ヤフーは4月1日、インターネットを軸として研究を行う「Yahoo!JAPAN研究所」(当初研究員は約10人)を設立する。自社の今後のサービス開発に役立てるほか、将来的な国内ネットサービスを担う研究に活用されることも想定。日本語解析技術など幅広いネット関連技術の開発・研究について、産官学の取り組みも視野に入れた展開を目指す。
同研究所所長にはヤフー社長の井上雅博氏が自ら就任し、最高技術顧問にはインターネット研究の第一人者である慶応義塾大学教授の村井純氏を迎え入れた。
技術研究の強化をテコに、Web 2.0以降の世界でも圧倒的強さで勝ち続けることを狙う井上氏と、国内最大のデータを持つヤフーを活用し、今後のネット関連研究に役立てたいと考える村井氏。同研究所設立に先立って3月26日に行われた記者会見および会見終了後、両氏がCNET Japanの質問に対して答えた内容をまとめた。
井上氏 目先のことばかりをやっているのでは、競争力を維持するのが大変なのではないかと。また、将来に向けて、(他社の)真似をするだけではなく、自らサービスを作っていきたいという趣旨があります。去年の初めくらいから「ヤフーもそろそろ10年だ」ということで、新しい取り組みを行っていくための一環として、今回の研究所設立(2006年3月28日に発表)を考えていました。
井上氏 ネットは過去10年で見ると、米国の真似をして成長してきた側面が多分にある。ヤフーも米Yahooの成功と失敗を見ながら成長してきた。僕が最近言っているのは、ネットを使う道具はパソコンだけではなく、携帯電話やテレビ、カーナビなどもつながってくる。上等な家電製品は日本がもともと強いということを考えれば、そこ(パソコン以外を含む家電)につなげるようなサービスは、日本が自ら作っていかないと駄目なのではないかと。
また、日本人と米国人の生活には微妙な違いがあります。より身近にネットサービスを使われるようになってくると、日本独自でいろいろとやっていかなければならないところがある。こうした2つの意味合いから、精神的な取り組みも必要なのではないかと考えています。
村井氏 Web 2.0でヤフーがいいものを作るのと、私が研究で重要なことを研究するのとでは違う。これはいい意味で違うと思っていて、もともと研究というのは分からないことをやるのが研究であり、分かっていることをやるのは開発と言います。
ただ、チャレンジングな開発については、分からないことも含んでいる。ですから、これ(研究と開発)はオーバーラップしている部分があるのです。
要は短期研究課題は開発課題に近いものがあり、中長期の研究課題は研究課題そのものとして括れます。これがどこかで連結していくのが大切なのです。企業の研究所ができる時というのは、過去のIBMの研究所など多くの事例でもそうであったように、大変苦労してこのオーバーラップのバランスをどうするのかという問題が出てくる。
従って、ここのところが研究者としてのモチベーション、あるいは研究所の企業活動に対する貢献やパブリックに対する貢献などについて、過去の歴史から見ても、それを運営の中からうまく見際めていかなければならない。おっしゃるように2つの側面(開発と研究)を持つのは、研究所の本質のようなところではあります。
井上氏 補足すると、Web 2.0については研究所というよりは事業部門でやる。研究所で何がやりたいのかというと、この後にWeb 3.0、Web 4.0と続き、Web 10.0というところまであるのだとしたら、ここの部分については当社で作っていきたいという狙いがあります。
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