新興国通貨の下落止まらず、売りはメキシコや韓国にも拡大

新興国通貨の下落止まらず、売りはメキシコや韓国にも拡大
8月22日、新興国からの資金流出が続き、売りはメキシコペソや韓国ウォンにも及んだ。写真はウォン紙幣。ソウルで2010年10月撮影(2013年 ロイター/Lee Jae-Won)
[ロンドン 22日 ロイター] - 米緩和縮小観測が高まるなか、22日も新興国からの資金流出が続き、インドルピーとトルコリラが最安値を再び更新、インドネシアルピアは4年ぶり安値に下落した。売りはこれまで比較的安定していたメキシコペソや韓国ウォンにも及んだ。
米連邦準備理事会(FRB)が前日に公表した7月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、FRBが現在月額850億ドルのペースで実施している債券買い入れの規模縮小に着手する時期について手掛かりはほとんど示されなかった。
FRBが9月に緩和規模縮小に着手するとの観測が後退しなかったことで、米10年債利回りは上昇。INGインベストメント・マネジメントの新興国市場ファンド投資ストラテジスト、マーテン・ジャン・バクム氏は、「米国債利回りが今後さらに上昇するのは目に見えているため、米金融政策に大きく影響される新興国の資産に対するエクスポージャーを持つことは望ましくないと誰もが考えるはずだ」と述べた。
米国債利回りが約2年ぶりの高水準に上昇するなか、新興国市場からの資金流出が加速。新興国株価<.MSCIEF>は5営業日続落し、年初来の下落率は13%に達した。
トルコリラは1ドル=1.9915リラまで下落、2日連続で過去最安値を更新した。
HSBC(イスタンブール)のストラテジスト、アリ・カキログル氏は、「追加利上げの実施、さらには中銀の緊急政策決定会合の実施もあり得る」としている。
インドルピーは1ドル=65ルピーを下回り、過去最安値を更新。週初からの下落率は約5%に達した。
インドネシアからの資金流出も歯止めがかからず、格付け会社フィッチ・レーティングスはこの日、インドとインドネシアに対する市場の信認がさらに低下すれば、両国の信用格付けを引き下げる可能性があると警告している。
ブラジルレアルは、同国中銀がスワップ市場で約300億ドル規模の介入を行ったにもかかわらず約5年ぶり安値に下落。同中銀はこの日、スポット市場でレポ取引を通して最大40億ドルのドル売りを実施する。
南アフリカランドは4年ぶり安値を更新した。
新興国通貨に対する売りはこれまで、外国からの資金流入への依存度が高いインド、南アフリカ、トルコ、インドネシア、ブラジルが主な対象となっていたが、INGのバクム氏は、売りはこの5カ国以外にも拡大していると指摘。「タイやメキシコなども、成長予測が外国からの潤沢な資金流入に基づいているため、ぜい弱性が増している」との見方を示した。
タイバーツは3年ぶり安値に下落。これを受け、タイ中銀副総裁はタイバーツの過度な変動に対して行動する用意があることを表明した。
他の新興国通貨では、韓国ウォンが2週間ぶり安値を付けたほか、メキシコペソも前日に続き一時下落。ロシアルーブルも、ユーロとドルで構成される通貨バスケットに対し約4年ぶり安値を付けた。
アナリストの間では、新興国通貨に対する売りがまもなく収束するとの見方は出ていない。過去10年間に新興国に流入した資金のうち、これまでに還流したのはほんの一部に過ぎないからだ。
トムソン・ロイター傘下のリッパーのデータによると、7月末までの3カ月間に同社が分析対象としているグローバル新興国株式ファンドからの資金流出は約80億ドルと、運用されている資産全体の2%以下にとどまっている。
バーリング・アセット・マネジメントの新興国債券部門責任者、タナシス・ペトロニコロス氏は、「中長期的には、新興国市場に対して前向きな見方を持っている」としながらも、「短期的には一段の不安定性が予想される」と述べた。

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