はてなのミッション

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はてなのコーポレートページを少し新しくしました。一番の変更点は、先日社内で決めたミッションを明確に掲げたことです。
会社情報:はてなのミッション - はてな

はてなは「T型コミュニケーションを促進する」こと=「人と人とのコミュニケーションを促進し、価値ある情報をより多くの人に届ける」ことをミッションとして、これからもサービスを提供していきたいと思います。T型コミュニケーションは社内の造語で、人と人とのコミュニケーションを促進する横棒と、そこから生まれる価値ある情報を第三者に届ける縦棒を組み合わせて「T型」としています。

ミッションの明文化が必要になった

そもそもの背景として、なぜミッションを定めるという話になったかというと、これから新しいサービスをより大きな規模で作っていきたいからです。これからの成長を目指してサービスを作っていきたいと思っているのだけれど、メンバーが増えてきて、なおかつ複数のプロジェクトを同時にやる体力も身についてきた。そういうなかで、全体の大きな力を分散させずに一つの方向へ集約させないと、はてな全体として大きな事業が成し遂げられないと思ったからです。そういう時に必要なのはミッションや理念です。ちゃんと明文化して「その枠内にやることはやるんだけど、枠内に入らないことはやらない」としていこうと。「どれだけそぎ落としても、この要素がないものには頑張れない」という要素は何なのか、を考えました。

今までは直感的に「こういうのは面白いからやろう」みたいに属人的な判断でやっていたことなのですが、それをもっと現場のメンバーが、自分の頭で同じような考えをして判断できるようにならないと、方向性を合わせて全体で一つの価値に向かって力を合わせていくことができないので、こういうミッションをちゃんと決めるべき時が来た、ということです。

この「T型コミュニケーション」は、今まで考えていなかったものを考えついたというよりは、ずっと考えてきたことを言葉にしたものです。これまで『人力検索』『アンテナ』『ダイアリー』『ブックマーク』『フォトライフ』『グループ』『うごメモ』『ココ』…とサービスを作ってきたなかで「これははてなのサービスとして面白い」「これならはてながやるべきだ」という判断がありました。一方で、新しいトレンドがあって周りでそういう新サービスが始まっても「それははてながやるべきではない」と判断したことも当然あったわけです。新しいものを定めたというよりは「はてながやるべきもの」の判断基準を改めて言葉にしたわけです。ですので、奇をてらったコピーライティングをしているわけではありません。

人と人とのコミュニケーションを促進する

最初に頭に浮かんだのが「人と人とのコミュニケーションを促進したい」ということです。ネット上には誰ともコミュニケーションが生じないサービス、例えば淡々と自分のメモを書くツールとか、一人でゲームするとか、コミュニケーション・インタラクションの要素が誰とも発生しないようなサービスがあります。そうしたサービスにも素晴らしいものはもちろんたくさんあるわけですが、どうもちょっと物足らない、ただそれを追求するだけだと真剣になれない、と感じている事に気付きました。「人と人がよりコミュケーションすることを手伝いたい」んだなと考えたのです。

なんで人と人とをもっとコミュニケーションさせたいんだろう、と考えると、自分の価値観として「コミュニケーションを促進することは善である」という大前提があると気付きました。それはなぜか、とさらに考えると、まず自分自身の人生経験も関係していると思いましたが、コミュニケーションは一つのエンターテイメントなので「楽しい」という事があると思います。さらに、コミュニケーションが不足していることで起こる問題というのは世の中に凄くたくさんあります。お互いを理解していないために憎みあったり、争ったりすることが実際多いわけです。例えば一緒に暮らしている家族くらいの密度でコミュニケーションが充実していれば、戦争だって起こらないんじゃないかと思うわけです。そういうコミュニケーション不足に起因している不幸なことは世の中に凄く多くて、そういうものを解決することに役立つことになるのではないかと思うのです。これをやりたい。

そもそも僕がインターネットを面白いと思ったのも、“世界中の人が見られる場所にホームページを作れて、世界と繋がる”というところにあって、そこに興奮したのも“遠くの人とコミュニケーションできる可能性”に惚れ込んだのが理由です。

価値ある情報をより多くの人に届ける

もう一つの、価値ある情報をより多くの人に届けるということについて。コミュニケーションの促進は疑いがないんだけど、「それだけでいいのかな」「なんか足りないな」と感じました。例えばウェブメールは明らかにコミュニケーションを促進させるものだけど、それだけで面白いかと言うと何かが足りない、と感じます。それは何か、と今まで作ったサービスを見返したときに、個対個のコミュニケーションで起こった情報を第三者にも届けるという要素を必ず意識しているし、それを面白いと思っているという、もう一つの側面があったのです。

『人力検索』にしても、個対個で教えあう設計があるんだけど、一方で、そうやって蓄積される回答は、後で同じような質問をする人もきっといるだろうから、インターネットで公開して見られるようにしておきましょう、という要素があります。その要素がないと、インターネットのサービスとして明らかに面白くないな、という意識がありました。質問してる人はお金を払っているわけだから、質問者だけに見られるようにしてオシマイってする考えもあったのでしょうが、「同じようなことを知りたい人が後から出てくるので置いときましょうよ」ということは譲れないラインとしてあったのです。
「せっかく有益な情報が出てきたんだから、世の中の有益な情報を少しでも多く増やしておいて誰でも見られるようにしておきましょうよ」という価値観です。

その後のサービスでも、ブログだったら淡々と書くだけでなく、キーワードで繋がっていく要素を入れて、特定の言葉が気になった人が関連するブログ記事を読めるようにしましたし、ブックマークも自分のために情報をストックしていると、いつの間にか人気エントリーで今話題の情報が集まる仕組みになっています。

そういうわけで「価値ある情報をより多くの人に届ける」という要素も削れない、どれだけ削ってもこの2つは残るな、ということで「T型コミュニケーション」に行きつきました。簡潔に言える言葉のほうが覚えやすいので、「T型コミュニケーション」という言葉を付けました。

ミッションを決めて良かったこと

7月に社内でこのミッションを決めて、これに沿ったプロジェクトを考えていきましょうと動いているのですが、既にミッションをちゃんとを決めてよかったな、と思い始めています。実際、新サービスの構想をするなかで「その仕組みだとTの縦棒が足りないんじゃないか」というような議論が起こっていて、価値観や為すべきことを言葉にすることは、やっぱり重要だなあと感じています。

インターネット上にはいろんな価値観のサービスがあって、それを提供する企業があって、ミッションは企業それぞれだと思いますが、僕たちはこういうことを実現したいという思いで、新しいサービス開発にさらに取り組んでいきたいと考えています。もし一緒に実現したいという方がいましたら、ぜひご連絡ください。