ITサービスベンダーがこれまで生業としてきたシステムインテグレーション(SI)事業は、これからどうなっていくのか。この分野の大手の1社である日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)代表取締役社長の玉置和彦氏に取材する機会を得たので、同社が考えるこれからのSI事業について話を聞いた(写真1)。
3つの新たなビジネスモデル構想とは
「国内のIT需要は引き続き好調だ。受注状況から見ても今後も順調に推移すると見ている。技術的な観点から言うと、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進展し、さらに生成AIから最近ではAIエージェントが注目を集め、企業でのAI活用が動き出した。そのニーズは非常に強いものがあると実感している」
写真1:日鉄ソリューションズ 代表取締役社長の玉置和彦氏
このところの国内IT需要の動きをどう見ているかと聞くと、玉置氏はこのように答えた。そうした状況の中で、同社は2024年4月に2030年を見据えた新たなビジョンとして「NSSOL 2030ビジョン」を策定し、その柱となる「新たなビジネスモデル」の構想を打ち出して、2025年度(2026年3月期)からスタートする新たな3カ年中期経営計画においてその中身を詰めた上で実現を目指すことを明らかにした。その新たなビジネスモデル構想が、まさしくこれからのSI事業を見据えた内容なので、今回はNSSOLのこの取り組みに注目してみた。
NSSOLが2030年のビジョンに向けて新たなビジネスモデル構想として掲げたのは、「次世代SIモデル」「アセット活用モデル」「プラットフォーム提供モデル」の3つだ。玉置氏の話を基に一つずつ説明していこう。
1つ目の次世代SIモデルは、システム開発における「コンサルティング」「エンジニアリング」「プロダクトマネジメント」の全ての領域において、AIをはじめとした革新的な技術を積極的に取り込み、抜本的な生産性の向上に加え、顧客との新たな役割分担を通じて顧客のビジネスへのさらなる貢献を図ろうというものだ(図1)。
図1:次世代SIモデル(出典:NSSOLの資料)
玉置氏は次世代SIモデルについて、「SIの役割はもう終わるという論議もある中で、それを生業としている当社がSIそのものの在りようをどう変えていくのか、というのが最大の問題意識だ。当社としては今後もSIの役割がしっかりと存在し、むしろこれからはSIの本質が一層求められるようになると考えている」と述べ、「SIの本質」について次のように説明した。
「これまでのシステム開発は、多くの人間を動員してプログラムを作成し、その動作テストを行う形で取り組んできたが、これからはそれらの作業がAI技術によってどんどん自動化していくことになる。ただ、そうした作業は自動化するが、その自動化するツールをはじめ、企業内の各業務においてさまざまなツール(製品やサービス)を導入していくようになり、それぞれのツールの選択が的確なのか、組み合わせてデータを連携できるのか、システム全体としてきちんと動くのか、部分最適だけでなく全体最適なシステムになっているのか、という問題が浮かび上がってくる。そうした問題を解決することこそ、SIの本質なのではないか。われわれはそこに立ち返って、次世代のSIモデルを確立していきたい」
さらに、そうした本来のSIに求められる能力として、玉置氏は「お客さまの業務についての深い知見や、最適解を導くための『目利き力』と『適合させる力』だ」と強調し、そこでNSSOLの強みを発揮していこうという考えを示した。