編集部で意見衝突!「サマーレッスン」にがっかりしたところ、期待する理由

恋は盲目……になるか?

編集部で意見衝突!「サマーレッスン」にがっかりしたところ、期待する理由 - サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム
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Playstation VRのローンチタイトルとして10月13日にリリースされる「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム」(サマーレッスン)を東京ゲームショウ2016でプレイしてきた。

本作ではプレイヤーは家庭教師となり、勉強が苦手な女子高生である宮本ひかりの夏休み明けのテストの成績を上げるために7日間限定の短期講習を行う。試遊ではその講習の前の宮本ひかりとの顔合わせのシーンを体験できた。製品版では、どんなスケジュールでどういった学習をしていくのかを毎日選んで進めていくことになるが、今回の顔合わせでは家庭教師の紹介所から紹介されて宮本ひかりの部屋に行き、本人と挨拶をするシーンまでの約5~10分程度だ。

この数分間のゲームプレイへの感想について、実はIGN JAPAN編集部内で意見が割れている。小笠原は「伝統的な恋愛シミュレーションゲームをそのままVRにする必要があったのか」と、対するクラベは「ゲームをプレイして初めて本物の人間と接している気持ちになった」と言う。編集部の今井による「PSVRのアイドルの座は誰に!アイドル系ローンチタイトル」の記事でもサマーレッスンについては触れているが、この記事ではより詳しくそれぞれの視点を紹介していきたい。

小笠原が見た宮本ひかりは伝統的な恋愛SLGの中の妄想の女子高生だ

私は新しいガジェットやテクノロジーが好きで、VRタイトルのプレイも多く経験してきた。「サマーレッスン」を開発するバンダイナムコがお台場に作ったVR研究施設「VR ZONE」にも当然行った。そんな私が今回まず感じたのは、なぜこんなUIにしたのだろうか、ということだった。

操作は宙に浮かぶボタンを視線で選択するか、うなずく・首を横に振るという動作が基本だ。話しかけてくるヒロインの宮本ひかりに返せるアクションは、少なくとも試遊版ではこれだけ。人と話すときに変な方向にある選択肢を見て回答をすることがあるだろうか、無言でただうなずき続けることがあるだろうか。画面が暗転してシーンが切り替わったり、回答の選択肢が表示されるという動きは伝統的な恋愛シミュレーションゲームを想起させた。正直、視線や首を振るよりもマウスのクリックやスーパーファミコンの方向キーで選択したい気分になる(たぶんその方がスムーズだ)。PS VRにはLeap Motionのような機能はなく手の動きなども読み取れないため、できることの限界はもちろんある。しかし、例えば「V!勇者のくせになまいきだR」がこれまでとガラッと操作を変えたように、もう少し工夫の余地があった気がする。なお、最もリアルに感じた操作は家庭教師センターとの電話でのやりとりで、PS4のコントローラーを耳に近づけると声が聞こえる。コントローラーを遠くに離すと声が小さくなる。これは素直に感心した。

次に気になったのは宮本ひかりというキャラクターだ。正直に言うと女の私から見てもとても扇情的だった。話しかける顔の近さにドキドキして目を逸らし、次に視線を向けた先の揺れるスカートの裾からもまた目を逸らした。そして、部屋で宮本ひかりがやってくるのを1人で待っている間に周りを見まわして、知らない若い女性の部屋を覗き見る罪悪感を味わった。別のゲーム内容になってしまうし、悪趣味だと思うが、できればもう少し部屋の中をじっくり探索したい気分にさせられた。

しかし、残念だったのは彼女の行動のリアリティーの無さだ。ある日家に帰ったらいきなり知らない男が部屋にいたのだ。一度ドアを開けた彼女は驚いて部屋を出た後に、ドアの隙間からチラッと顔を出して覗く。そして部屋に入ってきたのだ。そして親しげに話しかけてきた。初対面の男に、だ。顔の位置も近く、やけに馴れ馴れしい。そして、ひたすら話しかけられる。一方的に話しかけずに会話の間を大事にしてほしいし、最初はできれば少しツンとしていてほしい。あくまで体験用に最初から親しく対応をしてくれただけかもしれないが……。こんな女子高生が本当にいたらいくら妄想の世界であっても少し怖いので、製品版では少しずつ距離が近づく内容になっていてくれたら良いなと思っている。

ここまで挙げた細かい点が気になる原因は、現実に近い世界を描いているからだと思う。例えば同じ開発チームが関わっているアーガイルシフト。ここにはサマーレッスンではできなかったことを取り入れているそうだが、操作や体感はよりリアルにしつつも世界やセルシェーディングで作られたキャラクターは非現実的だ。今回の東京ゲームショウ2016でも「スペースチャンネル5」や「拡散性ミリオンアーサー」など現実ではない世界を描いたVR作品があった。サマーレッスンも、理想の女の子がただただ仲良くしてくれるファンタジーな世界だという前提でリアリティーを求めずに楽しむのであれば、宮本ひかりのかわいさも含めて十分に楽しい作品ではあると思う。

クラベがサマーレッスンに期待する理由

僕が初めてプレイしたVRゲームはHTC VIVEの「theBlu」という海を探索する体感型のゲームだ。等身大のクジラを目の前にして、VRの凄みを実感したが、その体験があまりにも壮大すぎて、逆に現実味に欠けていた。もっと何か身近なVRゲームも体験してみたくなった。サマーレッスンは女子高生と対面するだけのゲームだが、誰かと面と向かって会話するほど、日常的なテーマのVRゲームはあるだろうか。一見すれば地味で、派手なアクションゲームやシューティングゲームの方がよほどすごく感じる。だが、それらは我々の日常から遠くかけ離れた体験であり、少し現実と違っても許せてしまうし、そもそも違和感を覚えない可能性が高い。

しかし、どうだろう。サマーレッスンの宮本ひかりちゃんの瞬き方が少しでも不自然だったら、口のパクパクと声が微妙に合っていなければ、近寄られたときにすっぴんがポリゴンだったら、ほかのゲームのように許せるだろうか。もともと「鉄拳」を開発してきた原田勝弘氏が率いるチームにとっても、これは大きな挑戦だったのだろう。格ゲーではキャラクターが遠くから映るので、ある程度誤魔化しは利くのだろうが、目の前にどアップで映り、真正面からでも横からでも後ろからでも観察できる宮本ひかりちゃんは完璧に仕上げないとその存在に説得力はない。

初対面なのに妙に馴れ馴れしくて、独り言のように相手をほぼ無視してペラペラしゃべる宮本ひかりちゃんは確かに変な女だ。彼女がタイプでなければ、気持ち悪いと思うのかもしれない。だが、変でも気持ち悪くても、彼女が本当にそこにいたことは否定できないはずだ。そして、僕の場合、彼女は困ったことにタイプでもあった(笑)。僕は思わずお辞儀をし、近寄られるとどきどきし、相槌まで打ってしまった。彼女に嫌われないように頑張っている自分がいた。たったの数分の体験で、僕をそんな気分にさせたゲームは今までない。

だが、残念な部分も少なからずあった。プレイヤーは宮本ひかりちゃんの話に対して、恋愛シミュレーションゲームみたく、いくつかのチョイスから選んで答える。本当にコミュニケーションをしている気がしなかった。暇なときについSiriさん(iPhoneの音声認識アプリ)に声をかけてしまう時代、音声認識で頑張ってほしかったと思う。また、極めてリアルなグラフィックとモーションで再現された宮本ひかりちゃんがときどき見せるアニメチックな動きはリアリティーの崩壊であり、これで僕の恋心も少しは冷めた。

今回の体験版は短かく、まだまだどういうゲームなのかよくわからない。そもそも、家庭教師らしいことは何もしていない。だが、僕はそれでもこのゲームに期待したいと思う。宮本ひかりは、本当にそこにいた。それだけでも、このゲームを画期的な作品と呼んでいいと、僕は思っている。

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