スマートフォン市場の拡大は、広告主にとって新しく魅力的な、消費者とのコミュニケーションプラットフォームの登場と言える。革新的でエンターテイメント性に優れた新たなデバイスが生み出すユーザの行動の変化に着目し、その特徴をビジネスに活かす。これを可能にするのが、アプリケーションを中心としたGoogleの広告ネットワーク「AdMob」だ。スマートフォンがもたらす消費者行動のパラダイムシフト、「AdMob」の特徴や戦略について、モバイル広告営業部を統括する香村竜一郎氏に聞いた。
スマートフォン市場の伸びがグローバル、国内ともに顕著だ。IDCによると、グローバルのスマートフォン市場の2011年は2010年に比べ55.0% 増加すると予測している。また国内の携帯電話契約者数は1億2,000万台。(社団法人電気通信事業者協会調べ)そのうち、スマートフォンの保持者数は年内に2,100万人を突破し、2014年には3倍の6,000万人に到達すると予測されている(IDC Japanの調査結果から算出)。
グーグル株式会社モバイル広告営業部 統括部長の香村竜一郎氏は、「スマートフォンユーザのトレンドは、即時性、ローカル、ショッピング、エンターテイメントという4つの言葉に表される」と話す。中でもいま、ビジネスの起点として広告主から注視されているのがローカルだ。
Googleのグローバル調査では、モバイル検索クエリの3分の1がローカル情報に関連していることが判明している。また最近Googleが実施したユーザ調査によると、48%のスマートフォンユーザが店舗やサービスを地図アプリケーションで探しており、その結果43%のユーザが実際に店舗を訪れている。さらに商品やサービスの購入にまで至ったユーザが26%あまりにのぼる。
企業にとって今後、これらの特性を活かした顧客へのリーチが鍵になってくるのは間違いない。
スマートフォン向けのアプリを中心に構成されている最大規模の広告ネットワーク「AdMob」の日本国内のトラフィックはここ1年で約14倍に拡大し、広告売上もこれに伴い飛躍的な成長を見せているという。
「AdMob」がこうした成長を遂げているのは、単に市場が拡大しているからだけではない。香村氏は「AdMob」の強みを大きく4つに分け説明する。即ち、
(1)グローバル展開していること、
(2)国内最大級のスマートフォン広告ネットワークであること、
(3)あらゆる携帯端末、OSに対応するクロスプラットフォーム展開が可能な事、
(4)様々な広告主のニーズに対応する豊富な広告フォーマットがあること
だ。追ってこれらを、順に見ていきたい。
まずグローバル展開についていえば、「AdMob」ではアジアや北南米、ヨーロッパなど世界各国のユーザに向けてワンストップでプロモーション展開することができる。近年、増え続けるグローバル展開に積極的な国内企業による活用や、海外企業が日本市場へプロモーション展開を行う際にも活用される事が多く、「AdMob」を通じて、いわゆる広告の輸出入が行われている状況だ。
また「AdMob」広告ネットワークを構成するパブリッシャー(アプリの開発者)は、海外に営業組織を持つことなく日本に居ながら海外からの出稿を自社媒体に取り込める。国内のスマートフォンユーザの半数以上がアプリをダウンロードしているものの、日本ユーザの特徴として有料アプリのダウンロードは極めて少ない。パブリッシャーにとって「AdMob」は重要な収益源なのだ。
国内最大級のスマートフォン広告ネットワークであることは、日本で広告展開したい国内外の広告主から見てもスマートフォンユーザに効率的にリーチ出来るため、大きな魅力となっている。
「AdMob」では、様々な仕様の異なるスマートフォン端末への配信や、iOS(iPhone, iPod Touch, iPad), Android, Blackberry、Windows Phoneなど様々なスマートフォンに搭載されるOSに対応している。広告主にとってはプロモーションを端末やOSの違いによって個別に管理することなく、「AdMob」を通じてシームレスに展開できるため、ナショナルクラスのクライアントによる利用も多い。以前はiOSのみに出稿するクライアントが多かったものの、Android搭載のスマートフォンが急速に普及した事により、今年に入ってからはほぼ全てのクライアントがiOSとAndroidの2つのプラットフォームに出稿するようになったという。
多様多種な広告フォーマットもまた「AdMob」の魅力だろう。現在最も利用が多い広告フォーマットは「click to download」と呼ばれるもので、iOSやAndroid端末用に開発されたアプリのダウンロードを促すものだ。現在「AdMob」上で展開するプロモーションの約6割でこの広告フォーマットが活用されており、ユーザが既に使用しているアプリ上に掲出される広告を介して、新しいアプリのプロモーションが行われるため、非常に親和性の高いプロモーションとして認知され、実際の広告パフォーマンスは非常に高い。他にも、動的訴求力の高い「インタラクティブ動画広告」、視認性、視覚訴求力の高い「フルスクリーンエキスパンド広告」、「click to call(電話でのお問い合わせ促進広告)」、来店促進に活用が期待されるスマートフォンの地図アプリケーションとの連携やTwitterやFacebookなどのソーシャルメディア連携など、ユーザのスマートフォン活用の特徴を捉えたフォーマットを用意している。
「インタラクティブ動画広告」は深度の深いメッセージや新商品のブランディングを動的に訴求したいと考える自動車メーカー、また映画業界などが積極的に取り入れている。またこの広告フォーマットは、動画表示エリア内に複数のリンクボタンを埋め込む事ができ、動画広告閲覧後の興味関心が高まったユーザを企業や商品の公式ウェブサイトやTwitter、Facebookといったソーシャルメディア、商品のオンラインストアなどへ直接誘導できるため、より立体的なプロモーション展開が可能だ。
TwitterやFacebook関連のアプリケーション向けだけに絞って広告を配信する「ソーシャルメディア・パッケージ」も人気だ。明確にTwitterのフォロワー数やFacebookのLike数増加などを目的としたキャンペーン、またアカウント認知を目的としている場合に最適だろう。ソーシャルメディアと強く連携したユニバーサルピクチャーズの映画WOLFMANのインタラクティブ動画広告は、公開前の公開日認知度が29%アップし効果を発揮した。
「スマートフォン市場、そしてアプリ市場の拡大は今後も続くでしょう」と話す香村氏。「アプリケーションのプロモーションはパフォーマンス重視型で、アプリのダウンロード数というダイレクトレスポンスが重要視されます。ですが今後は、どちらかというとブランディングの広告が増えていくのではないかと予測しています(香村氏)」インタラクティブ動画広告や様々なフォーマットのリッチメディア広告など、企業や製品のブランディングを後押しする広告の使用率が高まっているようだ。
携帯文化が根強い日本市場は、本国アメリカからも非常に重要な市場として捉えられており、機能の開発を行うアメリカ側との連携や、クライアントやパブリッシャー(アプリ開発者)へのヒヤリングは欠かせない。また、ネットワークの強化、広告商品としてのクオリティーの向上に取り組むことで、「AdMob」という広告商品の魅力をさらに高めていく。次回は、広告主の視点からのモバイル広告について解説する。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」