第216回国会
第216回国会(だい216かいこっかい)とは、2024年(令和6年)11月28日に召集された臨時国会である。会期は当初、12月21日までの24日間だったが[1]、3日間延長され12月24日までの27日間となった[2]。
概要
[編集]政治資金パーティー収入の裏金問題を受け、政治資金規正法の改正案や、補正予算案の審議が行われた[1]。
政治改革
[編集]各党の法案提出
[編集]- 12月4日
- 12月9日
- 立憲民主党、有志の会、参政党、社会民主党は、政治団体を除き、企業や団体による政党への献金や政治資金パーティー券の購入を禁止する法案を共同で衆議院に提出した。個人献金については、寄付額に応じて税額控除を拡大させる。企業や労働組合などがつくる政治団体からの寄付を禁止の対象から除外しているため、日本維新の会や国民民主党などは不参加[5]。
- 自由民主党は、政策活動費の廃止や、外国人によるパーティー券の購入禁止などを盛り込んだ規正法の改正案を単独で衆議院に提出した。外交機密などに関わる、公開に配慮が必要な支出(当初は名称を「要配慮支出」としていたが、「公開方法工夫支出」に変更)について例外を設け、国会に新たに設置する「政治資金委員会」で監査する[6]。野党が求める企業・団体献金の禁止には一切触れられていない[7][注 1]。
- 12月10日
- 国民民主党と公明党は、政治資金の監視を行う第三者機関「政治資金監視委員会」を国会内に設置する法案を共同で衆議院に提出した[9]。
法案審議
[編集]与野党各党が提出した法案は9本となり、12月11日に衆議院の特別委員会で審議入りした[10]。
12月16日、自由民主党と立憲民主党は、立民など野党7党が提出した規正法改正案に自民が賛成し、「公開方法工夫支出」の新設を撤回することで合意。第三者機関設置に関しては、国民民主党と公明党が提出した法案に両党が賛成する。立民が提出した企業・団体献金禁止法案については、2025年3月末までに結論を得ると申し合わせた[11]。同日、自由民主党は9日に提出した改正案から「公開方法工夫支出」の規定を削除するなどした修正法案を特別委員会に改めて提出した[12]。
12月17日の委員会で、野党7党が提出した法案など3法案が、与党のほか立憲民主党や日本維新の会などの賛成多数で可決[13]。同日中に本会議でも可決され衆議院を通過した[14]。
12月24日、参議院の特別委員会で、与野党の賛成多数で可決[15]。同日中に本会議でも可決され成立した[16]。
旧文通費
[編集]国会議員に毎月100万円ずつ支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)について、使途の公開と残金の返納を盛り込んだ国会議員歳費法の改正案が、12月17日、衆議院本会議で可決され衆議院を通過[17]。
12月20日、参議院本会議で全会一致で可決され成立。2025年8月1日に施行予定[18]。
公開の範囲や方法、頻度、人件費や出張経費など使い道として認められる細目など具体策は先送りとなった[19]。
補正予算案
[編集]12月9日、政府は2024年度一般会計の補正予算案を国会に提出。家計支援として低所得世帯向けの給付金や相次ぐ災害に見舞われた能登半島の復興など、歳出(支出)総額は13兆9433億円[20]。
12月11日、立憲民主党は衆議院予算委員会理事会で修正案を単独で提出。政府案のうち緊急性が低く過大と判断した基金への支出1兆3600億円分の減額を要求。能登半島の復旧・復興へ1000億円の増額を盛り込んだ[21]。
同日、自由民主党と立憲民主党が、立憲案の一部を反映した修正案を自由民主党が提出することで合意。予算案を巡り、野党の修正要求を反映し修正するのは、自民・社会・新党さきがけの3党連立政権下の1996年以来で、極めて異例[22][23]。
同日、国民民主党は、自由民主党、公明党との税制協議での合意(後述)を受け、予算案に賛成すると表明した[24]。
12月12日、衆議院予算委員会で採決され、与党に加えて日本維新の会と国民民主党の賛成多数で可決。立憲民主党は修正部分のみ賛成[25]。同日中に本会議でも可決され衆議院を通過した[26]。
12月17日、参議院予算委員会で採決され、与党に加えて日本維新の会と国民民主党の賛成多数で可決[27]。同日中に本会議でも可決され成立した[28]。
政治倫理審査会
[編集]12月17日、衆議院政治倫理審査会で、政治資金収支報告書への不記載が発覚した自由民主党議員の審査を開始。初日は旧安倍派に所属していた4人が出席。19日までに旧安倍派や旧二階派に所属していた15人を審査した[29]。
12月18日、参議院政治倫理審査会で、収支報告書への不記載が発覚した自由民主党議員の審査を開始。初日は旧安倍派に所属していた4人が出席[30]。23日に1人を、本国会閉幕後の25日に閉会中審査の形で4人を審査。他に18人が出席する意向を示している[31]。
年収の壁、税制協議
[編集]いわゆる「年収の壁」の問題では、立憲民主党は130万円の壁の対策として、社会保険料の支払いによる減収分を給付で補う「就労支援給付制度」を創設する法案を前国会で衆議院に提出[32]、継続審査となっている。国民民主党は103万円の壁の引き上げを促す法案を召集日に衆議院に提出した[33]。
法案の審議は進んでいないが、自由民主党、公明党、国民民主党は会期中に税制協議を進めており、12月6日、子どもを持つ世帯の所得税負担を軽減する「特定扶養控除」の年収要件を103万円から引き上げることで合意[34]。12月11日には103万円の壁を178万円を目指して2025年度から引き上げることで合意した[24]。
トリガー条項
[編集]国民民主党は12月6日、燃油価格の高騰対策として、ガソリン税の上乗せ(暫定税率)部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除などを盛り込んだ法案を衆議院に提出した[35]。
12月11日、自由民主党、公明党、国民民主党は暫定税率の廃止で合意した[24]。
各党・会派の議席数
[編集]
衆議院[編集]計465、2024年(令和6年)11月11日時点[36]
|
参議院[編集]計248、2024年(令和6年)11月28日時点[37]
|
今国会の動き
[編集]召集前
[編集]- 11月14日 - 第215回国会が閉会[38]。
- 11月15日 - 次期国会の召集日について与野党が合意[1]。
- 11月21日 - 衆参両院の議院運営委員会の理事会で、政府は次期国会を28日に召集すると伝達。与野党は会期を12月21日までの24日間とすることで合意[39]。
会期中
[編集]- 11月28日 - 召集[1]。
- 11月29日
- 12月2日 - 代表質問開始[1]。
- 12月5日 - 衆議院予算委員会で集中審議[1]。
- 12月6日 - 参議院予算委員会で集中審議[1]。
- 12月9日
- 12月12日 - 補正予算案が修正のうえ衆議院を通過。
- 12月17日
- 政治資金規正法の改正案など改革関連3法案が衆議院を通過。
- 補正予算案が成立。
- 衆議院政治倫理審査会で裏金問題に関与した自由民主党の議員の審査を開始。19日までに15人が出席。
- 12月18日 - 参議院政治倫理審査会で裏金問題に関与した自由民主党の議員の審査を開始。23日を含め5人が出席。
- 12月20日
- 衆参両院の本会議で会期の3日間延長を議決[2]。
- 旧文通費について使途の公開や未使用分の国庫返納を義務づける歳費法の改正案が成立。
- 12月24日 - 会期末[40]。
- 政治改革関連3法案が成立。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k 臨時国会は28日召集で与野党合意 所信表明演説は29日、規制法再改正など議論へ 産経新聞 2024年11月17日閲覧
- ^ a b "【速報】臨時国会 24日までの会期延長を正式決定 2018年の通常国会以来". TBS NEWS DIG. TBS・JNN NEWS DIG合同会社. 2024年12月20日. 2024年12月20日閲覧。
- ^ 「政策活動費」の完全禁止法案 立憲民主など野党7党が共同提出日本テレビ 2024年12月4日
- ^ 【速報】立憲、国民など野党7党が使途公開義務のない「政策活動費」の廃止法案を共同提出TBSテレビ 2024年12月4日
- ^ 【速報】立憲や有志の会など野党3党1会派が「企業・団体献金禁止」法案提出TBSテレビ 2024年12月9日
- ^ 政治改革めぐり自民が改正案を国会に提出 公明は国民民主と第三者機関に関して提出へテレビ朝日 2024年12月9日
- ^ 企業・団体献金禁止には触れず 政策活動費廃止などの規正法改正案提出 自民党テレビ東京 2024年12月9日
- ^ 首相、企業献金禁止に応じず 表現の自由など理由「禁止よりも公開」朝日新聞 2024年12月5日
- ^ 国民民主党と公明党が政治改革をめぐり 第三者機関設置に関する法案を共同提出フジテレビ 2024年12月10日
- ^ “規正法再改正、決着見えず 各党案が審議入り”. 時事ドットコム. (2024年12月11日) 2024年12月12日閲覧。
- ^ 政策活動費の全面廃止で合意 自民、非公開支出の新設見送り共同通信 2024年12月16日
- ^ 自民「公開方法工夫支出」削除した法案 特別委に改めて提出NHK 2024年12月16日
- ^ 【速報】「政治とカネ」再発防止へ 規正法再改正案が衆院特別委で可決テレビ朝日 2024年12月17日
- ^ 政策活動費を全面廃止へ 政治資金規正法再改正案、衆院通過毎日新聞 2024年12月17日
- ^ 政策活動費の全面禁止など政治改革3法案が参議院の委員会で可決 このあとの本会議で可決・成立の見通しTBSテレビ 2024年12月24日
- ^ 政治改革関連法が成立、臨時国会閉幕 野党7党提出の政策活動費全廃法に与党も賛成産経新聞 2024年12月24日
- ^ 【速報】旧文通費の改革めぐり歳費法改正案が衆院を通過 今国会中に成立の見通しTBS 2024年12月17日
- ^ 旧文通費の未使用分返納へ 法成立、使途範囲なお議論日本経済新聞 2024年12月20日
- ^ 「第2の財布」旧文通費の見直し、具体策は先送り 改正法成立したが朝日新聞 2024年12月20日
- ^ 政府、13.9兆円の24年度補正予算案を国会に提出 経済対策毎日新聞 2024年12月9日
- ^ 立民、補正予算修正案を提出 1兆3600億円減額要求日本経済新聞 2024年12月11日
- ^ 自民、立憲が補正予算案の修正で合意 立憲の要求を一部反映へ毎日新聞 2024年12月11日
- ^ 自民、補正予算案成立へ「両てんびん」奏功 部分連合に選択肢毎日新聞 2024年12月12日
- ^ a b c 今年度補正予算案 国民民主が賛成の方針 「178万円を目指して来年から引き上げる」など合意日本テレビ 2024年12月11日
- ^ 補正予算、今夕に衆院通過 維・国賛成、立民の要求反映時事通信 2024年12月12日
- ^ 補正予算案、衆院本会議で可決…自民・公明・維新・国民が賛成讀賣新聞 2024年12月12日
- ^ 【速報】補正予算案、参院予算委で可決共同通信 2024年12月17日
- ^ 【速報】今年度補正予算案が参院本会議で可決・成立 一般会計13兆9000億円TBSテレビ 2024年12月17日
- ^ 「衆議院政倫審初日 稲田氏ら4人“政治の信頼大きく損ねた”陳謝」『NHKニュース』NHK、2024年12月17日。2024年12月17日閲覧。
- ^ 参議院政倫審 山谷えり子氏“秘書が派閥の指示に従い記載せず”と説明 参議院政治倫理審査会 森氏 太田氏 NHK 2024年12月18日
- ^ 参院政倫審、22人が一転「公開」審査を容認…「議員傍聴のみ」から再び変更讀賣新聞 2024年12月21日
- ^ 「130万円の壁」対策法案を提出 立民 時事通信 2024年11月13日
- ^ 「103万円の壁」法案を提出 国民民主 時事通信 2024年11月28日
- ^ “自公国「特定扶養控除」年収要件 103万円から引き上げ合意”. NHK. (2024年12月6日) 2024年12月6日閲覧。
- ^ 国民民主 「トリガー条項」凍結解除などの法案を国会に再提出NHK 2024年12月6日
- ^ 会派名及び会派別所属議員数衆議院
- ^ 会派別所属議員数一覧 参議院
- ^ 第215回国会(令和6年11月11日~令和6年11月14日) 衆議院法制局、2024年11月17日閲覧
- ^ 臨時国会 28日に召集 今年度の補正予算案など審議へNHK 2024年11月21日
- ^ “勝者なき臨時国会が閉会 補正予算と政治改革法案で与野党痛み分け チキンレースの様相”. 産経新聞. (2024年12月24日) 2024年12月24日閲覧。