中国の外貨預金が過去最高、資本流出は杞憂か

中国の外貨預金が過去最高、資本流出は杞憂か
10月3日、中国の外貨預金残高が昨年10月以降、毎月過去最高を更新している。写真は北京の中国人民銀行(中央銀行)。2008年10月撮影(2012年 ロイター/Jason Lee)
[上海 3日 ロイター] 中国の外貨預金残高が昨年10月以降、毎月過去最高を更新している。一部の市場関係者の間では、中国からの資本流出を懸念する声が出ているが、実際には資本流出は起きておらず、国有部門から非国有部門に外貨がシフトしている可能性がある。
中国では、国内経済の減速で人民元の先高観が薄れた昨年第4・四半期以降、法人の外貨預金が急増している。
中国人民銀行(中央銀行)と国有銀行は過去10年間、一貫して外貨を買い越してきたが、昨年第4・四半期以降はたびたび売り越しに転じており、市場では資本流出が近いとの観測が浮上していた。
ただ実際には、資本フローは概ね均衡しており、中国国内の外貨保有構造が変化した可能性がある。
外貨預金のデータと中銀・国有銀行の外貨購入データを突き合わせると、外貨は国外に流出しているのではなく、国有部門から非国有部門に流れていることが浮き彫りとなる。
中国招商銀行のアナリスト、Liu Dongliang氏は「非国有部門に流れる外貨の割合が増えており、国有部門の外貨管理が減っている」と指摘。
「今後、中国の外貨は双方向の動きになるだろう。国有部門が一方的に外貨を購入するという現在の構図が早晩崩れ、元の相場観に基づき、国有部門から非国有部門へ、もしくはその逆に流れるという構図になるだろう」と述べた。
<QE3の影響も>
人民元は、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和第3弾(QE3)を受けて再び上昇しており、為替アナリストは中国からの資金流出は一段と考えにくくなったと指摘している。
元はQE3を受けたドル安を背景に、9月の月間上昇率が今年最高を記録した。
人民銀行のデータによると、8月末時点の国内の外貨預金は前年同月比62%増の4151億ドル。
個人の外貨預金はほぼ横ばいだが、法人の外貨準備は3246億ドルと過去最高を記録。外貨預金全体の78%を占めている。
外貨預金総額は、中銀などの外貨準備(3兆2000億ドル)の13%に相当する。数年前までは、ほぼすべての外貨を国有部門が保有していた。
中国への資本流入は2011年後半以降、ペースダウンしている。外需の減少で輸出が伸び悩み、海外からの直接投資(FDI)が減少するなか、一部のルートを通じて資本が流出した形跡がみられる。
今年1─8月のFDIは前年同期比3.4%減の750億ドル。
第2・四半期は、中国の金融機関に海外から17億9000万ドルの株式投資があったが、中国の金融機関はこの間、海外株式を3億7500万ドル買い越している。
人民銀行のデータによると、人民銀行・国有銀行は8月に27億6000万ドルの外貨を売り越した。一方、8月の外貨預金はほぼ同額の26億4000万ドル増加している。
1─7月でみると、人民銀行・国有銀行は、平均80億ドルの外貨を買い越した。買い越し額は前年同期の平均の500億ドルを大きく下回っているが、1─7月の非国有部門の外貨預金は月平均217億ドル増加しており、買い越し額の減少分の多くが帳消しになっている。
ある国有銀行のトレーダーは「今年は、中銀・国有銀行ではなく、国内機関が外貨資産を増やしている」と指摘。「データをみると、今年の資本流出入はほぼ均衡している。年内はQE3の影響で資本流入が優勢となる可能性もある」と述べた。
規制当局も、非国有部門への外貨シフトを奨励している。
国家外為管理局は7月、「このところ外貨の保有が中銀から国内の機関・個人にシフトしている傾向がみられる。こうした流れは非政府組織が外貨準備を保有するという国家の長期的な政策に沿うものだ」との声明を発表している。

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