、なにが遺るのかを」
『死』を学ぶためだけに現世を旅をする死神がいる。死神公女フリージア・トルストイ・ドルシュヴィーア。
異世界の中でも高位な存在であり、現世の『死』を知りたいと願った彼女は、付き人である少年、《人の死期がわかる》異能を持つ黒朗夏目と、様々な人間の『死』を看取る旅をする。
寿命という概念と無縁だから、人間と親しくなったことがないから気付かなかった、抗いようのない一つの事実。
彼女がそのことに気付く、その刻まで――旅は続く。

ヒロインは死を観察する死神

 異色の作品です。最初はどういう気持ちで読めばいいのかわからずに世界観に引き込まれながら読みました。
 徐々に死を観察する、というヒロインの目的が見えてきて序盤のどんでん返しがフックになって最後まで読み進められました。
 話の構成としては死神のヒロインが寿命が見える相棒とともに死の運命にある人たちを観察して。その死に際の行動から死を理解しようとする作品。
 つまりは余命もの。
 石田衣良さんの『約束』とか、携帯iランドの『恋空』、片山恭一さんの『世界の中心で愛を叫ぶ』、伊坂幸太郎の『死神の精度』、漫画だと『イキガミ』、映画だと黒澤明の『生きる』も有名です。
 いずれも人生に向き合い、蝋燭の火が消える瞬間の強いまたたきを捉えた、読者を泣かせるためのストーリーが多い。
 そのイメージから私は序盤で、ようはこういう作品だろうな、と予想しながら読み進めました。
 ただ、予想とは大きく外れていて面白かったです。

誰かが近々死ぬという前提で読み進めるミステリー?

 ヒロインの相棒が相手の余命を見ることができる。それにより、だれがいつ死ぬかを知っている。
 その死ぬだれかはだれなのか、という緊張感があります。
 そのギミックがある上で、けっこう変化球が多い。1回目で、典型的な余命ものをやったので。
 2回目もそれ系の話になるかな、と思ったら予想を裏切る話になりました。
 この設定でどうやって話を回すんだろうと思いながらページをめくったのですが、意外と作者の引き出しが広くて驚きます。

今後の展開

 1巻で話としては完成しています。しかし、続巻が出る余白はたくさんあるようにも思います。
 今巻ではいろんな引き出しが見えたので、もっといろんなパターンが見れるだろうな、と思います。
 また、異世界の設定も掘り下げられそうな部分がまだまだありそうです。

『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』1~4巻について

こんにちは、神島竜です
今回紹介する作品は『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』についてです。

男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと1 百合の間に挟まる男として転生してしまいました【電子特典付き】 (MF文庫J)
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと2 百合の間に挟まる男として転生してしまいました【電子特典付き】 (MF文庫J)
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと3 百合の間に挟まる男として転生してしまいました【電子特典付き】 (MF文庫J)
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと4 百合の間に挟まる男として転生してしまいました【電子特典付き】 (MF文庫J)

あらすじ

絶対に百合にはなり得ない新感覚の学園バトル&ラブコメ!

男子禁制のゲーム世界に、どんなルートでも破滅確定のお邪魔キャラとして転生してしまった俺、ヒイロ。迫りくる死亡フラグを回避するには強くなるしかない。そんな必死の努力を重ねた影響か、エルフの姫ラピス、メイドのスノウ、妹のレイ、主人公キャラの桜など、ゲームのヒロインたちから好意を寄せられることに……。このままでは「百合の間に挟まる男」認定されて抹殺されてしまう! やっぱり死ぬの? どうする俺!? さらに、俺というイレギュラーをめぐって彼女たちが争いはじめて……って、女の子同士が仲良くなる設定はどこいったんだよ。百合の間に挟まる男は●ね!

タイトル:『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』
著者:端桜 了(https://x.com/YR_HASAMARU)
イラスト:hai(https://x.com/hai_hyu)
ASIN ‏ : B0C22LKQ2Z
出版社 ‏ : KADOKAWA (2023/4/25)
発売日 ‏ : 2023/4/25

舞台は百合ゲー

 面白い作品です。舞台は百合ゲー。女性同士で子供をつくることが当たり前の世界。主人公は百合の邪魔をする破滅確定の男性キャラ。
 この時点で珍しいアプローチの作品だと感じました。最初は乙女ゲーとファンタジーRPG転生のいいとこどりのように考えました。
 破滅するという自身の運命を変えるカタルシス、それでありながら、ゲーム世界でルールの裏を突いて強くなっていく効率化の追求による爽快な読後感。
 実際、1巻はこの要素の強い作品となっている。

強くなっていく過程が早い

 読んでいて、展開の速さと主人公がどんどん強くなっていく勢いのある展開に惹かれました。
 文章自体が端的で事実を短くしっかりと伝えていくような文章で、それを矢継ぎ早に畳みかけている。それでいて、ライトノベル特有のその時の流行りのアニメネタを意識した主人公視点のユーモラスな語り口をカッコつけずにちゃんとやりきっている。読んでいて、展開の速さが他の作品にはない魅力としてあります。
 たとえるなら、知らないゲームのRTAを見ているような気分です。作中のフラグを踏みながら、レベル上げていくのは、RTA実況特有のこんな方法があったのか!と目から鱗が落ちる感覚に似ています。
 さらに、うまくいっている要素を出しながら、主人公の欲求である百合を大事にしたいという目標を、意図せずヒロインとフラグが立ってしまうでままならぬトホホ要素として出してきているのが面白いです。

バトル展開が熱い

 敵と戦うバトル描写が熱いです。
 なろう作品特有のRTAレベリング要素をしっかりと描写されていることで、バトル描写の作中世界のルールに基づいておこるバトルに読みごたえを感じます。
 物語の展開が早く、主人公と敵が矢継ぎ早にいろんなことをしている場面展開はどうなるかがわからず読んでいてハラハラさせられます。
 敵役がかなり強者としての描写が丁寧でとても良いです。例えるなら、本来なら10巻以降に出るはずの温めておいた秘蔵の強キャラが雑誌の都合で3巻で出てきて、それがライブ感のある作品ですごい盛り上がっているような作品を読んでいる気分です。

主人公がカッコよく、ヒロインの心理描写が濃い

 また、本作は主人公も魅力的に書かれている。主人公は転生した百合ゲーの信者で、作中でも重度の百合信仰を見せます。
 1巻では、なにがなんでも強くならなくてはいけないという目標で行動しています。読者はなろうのテンプレだと思い、RTA要素として楽しむ。しかし、1巻の終盤でそれが作中で起きる悲劇を避けるための行動で、主人公本人はその悲劇を避けるために死にたくないと考えているのであって、百合を守るためなら死んでもいいと考えている。
 レベリング描写を重ねながら、百合を大事にする主人公の要素が丁寧に描かれており、それがヒロインを守るために戦わなければいけないという状況で、すぐに迷わずに危機につっこむことのできる主人公のカッコよさを引き立てます。しかも、普段はギャグとして扱われる向こう見ずな態度が、シリアスな場面ではカッコいいヒーローな姿になるというのが、二面性があっていいです。
 また、作中ではヒロインの心理描写も濃い。主人公がヒロインのために立ち上がり強大な障害に立ち向かう場面で、ヒロインの心理描写が描かれます。そのときに、なぜ彼女はふだんこんな態度をとっているのか。なぜこんなことをしているのか。今何を考え、迷っているのかという情報が矢継ぎ早に開示され、濁流のような心理の流れに圧倒されます。
 そのうえで、この娘が助かってほしいという強い想いが湧いてきたところで主人公が逆転の一手を打つという展開に手に汗を握るのです。

 とても面白い作品です。オススメですので、ぜひ読んでみてください。

『家で知らない娘が家事をしているっぽい。でも可愛かったから様子を見てる』について

 こんにちは、神島竜です。
 今回は、『家で知らない娘が家事をしているっぽい。でも可愛かったから様子を見てる』について紹介します。

家で知らない娘が家事をしているっぽい。でも可愛かったから様子を見てる【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)
タイトル:『家で知らない娘が家事をしているっぽい。でも可愛かったから様子を見てる』
著者:モノクロウサギ(https://twitter.com/monokakiusagi)
イラスト:あゆま紗由(https://twitter.com/ayumasayun)
ASIN ‏ : B0CW1B9ZXV
出版社 ‏ : KADOKAWA (2024/5/1)
発売日 ‏ : 2024/5/1

あらすじ
とんでもない美女が家事を完璧にやってくれて最高!……でもこいつ誰だ!?

どうやら俺にはストーカーがいるらしい。頻繁に自宅に不法侵入してなぜか家事をして帰っているようだ。被害らしい被害もないので様子を見ていたらある日自宅で出くわしてしまう。そのストーカーがとんでもなく美人だったこともあってつい無視し続けたんだけどどうやら受け入れられたと勘違いしたのかそれ以降俺が在宅でも構わず通ってくるし、なんなら事あるごとに話しかけてくるようになった。美人が通って好意を向けてきてるのに未だ会話ゼロ。……なぁ、どうしてこうなった?めちゃくちゃ今更だと思われるかもしれないけど、言わせてほしい。──こいつ本当誰なんだ?

もくじ

ストーカーのいる日常系

 今まで読んだことのない読み味の作品です。主人公の水月は大学生。飲食店でアルバイトしている。彼は大学生になってからは一人暮らし、のはずだった。自分しかいない家で、なぜか掃除と洗濯等の家事がされた形跡がある。自分の下着がいつの間にか新品のものに変わっている。しかし、そうしたことに無頓着な彼は、実害がないため様子を見ていると、ある日自宅で彼女と出くわしてしまう。
 ストーカーがとんでもない美人であったため、無視をすることに決めると、次の日から、彼女は主人公が自宅にいる時にも通うように。さらに、無視を続ける主人公に対して話しかけるようになった。
 今までにない展開の作品のため、新鮮な気持ちで読みました。ヒロインがとても可愛いです。
 奇妙な同居生活(?)はどうなるかわからない緊張感があり、ページをめくる手が止まりませんでした。
 主人公の視点だと、彼女の正体はすぐには明らかにならないのですが、中盤で彼女の友達の視点に移り、事態の概要がつかめてくるとラブコメとして面白くなってきます。

ヒロインはガールズバンドのボーカル、中盤の展開は必見

 ヒロインの名前は千秋蘭、主人公と同じく大学生。ガールズバンドのボーカル。抜けたところがあり、思い込みが激しい。水月がアルバイトしている飲食店の常連。
 千秋はナンパをされているところを彼に助けられたことをきっかけに好意を抱くようになり、ひょんなことから彼の自宅のカギを入手する。
 そこから彼女のストーカー行為がはじまり、水月との奇妙な関係につながる。
 バンドメンバーからの詰問により、自身のストーカーの経緯と行為を暴露した彼女。
 ちなみにこのバンドはメジャーデビューが決まっている。ボーカルの犯罪行為が表ざたにならないように、メンバーたちは千秋に謝罪と自己紹介をするように促した。
 ここから、千秋は大学から帰ってきた水月に自己紹介し、無視し続けていた彼ははじめて彼女と会話し、勝手にやっていた家事が公認になる。

進展した関係? 続きはどうなるのか?

 そして、何気ない(?)日常がつづられ、会話をするようになった彼女から自身のバンドのイベントに誘われ、見に行った主人公。
 そこから関係の進展したかのような異常が日常となった緩やかな描写で終わる。
 話の展開や主人公の行動には緩急はないけども、設定はどうなるかわからないものがあり、目の離せない作品でした。
 ライトノベルでよくあるヒロインに悩みがあって、主人公がそれを解決するみたいな展開がなく、本当に日常を観察し続ける読書体験だったのがよかったです。
 ヒロインのガールズバンドが今後どうなるのか。主人公の趣味として明かされていたイラストを描くというのが、伏線のようで伏線じゃなかったので今後関わるのかが気になります。

『小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている』について(ネタバレ注意!)

こんにちは、神島竜です。
今回は『小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている』を紹介します。

小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている【電子特典付き】 (MF文庫J)

書籍情報
タイトル:小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画えお愛しすぎている
著者:望公太(https://twitter.com/nozomikota)
イラスト:桶乃かもく(https://twitter.com/k_okeno)
出版社 ‏ : KADOKAWA (2024/4/25)
発売日 ‏ : 2024/4/25
ISBN-10 ‏ : 4046835400
ISBN-13 ‏ : 978-4046835406
あらすじ:
放課後、部室で密かに行われるのは……打ち切り漫画批評!?

俺、月見里司は高校生で漫画家志望。大人気の漫画誌、週刊コメットの漫画賞で最終選考まで残った経験もあり、今日も今日とて漫画部部室で、デビューを目指してネームを悶々と考える日々……なのだが、異様なまでに打ち切り漫画を愛好している部の後輩の小鳥遊がいつもちょっかいを出してくる。「お前……結局趣味が悪いだけじゃねえか。デスゲームやってる貧乏人を、金持ちが安全圏から見て楽しんでる感覚かよ」「ち、違いますよ! 私が求めてるのは散り際の美しさです! 土俵際の美学です! 敗者の生き様です!」「ただただ人間として面倒くさいな!」漫画同好会部室は、相も変わらず他愛のない会話で溢れている。

もくじ

主人公は漫画家志望、ヒロインは打ち切り漫画を偏愛する女の子。

舞台は高校の漫画部の部室。そこに集まるのは、漫画家志望の月見と1年生の小鳥です。基本的に、二人の漫画トークが中心となる作品です。
ヒロインである小鳥遊(ことり ゆう)は、毎週コメットで連載されている打ち切り漫画を愛しており、家にはその漫画の単行本が5巻まで揃っています。
月見はデビューの準備をしながら、ヒロインと漫画の話をするという内容です。読んでいて面白かったです。会話の内容はTwitterでのジャンプの打ち切りレースに対する反応を思い起こさせます。
会話の内容が上手い作品です。作中に登場する作品は架空の作品なのですが、読んでいると今まで読んできた打ち切り漫画の記憶がよみがえってくる。それでありながら、その作品とは似通らない内容で、かすりそうでかすらないラインで話すのが上手いなと感じました。 

まさかのSF,つづきはどうなるのか!?

今回読んでいて驚いたのが、最後に明かされたループ設定です。小鳥遊は月見との青春をループしていることが終盤に明らかになります。
それは、彼女の意思によって行われるループです。
一応、会話の節々に伏線は貼ってあったのですが、実際に明らかになったら驚きました。
読み返してみると、時間の進みが一般の日常系ライトノベルよりも早く。テキストゲームのノーマルエンドのような、ここで何もしなかったからこのエンディングになった感が強いんですよね。
次巻では、別のルートが見れると思うので、この辺がどうなるかが気になります。

『双子まとめて『カノジョ』にしない?』の1と2巻について

 今回紹介する作品は『双子まとめて『カノジョ』にしない?』です。

双子まとめて『カノジョ』にしない?2 (富士見ファンタジア文庫)
書籍情報
著者:白井 ムク(twitter:https://twitter.com/ShiraiMuku)
イラストレーター:千種 みのり(twitter:https://twitter.com/minori_chigusa)
ASIN ‏ : B0CTZGTCNW
出版社 ‏ : KADOKAWA (2024/2/20)
発売日 ‏ : 2024/2/20

もくじ

読み味が爽やかな双子もの

 タイトル通り、双子をヒロインとした作品です。最近、数が少しずつ増えています。たぶん、disiteのASMRがきっかけになっているのではないか、というのが私の予想です。もしかしたら、他の因果関係があるのかもしれません。
 双子ものの魅力としては約束されたハーレムルートでしょう。双子のタイトルで二人の美少女が表紙を飾る時点で、彼女たち二人と付き合うことになるのが明白ですから。既存のハーレムものと違って、最後に一人の女性を選んでお茶を濁す形にならないだろうな、という安心感があります。
 本作が既存の双子ものと比べて、新鮮に感じた点は読み味が爽やかな点です。
 双子ものって、可愛い女の子二人と付き合いたいというストレートな欲望がメインの要素になるので、インモラルな雰囲気が出てしまうものです。
 しかし、本作は若者たちの青春として爽やかな読み味があるような気がします。
 これは日常描写、キャラクターたちの心理描写がとても繊細で、土台がしっかり作られているうえで、双子とのハーレムが描かれているのがそう読ませてくれるのかもしれません。
 1巻で、主人公は双子の妹の千影と学校で、クラス内でのテストの成績で争い、交流を深める。さらに、放課後に姉の光莉とゲーセンで知り合う。
 主人公が二人を同一人物と勘違いして、二面性に振り回されながらもどちらの彼女のことも好きになる。そのうえで、誤解が進んだまま二人に同時に告白したかのような形になる。
 その流れはとても緊迫しており、かつ楽しんで読むことができた。二人が双子であるということを読者だけが知っている状況で、進んでいく状況と個々のキャラクターの葛藤。
 そこからの急展開からの告白により公になる事実と混とんを極めた状況。そこでの問いに対する答えはどちらを選ぶかというのになるものですが。ここで出る第3の問いの「双子まとめて『カノジョ』にしない」という第3の選択。
 

文殊の知恵、第3の選択肢

 読んでいて思うのは、この作品はキャラクターの葛藤が丁寧に描かれています。それはどの道を行くべきか、という青春のさなかで問われる選択肢であることが多い。もちろん、往々にして葛藤は選択であるものなのだけれども。そのうえで、AかBかという二項対立にとらわれているけども、Cという考えもあるんじゃない? というのが出てきて、解決していく流れがあります。
 双子をまとめてカノジョにするという展開もその第三の選択肢という流れで出てきているため、退廃的な空気があまりなく。爽やかなラブコメとして読むことができました。

2巻は新聞部を中心とした話

 2巻は新聞部での騒動が作品の中心となります。学内でのYoutube活動を行う部活の存在により、古くからある新聞部での存続が危ぶまれていた。新聞部での部員は、スキャンダラスな記事を求めて、主人公たちとぶつかる。それにより、主人公たちは新聞部での立て直しに協力することに。
 今回は主人公と双子が付き合った後の話で、双子との恋愛関係を秘密にしなければいけないのと、新聞部の立て直しの二つの軸がとても面白かったです。
 

次巻は旅行回、行くのは山か海か

 次の巻では、3人で旅行に行くことが示唆されています。
 予想というほどではないですが、山か海かで意見が分かれている以上。このシリーズの場合はどちらも楽しめる選択肢を選ぶのでしょう。
 日本には山と海が両方楽しめる場所はありますから。珍しいことではありません。
 次巻の旅行はどこでどうなるか、読みごたえがありそうでワクワクします。

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『性別不詳Vtuberたちがオフ会したら俺以外全員女子だった』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『性別不詳vtuberたちがオフ会したら俺以外全員女子だった』です。

性別不詳VTuberたちがオフ会したら俺以外全員女子だった (富士見ファンタジア文庫)
書籍情報
著者:最宮みはや(twitter:https://twitter.com/mihayasaimiya)
イラストレーター:あやみ(twitter:https://twitter.com/ayamy_garubinu)
ASIN: B0CPDQW2F3
出版社 ‏ : KADOKAWA (2023/12/20)
発売日 ‏ : 2023/12/20

もくじ

ラブコメたっぷりなvtuberもの

 本作はタイトル通り、性別不詳Vtuberがオフ会したら俺以外全員女子の話です。
 主人公の栗坂恵は、見た目と声が中性的。幼馴染のイラストレーターのプロデュースでvtuber、甘露ケイになる。彼女の勧めで、性別を明かさずにvtuberをはじめる。活動していくうちに登録者数は安定的に増え、コラボする仲間も増えていく。その中でも、同じように性別不詳のvtuberたちと仲良くなる。そのグループはいつしか、リスナーから「性別不詳組」と呼ばれるように。甘露ケイとして活動する栗坂恵はコラボする藤枝トモから強い友情を感じるようになる。そんなトモから「性別不詳組」でのオフ会を提案される。
 藤枝トモは普段から小学生男子のようなセクハラ発言を繰り返すキャラであったため、暗黙のうちに、トモを含めたグループのみんなを男性だと考えていた主人公はそれを了承し、オフ会に参加する。
 しかし、オフ会で出会った相手は全員女性であった。
 強い友情を感じていたトモも男性でなく、清楚な女性であったことに驚く主人公。出会ったばかりのトモこと、志藤留依は栗坂恵にとって不可解な行動ばかりとるが、彼はそれを女性と勘違いされていて、男性だったことにショックを受けたためだと誤解しながら、女性であった彼女と話し合い、変わらぬ関係を誓う。
 しかし、そのやり取りは彼女にとっては告白のようなものと受け取られ、両者すれ違いの関係がはじまった。
 ラブコメ要素がたっぷりはいった面白い作品です。Vtuberを扱っていますが、内容としては【オンラインゲームを舞台にしたラブコメ】と【お前女だったのかモノ】のいいとこどりの展開はワクワクさせられました。
 

ヒロインの志藤留依がかわいい

 メインヒロインである志藤留依がとてもかわいい。彼女は日常でのペルソナはおとなしい内気な女の子ですが、vtuberでは下ネタをしがちな性別不詳。栗坂恵とのやり取りでのボタンの掛け違い具合はコミカルで可愛いです。恥じらいながらも主人公にアタックする姿はムッツリ感がありかわいい。1巻のストーリーラインは、性別不詳組のアマネ・エーデライト(入江栞莉)と三宅猫ミイ(西園寺令)のvtuberと日常の兼ね合いの中で起きる悩みを解決する話が展開されるのですが、志藤留依の暴走は彼女たちの悩みでシリアスになりそうな場面を緩くする重くなりすぎないようにしてくれます。
 彼女の暴走は可愛くコミカルでありながら、物事の閉塞感を打開する一手につながっている。ここがヘイトを買わずに可愛さだけを摂取できる塩梅でとても推せます。

女の子の悩みを解決していく

 1巻は、同じグループのvtuberである入江栞莉と西園寺令の悩みを解決する話となっています。それはvtuberとしてのペルソナと日常を生きる彼女のペルソナ。その間となる内面的な揺れ動きに関わるものです。開示されていく設定はキャラクターたちが地面に立っているように感じさせる重量感がありました。そのぶん場合によっては物語がシリアスになりそうな話を、メインヒロインの暴走がうまくそうならないように動かしているし、主人公のその時その時の機転が、主人公の読者の好感度を上げます。

今後の展開が気になる

読み終わって、とても続きが気になる作品です。始終ライトノベルらしい明るいラブコメとして読めたと同時に、退屈さを感じさせない起伏がありました。vtuberものは、vtuberのもつリアルさに寄り添えば寄り添うほど露悪的な要素が出そうになるものですが、本作はそういったものがなく、最後までラブコメとして楽しむことができたことがとても好感を感じました。
また、ラブコメが進みながらも、主人公の活躍として大きなイベントが起きており、これがこの作品世界での業界にどのような影響が波及し、主人公にどんな試練をもたらすかも気になります。
さらに、存在感の隠しきれない幼馴染のイラストレーターが今後主人公のラブコメにどう関わるかも気になります。
彼女も配信を見ているわけですから、性別不詳組内での主人公とヒロインの関係性の変化に気づいているであろうことは明確で、主人公に好意を抱いているであろう彼女がどんな行動を起こすのかが気になります。

とても面白い作品でした。続きが気になります。

『佐々木とピーちゃん』8巻について。ネタバレ注意!

さて、今回紹介する作品はこちら、『佐々木とピーちゃん』の8巻です。

佐々木とピーちゃん 8 巡り巡って舞台は学校、みんなで仲良くラブコメ回 ~真実の愛を手にするのは誰だ?~【電子特典付き】

書籍情報
ASIN: B0CS5XDLCW
出版社:KADOKAWA
発売日:2024年1月25日

もくじ

アニメ化決定! てんこ盛りの鍋料理!

『佐々木とピーちゃん』は次のような話です。
独身サラリーマン、佐々木は中年にさしかかるにつれ、かわいいペットと過ごす日々に憧れていた。
そんななか、ペットショップで出会ったインコのピーちゃんに一目惚れし、彼(?)を購入することに。
さっそく家に連れ帰ると、ピーちゃんは佐々木に語りかけた。彼が言うには、自分は星の賢者、ピエトロであり、異世界からこちらの世界に転生したとのこと。
佐々木はピーちゃんとの出会いをきっかけに、彼の魔法で異世界と現実世界を行き来し、異世界で商人として成功する。さらに、ピーちゃんから魔法を教わるようになる。
そんななか、女性が不思議な力を持った男性に襲われる場面を目撃した佐々木。ピーちゃんから教わった氷柱を飛ばす魔法で女性を助ける。
しかし、助けた女性は異能力に対抗する公安の特殊捜査官だった。助けた佐々木は彼女にスカウトされて捜査官となる。
こうして佐々木は、異世界で商人をやり、現実世界で異能力者としての二足のわらじを履くことになる。
さらにはデスゲーム、魔法少女、宇宙人とさまざまな事件に佐々木は巻き込まれていく。
このシリーズの面白いところが、巻ごとにそれぞれの事件を解決していくのでなく、1 巻のなかに複数の事件が同時進行で進み、時に絡み合う点である。
世界観の違う話が絡み合っているのに、わかりづらさがないのはとても面白い。
話が進むにつれて、キャラクターたちが宇宙人の十二式を中心に擬似家族を作る展開もワイルドスピードを彷彿とさせる。
現在、アニメがはじまっており、二期も楽しみにしている作品だ。

佐々木たちが学校に潜入!?

宇宙人の十二式が学校に行きたいと言ったため、佐々木と二人静は彼女の護衛と監視のために教師をすることに。
十二式が進学した学校にはお隣りさんがおり、5巻から登場のマジカルブルーも十二式の監視のために転校する。
佐々木が教師をするという展開はとても興味深かった。佐々木、二人静、星崎たちを束ねる上司である阿久津との会話が知能指数が高くて好きです。
高校生である星崎が学力の面で今回の潜入で不向きであることは予想できましたが、そこから体育ならできると言った星崎に、体育の問題を出す場面はコミカルで良かったです。

二人静のヒロイン力が強い

今回、佐々木は数学の教師に。二人静は英語の教師になりました。
いわば、職場の同僚としての関係で物語が進んでいく。そのため、二人静の活躍が必然的に増え、ヒロイン力が上がるのを感じます。
現時点で佐々木と一番親密なヒロインのように感じます。
のじゃロリババア、昨今では王道ゆえに独自の味付けを追求する風潮があるため、王道を味わうことが逆に難しい。二人静はそんななかで、目新しさがありながらも古き良き味わいを感じさせる素晴らしいヒロインです。
今後も活躍する場面が見たい。
しかし、今巻でヒロイン力が偏って上がっているのも事実。
今後のヒロインレースで他ヒロインの活躍を見ていきたいところです。

トリックスター、十二式

今回、宇宙人の十二式も魅力的に描かれています。明確にはされていませんが、作中でピーちゃんと競り合う勢いでつよいであろうキャラ。
いわば破壊神ビルスみたいな、機嫌を損ねると地球がヤバいともされている彼女は、物語を動かすトリックスターとしての役割を持ちはじめています。
彼女がいるからこそ、世界観が違うキャラたちが一つのチームとしてまとめられていてこの作品の台風の目となっている。
今後の動きに目が離せません。

9巻では、十二式はyoutuberに興味を持った様子。次巻でどんな展開になるのか、今から続きが楽しみです。

『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』について

今回紹介する作品は、『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』です。

なぜかS級美女達の話題に俺があがる件 (角川スニーカー文庫)

不思議なすれ違いの恋愛

 読み味が普段読むラブコメと違ってて楽しめました。

 主人公の晴也はふだんはクラスの影に隠れた地味な人間。休日はオシャレをして出かける。自己肯定感が低い。
 休日にナンパに絡まれた少女を助ける。休日明け、クラスのS級美女達の一人、小日向凛が休日に素敵な男性に助けられたことを語る。
 教室にいる誰もが、S級美女たちに直接話しかけはしないまでも、気になって聞き耳を立てる。
 晴也は凛の話に既視感を覚える。なんと、彼女は休日に助けた少女だった。
 彼女のなかで、自分が過剰に評価されていると感じた主人公。彼なりに、評価を下げる行動を取るも、教室で語る彼女の晴也像は変わらず、むしろ高くなっていた。

 すれ違い系のラブコメ。最初に立てた計画は崩壊し、予想外の結果を得る。
 ラブコメの日常パートは読んでて楽しかったです。主人公にとっては放課後や休日の一場面なのですが。オシャレで変身をしているという要素は非日常感があり、読んでてワクワクしました。
 また、主人公だけでなく、ヒロインも服装や帽子、アクセサリーで見た目が変わる世界観で。それぞれの正体がいつキャラクターどうしでバレるのかが、話の展開を読めなくしており、日常パートでもワクワクして読めました。
 この作品、晴也と凛の恋愛パートの振り返りが教室でのS級美女たちの会話でされています。
 これにより、フィードバックを主人公も知るのが面白い。リアクションが読んでて楽しく。主人公のコミカルさと、ヒロインの魅力を引き立ててる。

登場人物たちの秘密が気になる

 本作品はライトノベルの1巻です。
 つまりは2巻、3巻と続きを見据えた作品であるということです。
 その上で、1巻で一人のヒロインとの交流を描いた作品です。
 でありながら、主人公は教室と教室の外で別の見た目を持っている。また、読者にだけわかる形で、S級美女と評されるヒロインたちも教室での姿と外での姿が違う。
 両親、人間関係、なにかしらの理由で構築された社会性。社会的ペルソナと、その内面に閉じられた心理的ペルソナ。
 その二つの境目を行き来しながら、ペルソナが分裂したトラウマと向き合い融和する。
 ある種の二重人格もののようなストーリーラインになっている。
 と、なると他のヒロインや主人公にも同じ側面があるのは想像に難くない。
 他のキャラクターたちや主人公も魅力的なので、どんな秘密があるのかが気になります。

 オススメの作品なので、ぜひ読んでみてください。

『男嫌いな美人姉妹を名前を告げずに助けたら一体どうなる?』1巻と2巻について

 今回紹介する作品は、『男嫌いな美人姉妹を名前を告げずに助けたら一体どうなる?』の1巻と2巻です。

男嫌いな美人姉妹を名前も告げずに助けたら一体どうなる? (角川スニーカー文庫)

男嫌いな美人姉妹を名前も告げずに助けたら一体どうなる?  ライトノベル 1-2巻セット

 


**美人姉妹から溺愛

 美〇女文庫かってくらいエロい展開のあるラブコメです。主人公の堂本隼人は、ハロウィンの日に、強盗に襲われた隣家の新条姉妹とその母を助ける。

 その時にカボチャの被り物をしていた堂本は、名前も名乗らずに去っていった。

 その後、妹の藍那と姉の亜利沙に正体がバレ、交流を深めていく。

 

 美人姉妹と主人公の交流は、パンパンに膨らんだ風船がさらに空気が入れられていくのを眺めているかのよう。

 主人公の視点からは美人姉妹とのドギマギとした触れ合い。美人姉妹の視点からは腹を空かせた熊の巣に蜂蜜が塗られた鹿がやってきたかのよう。主人公に対する恋の熱量がすごい。

 挿絵を担当するぎうにうさんの肉感のある絵の雰囲気も相まってかなりエロい。

 

 1巻は、どういう話かまだわかってなかったので、次の瞬間には主人公が押し倒されているんじゃないか、というスリルがありました。

 

**交差する心理描写による盛り上がり

 ちゃんとエッチなラブコメをやりながら、心理描写を密に描くことができてるとこがすごいです。

 主人公の視点があって、姉妹たちの視点がある。それぞれの心理が熱量を持ちだして、交わった瞬間にカタルシスがある。

 描かれているのは3人の日常であり、その積み重ねによる収束は予想の範疇なんですが、過程の熱量が私をワクワクさせました。

 

 近々、みょんさんの別の作品も読みます。

 また、続きや新作も楽しみに待っています。

『好きな子に告ったら、双子の妹がオマケでついてきた』

 今回紹介する作品は、『好きな子に告ったら、双子の妹がオマケでついてきた』です。

 

好きな子に告ったら、双子の妹がオマケでついてきた(ブレイブ文庫)1【電子版特典SS付き】

 

 タイトル通り、双子とのラブコメです。

 主人公は告白した好きな子から、私の妹とも付き合ってほしいと言われ、2人と同時に付き合います。

 すごいのは最後から最後まで予想よりも双子要素が強いことなんですよ。

 読み終えた気分は次郎に来て、軽い気持ちでニンニクヤサイマシマシと唱えたら予想以上の量が出た気分です。

 序盤から高級マンションで双子を侍らす主人公。俺がまわりが羨むような状況になったのは、と回想シーン。告白したら相手は双子だった。

 そこから、双子との同棲、イチャラブと進んでいくスムーズな展開は王道をしっかりやっててよかった。タイトルで期待してたものが出たぞとワクワクして読み進めました。

 ライトノベルでありながら、エッチな場面が多かったのも期待以上でした。

 で、ありながら後半の急展開には驚きました。物語に隠されていた新事実の提示、ストーリーに緊張感がもたらされたのはワクワクしました。それでいて急展開に冷や水を浴びせられたような気分にはならなかった。

 それは後半の展開に双子という要素がかなり深く絡まったもので、タイトルと表紙で期待した方向性のまま突き進んでくれたからですね。

 だからこそ、問題と向き合う主人公に深みが増しつつ、展開は序盤のエロ展開を後半もやってくれてたのが良かったです。

 ヒロインの双子姉妹以外にも魅力的なキャラクターの存在が匂わされており、2巻が楽しみです。

 

 

 

 

『歴史に残る悪女になるぞ』4巻について

 今回紹介する作品は『歴史に残る悪女になるぞ』の4巻です。

 

歴史に残る悪女になるぞ 4 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!【電子特典付き】 (ビーズログ文庫)

 乙女ゲームの悪役令嬢転生ものの4巻。

 とても面白い。幼い時に前世の記憶を取り戻した主人公が悪役令嬢の運命を覆すどころか、むしろ悪女として歴史に名を残そうとする話。

 チート要素のある作品で、幼い頃からさまざまな経験を積んで周りを驚かせる描写が読んでいて心地いい。

 話が進むにつれて、ヒロインが世界の中心になっていくような感じがあり、どうなっていくんだろうと続きを気にならせます。

 4巻では、本来の乙女ゲームのメインヒロインの無自覚な魅力魔法によって国外追放されてしまった主人公。

 主人公が追放先の国の闘技場で活躍し、王子の騎士となっている。国には二人の王子がいて、玉座を狙っている。

 その王子たちの問題を部下として解決していき、関係を深めている。主人公を国外追放した国では、主人公がいなくても自分たちができることをしようと仲間たちが頑張っている。

 主人公がチートで問題を解決していくところには王道な爽快感があります。また、主人公は人誑しなところがあるので、それによって周囲が変わっていくところは読んでいて気分がいい。

 乙女ゲームのメインヒロインの子が魅力魔法を使っていることが、4巻ではかなりフォーカスが当たっていて、そこが主人公の人格的な魅力を映えさせています。

 悪役をやりたがるヒロインという、珍しいキャラクター性を持ったキャラのやってきたことが周囲に残してきた影響がわかる巻でした。

 国外追放されて主人公がいない学園で彼らはなにをしているかみたいな話が今回は多いです。

 だから、ヒロイン以外のキャラの心理的な深掘りがされていて魅力が上がった気がします。いなくなった空白が明確なので、戻ってきたらどうなるんだろう、とワクワクさせられます。

 

 5巻が今から楽しみです。

 

 

 

 

『悪役令嬢ですが、私をあなたの性奴隷にしてください! (美少女文庫)』について

 今回紹介する作品は、『悪役令嬢ですが、私をあなたの性奴隷にしてください! 』です。

悪役令嬢ですが、私をあなたの性奴隷にしてください! (美少女文庫)

 

 面白かったです。

 乙女ゲームの世界に転生した主人公。名前はカイト。カイトは悪役令嬢の従者として産まれる。

 現世で悪役令嬢であるクリスティーナのファンだったカイト。転生してから、彼女の従者となって悪役令嬢にならないように裏でサポートをする。しかし、悪役令嬢ルートにいってしまい、クリスティーナは国外追放に、もちろんカイトもついていく。

 

国外の宿、クリスティーナに告白されるカイト。しかし、内容はクリスティーナをカイトの奴隷にしてほしいというものだった。

 

お嬢様はドMだった、という展開はよくあるものだが、使い手によって王道は覇道にもなりうる。

 

国外追放という主人公以外によるべのない身の上での告白。だれにも邪魔されない道中だからこそできるプレイはストーリーが進むごとに過激さを極めます。

 

国外追放という、悪役令嬢ものの典型的なイベントが、意中のものとの蜜月のひとときに変わる。ラストには今までのプレイに、逆転の一手が隠され、思わぬ形で一本の線につながる点も面白かった。

 

 

 

『タイツの黒髪同級生・阿津木ダイヤがそのおみ足でグイグイ迫ってくる (美少女文庫)』について

 今回紹介する作品は、『タイツの黒髪同級生・阿津木ダイヤがそのおみ足でグイグイ迫ってくる (美少女文庫)』です。

 

タイツの黒髪同級生・阿津木ダイヤがそのおみ足でグイグイ迫ってくる (美少女文庫)


着衣と裸、どちらがエロいかで男友達と盛り上がる主人公。裸の方がエロいと力説する主人公をヒロインは呼び出した。

なぜ自分だけ呼び出されたのかわからないままついてくると、ヒロインからタイツが好きであることを告白される。

流れでタイツ派と裸派で口論する二人。

ヒロインは一週間かけて主人公をタイツ派にする勝負を持ちかける。

 

読んでてタイツに詳しくなった気がします。

タイツを使ってのプレイを月曜から日曜までの一週間かけて行う。

ヒロインのタイツに対する知識の深さもさることながら、タイツがどうエロいのかの言語化が凄まじかった。

ストーリーも、期限を設けて競い合ううちにお互いのことを好きになるというもので、タイツが絡まなければ王道の恋愛ドラマだ。

相手をタイツ好きにしたいのに、タイツに関わらずに主人公自体を好きになりつつあるヒロインの葛藤は読んでて面白い。

その上で、タイツによって秘めた恋心の出力手段がおかしなことになってるとこがどう転ぶかわからないハラハラ感のある話になっていた。

最終的に全身タイツで主人公にローション奉仕をするまでに至ったところは、これはエロいのか? と困惑したが、そこを含めて面白かった。 

 

 

 

 

『小説が書けないアイツに書かせる方法』について

今回紹介する作品は、『小説が書けないアイツに書かせる方法』です。

 

小説が書けないアイツに書かせる方法 (電撃文庫)

 

インポテンツの主人公が、自身の体験をもとにした官能小説を書いて新人賞を受賞。

しかし、彼は次の作品を書けないでいた。

そんななか、現れたヒロインに私の考えたストーリーで小説を書いてほしい、書かないと周囲にあなたが官能小説の作者であることをバラすと脅迫される。

 

面白かったです。

タイトルと表紙で殺伐とした作品かと思って読みました。意外とヒロインと主人公のやりとりはコミカルです。冒頭で姉と弟の情事が描かれていたため、主人公に家族関係の凄惨な過去があるのかと思いきや、姉と妹は頭がおかしいだけでほのぼのとさせられる日常シーンが多かったのが印象的だ。

 

主人公の姉と妹がかわいいので、この二人の活躍が読みたくなりました。これからの続巻に期待したいです。

 

メインヒロインもかわいい。ヒロインが大学生で、主人公が高校生。歳の差がいいですね。ヒロインがモデル体型なとこも主人公との背の高さの違いがありそうでよかったです。

 

だからこその、関係の逆転にはトキメキを覚えざるおえない。

 

大人っぽいヒロインの妙にザコいところがよいです。お互いが何かしらの傷を抱えていて、それを舐め合うのではなく弄り合うような関係性はこの2人だからこその関係性な気がします。

 

二人の執筆ネタも、単純に共感を求めるあるあるネタに留まってなかったのがよかったです。作者の考えてることをキャラに喋らせてる感じがなかったです。二人のそれぞれの考えって感じがしてよかったです。

 

恋愛要素がよかった。終盤の主人公とヒロインの焦ってぇぇなっ!て言いたくなるようなやりとりが良かったです。二人とも根がコミュ障だからですかね。通じてる部分があるんだけど踏み込めてないかんじがよかったです。そこがあるから関係が進んだ時に気持ちが盛り上がりました。

 

キスしたことがないからわからないって、ヒロインが言い出した時。「言うと思った!」って思いながら読んでたんですけど。二人ともしないって結論が出て、ラップ取り出したあたりで、「あ〜あ、はいはいそういうことね」て思いながら読んでたんですけどね。

ギャグを読む体勢で読んでたらガチな感じになったんで油断したとこにボディーブローが来ました。いい感じに手のひらの上で転がされたな〜と思いました。

 

挿絵もよかったです。

効果的な場面でタイミングよく主人公の表情がわかる絵が出た時が心をグワっと掴まれた感じがしてよかったです。

 

面白かったです。続きが読みたいです。

 

 

 

『となりの悪の大幹部!』について

 今回紹介する作品は、『となりの悪の大幹部!』です。

となりの悪の大幹部! (電撃文庫)

 

 面白かったです。

 

 本作は次のような話です。

 主人公の草間ミドリは世界史を担当する教師。フィギュアを集めるのが好き。しかし、それは仮の姿。

 彼は戦隊組織、バンショクジャーのバンショクグリーンだった。

 悪の秘密組織、クリアードとの決戦を終えた彼の隣室に褐色の未亡人、アシェラーがやってくる。

 ミドリは彼女が以前の決戦で倒したはずの大幹部アイルシェラッドに酷似していることに驚く。

 人間として普通に生活している彼女との交流に戸惑うミドリ。そんななか、次第にミドリとアシェラーは深い仲に発展していく。

 そんな日常の裏で、バンショクジャーは新たな敵組織との戦いをはじめる。

 

 

 タイトルと表紙で特撮要素のあるほのぼの日常系かな、と思って読みはじめました。その予想を超え、特撮系のバトル要素がしっかりいれた上で、ヒロインとの恋愛要素、日常要素もしっかり調和されている作品であったので、驚きつつも引き込まれました。

 

 世界観がよかったです。この作品世界の成り立ちに悪の組織と思われたクリアードが深く関わっていて、単純な勧善懲悪にできない、という点が、どう話をまとめるのか、とページをめくる手を早めさせました。

 

 ヒロインと主人公の恋愛関係も良い。お互い大人だからか。結婚した後が想像できそうなやりとりがとても見ていたくなる関係性でした。この関係が続けばいいのに、と思うほど敵対関係であった過去と不明瞭な未来が不安を煽っていたのがよかったです。

 

 新たな敵組織の秘密が明らかになっていくにつれ、戦いに緊張感が走り、その余波が日常を侵食していく雰囲気も良かったです。そこがラストの展開でいろんなのが合流してきた感じにカタルシスがありました。

 

 終盤にかけて激化していくバトル描写もよかったです。ピンチな場面でも悲壮感がなく、アクションがカッコいいという印象で読めました。キャラクターの心理がポジティブに向いているので、キャラに感情移入しすぎてつらい気持ちで読まなきゃいけないとこがなかった。

 

 本作にはなんとかしなきゃいけない問題がはっきりと明示されるのですが、主人公が前のめりに問題に向き合っているのがよかった。

 

 最終曲面で一つに向かってみんなで進んでいくとこがよかったです。

 

 面白い作品でした。続巻が早く読みたいです。

 

 

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