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この“第三の手”ったら便利!! 「パナバイスジュニア」
スタパ齋藤 スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


この“第三の手”ったら便利!!

 秋葉原の千石電商フにゃ田さんとハンダごて物色しつつ話をしていたら、パナバイスジュニア(Panavise Jr.)という名のバイスがかなりイイらしい、adafruits industriesで売ってるゾ、てなコトを聞いたので、わりと即座に買ってみた。お値段$28.00


パナバイス(PanaVise)社のパナバイスジュニア。高さ170mmの小さなバイス(万力)だ。日本では常磐商行が販売代理店のようだ

 パナバイスジュニアは、いわば“万力”ですな。サイズは高さ170mmで、ジョー(挟む部分)のサイズは25×45mm程度。ジョーの最大開口幅は73mm。いわゆる万力としては小さく、そして繊細な部類に入る。質量も600gと軽量だ。

 どちらかと言えば、第三の手とかヘルピングハンズと呼ばれる補助具に近い。電子工作、模型作り、手芸なんかでは、作る対象を何かに固定し、それに対して両手で作り込みを行うが、保持用の手が1本増えた感覚で作業できることから“第三の手”と呼ばれている。


ホビーショップなどでよく売られている第三の手(ヘルピングハンズ)。自由に動くアームの先にクリップのような保持具が付いている 例えば第三の手に基盤を持たせておけば、基盤を固定したまま両手でハンダ付けなどの加工ができて便利だ パナバイスジュニアに基盤を持たせたところ。関節機構があり、ジョーを自由に旋回させられるので、第三の手のようにも使える

 で、ですね、これまで写真(上/左)のような第三の手を使っていたんですけど、このタイプはどーも拙者に向かないんですよ。アーム可動部のロックとリリースが煩雑だし、台座が軽めなのですぐに動いたり倒れたりしちゃう。便利は便利だが、どーも実際は頼りないと思うことの方が多かった。

 が!! パナバイスジュニアは違った!!

 まず台座の安定性が良い。軽量とは言え一般のヘルピングハンズよりは重めで、接地面積も十分あるので倒れにくいし動きにくい。

 また、バイスとは言っても、実質は第三の手。自由雲台のような関節を持つので、一般の第三の手のように自由な向きに動かせる。これにより、小さな対象から大きめ(幅170mmまでの軽いモノ)までを扱える。


このように小振りの基盤などなら完璧にシッカリと保持してくれる 関節部(自由雲台のような構造)により、このように角度や向きを自由に変えられる。角度などの変更は、関節部のツマミ(ひとつ)を緩めたり締めたりする程度で行えて手軽 基盤の端をつまむように挟んでも使えますな

 てなわけで、買ったその日から定番工具的に使い続けている。

 ……というだけだと、ここまでで終了する記事なんだが、その後、拙者、パナバイスシリーズのイカシた世界を垣間見ちゃってハマって現在に至ったので、以降、そのあたりの話を。


パナバイスにハマった理由

 パナバイスジュニアは便利だニャ~と思いつつ、多用していたあるとき。「てか、パナバイスって何よ? パナソニック?」とか思って調べてみたら、PanaVise Products, Inc.というマウント類のメーカーが作った製品であった。

 へぇ~、とか思ってパナバイス社のページを見ていたら、ほかのパナバイスシリーズを知ってビックリ!! しかもそのシステマチックなこと!!

 どういうコトかと言うと、一般的なバイスは、ま、フツー、挟む部分と台座を分離できない構造ですな。下の写真のように。


工具店などで売られているフツー的なバイス。台座部分は滑らかな机上になら吸盤で固定できるシクミになっている こちらもフツーの市販品。バイス部分が自由雲台的機構で各方向へと向けられるようになっている。これも台座が吸盤式。拙者、吸盤式バイス好きなんです~ パナバイスジュニア。横のふたつのバイスと同様、台座と関節とジョー機構の部分は一体化している

 上の写真のバイスは、それぞれ別の用途で使う感じ。対象をガシッと固定するだけなら、左端のを。対象をガシッと固定し、かつ、ジョーの向きを動かしたいなら中央のを。小ぶりのモノを挟んで第三の手的に使うなら、右端のパナバイスジュニアを、てな感じだ。

 しかし実際、対象が変わるたびにバイスも変えてたら、なんか面倒だし、効率良くないし、みたいなモヤモヤ感が残っていた。例えばパナバイスジュニアは便利だが、ときどき「コレの操作感でさらに台座がガッシリしていたらなぁ」と思うことも。

 パナバイスシリーズのイイところは、ジョー部(バイスヘッド)、台座(バイスベース)、台座固定部(バイスベースマウント)を自由に選んで使える点。これにより、台座部分はそのままで、ヘッドだけ交換したりすることで、作業に最適なジョーを使い分けたりできる。


パナバイスのシステム図。ヘッド、ベース、ベースマウントを自由に組み合わせて使うことができる。8×3×5=120通りの組合せだゼ~!! みたいな。(画像はパナバイスシリーズに付属のカタログから抜粋) こちらはパナバイスジュニアのシステム図。ベースマウントのみ(パナバイスシリーズのものを)追加できる。少しシステマチック。(画像はパナバイスシリーズに付属のカタログから抜粋) ジョー部分のパーツやアクセサリも用意されている。ジョーは、ナイロンジョー、耐熱のテフロンジョー、鉄のジョーに真鍮のジョーと豊富だ。(画像はパナバイスシリーズに付属のカタログから抜粋)

 ここまでシステマチックなバイスなんて……すげッ!! と思いましたよええ。と、同時に、パナバイスシリーズには、パナバイスジュニアと同じヘッドが用意されていた。

 ので、早速小型のベースとなるModel:305と、パナバイスジュニアと同じ機構のヘッド部であるModel:203を買ってみた。ら!! コレ、それまで使っていたパナバイスジュニアよりさらに便利なんですけどっ!!


パナバイスシリーズのModel:305(ベース部分)とModel:203(ヘッド部分)を組み合わせた様子 ジョーや関節の使い勝手はパナバイスジュニアと同じだが、台座部分が重いぶん、より高い安定感とともに使える 台座部分にはもともと自由雲台のような関節があるので、このように超低い位置にジョーを構えることができる。関節がふたつになったことで、バイス自体の自由度が一気に増したのだ

 なーんで今までパナバイスシリーズの存在を知らなかったのかーッ>俺!! とか思いました。マジで。深く。痛恨なほど。

 てか、このModel:305 Low-Profile Base + Model:203 PV Jr. Headの組合せ、電子工作な人やミニ四駆改造な人や鉄道模型な人、あるいはプラモ塗装な人や、さらにアクセサリ自作な人まで、けっこーオススメできるバイスでありかつ第三の手かもしんない。

 さておき、この便利さ&システマチックさを知って以降、毎日のようにパナバイス社のページを閲覧して「そうか、あのベースがあれば机上にペタリと吸着するニャ」とか「このクランプ、やっぱ一台要るような気が」と、パナバイスシリーズにハマっていった。


じゃあ、このベースも、こっちのベースマウントも

 案の定、その後、パナバイスシリーズの各部ユニットを買い増した拙者。

 まず、机上にペタリと吸着するベースであるModel:380 Vacuum Baseを追加購入。これがあれば、前述のModel:305 Low-Profile Base + Model:203 PV Jr. Headを使用時「机上にもっとガシッと固定したい!! てなときに便利なのだ。


Model:380 Vacuum Base。ある程度滑らかな机面などであれば、かな~り強力に固定できる吸盤式のベースだ。質量は800g。 Model:380 Vacuum Baseと、Model:305 Low-Profile Base + Model:203 PV Jr. Head。前述のとおり、ヘッドを別のベースに差し替えて使える ヘッドを差し替えたところ。いや~、システマチックなバイスって楽しいですな

 やっぱ吸盤のベース、いいわ。木の地肌が出ているテーブルとかだと固定できないが、表面が樹脂とか金属のテーブルなんかだと、重いバイスのような安定感が得られる。なお、Model:380 Vacuum Baseの机面へのロックやリリースは本体横にあるレバーで行う。

 次いで買ってみたのが、ベースマウント。台座部分を固定できる“台座の台座”で、重量を増してバイス全体の安定感を増したり、ちょいとした機能を付加したりできるというものだ。具体的にはModel:312 Tray Base Mountてのを買った。


Model:312 Tray Base Mount。1kg弱ある円形の薄いベースマウントで、周囲にネジや部品といった小物が入る皿がある。付属のネジでベースを固定する 裏側。付属のネオプレン製の脚6個を貼り付けて使う。滑りにくくてナイスである Model:305 Low-Profile Base + Model:203 PV Jr. Headの組合せをベースマウントに固定したところ。安定感アリ&小物入れ機能追加でなかなかイイ!!

 てな感じ。拙者のパナバイスシリーズ各部が、どんどん進化する!! 的な喜びも。で、イイのはイイんだが、このベースマウント、ちょっと大き過ぎたかも!? てか、ベース+ヘッドが小振りでアンバランスなのか!? うーむ。

 ちなみに、少々前述したが、最初に出てきたパナバイスジュニアは、パナバイスシリーズ用のベースマウントに固定することができる。パナバイスジュニアとModel:308 Weighted Base Mountあたりの組合せは、ちょっと渋くて良さそうですな。……と思った瞬間買ってみた!! そして試してみた!!


Model:308 Weighted Base Mount。2.3kgもあるので安定性はバッチリ。てか、ベースマウントの機能としては“かなり重い”という点のみですな 裏面。付属する4つのネオプレン脚を貼り付けて滑り止めとする 付属のネジでパナバイスジュニアを固定したところ。なかなか良いバランスかも

 こんな感じ。だが、やっぱ、ジュニア系のヘッドを使っていると、どのベースも少々大きすぎる感じですな。

 ん~む、じゃあ、そうか、このベースマウントにマッチするベースを買い、さらにこれらにマッチするヘッドを買えばいいじゃないか!! そうだ買うゼ買うゾ今すぐ買……というあたりで、原稿の締め切り日が来てしまい、ほかのモノはまだ買い足しておりません。でも、きっと、近々買うような気が。

 なお、パナバイス、Digi-keyMOUSERでも売られているようだ。世界的に定番なんですかコレ?


パナバイスの難点

 パナバイスの魅力はヘッド、ベース、ベースマウントを自由に組み合わせられるというシステマチックな点。これは非常に良いと思う。恐らく拙者、今後のバイス生活(←なんやソレ)はパナバイス一筋になりそう。

 とは言え、難点も少々ある。ひとつは、各ユニットをコンプリートしたくなるということ。

 いや冗談ではなく、工具ってそういう側面ありますよね。「たぶんこのユニットは使わないよな~」と思っても「ん~でも一度使ってみたいニャ~」と思って、悩んだりする時間の無駄。そして結局買っちゃったりして、一度しか使わずに死蔵するというムダ。こういう各種無駄を誘発しやすいですな。

 ま、無駄とは言っても、そーゆームダを削除しちゃったらホビーの楽しさが大きく減退しちゃうと思うんですけどネ。

 もうひとつ、日本製とかの万力や、専門的なバイス系工具と比べると、工作精度が低い気がするパナバイス。構造的に大雑把(合理的とも言える)なので、若干、力任せで使うという部分は残る。

 例えば、拙者はパナバイスジュニアと、これと同じジョー機構を持つパナバイスシリーズ用のジュニアヘッドを持っている。このふたつ、関節部分から先はまったく同じパーツで構成されていると思われるが、使用感がけっこー違うのだ。

 具体的には、片方のジョー調節ネジが硬めで、もう一方はスムーズ。だが、このスムーズな方の関節固定がイマイチしっかりできなく、ネジが硬めなほーは関節をビシッと固定できたりする。

 要は品質に小さくないバラつきがあると感じられるんですな。でもまあ、デフォルトではジョーの部分が樹脂だったりするし、第三の手~万力あたりの役割なわけだし、高い工作精度により作られる必要もないんでしょうな。日本人的にはそういう“部分的な大雑把さ”に「もーちょっと精密に作られてたらなぁ」とか思うものの、実用上は大きな問題になっていない。

 難点としてはそのくらい。総じて、用途に合うヘッド、ベース、そしてときにはベースマウントを選んで組み合わせれば、これまでのフツー的バイスにはない快適さが得られるので、興味のある方はぜひイロイロと調べてみてほしい。



URL
  常磐商行のパナバイス製品情報
  http://www.k-tokiwa.co.jp/category02.php?category_id=155

2009/06/22 11:14

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