片上大輔
片上大輔 七段 | |
---|---|
名前 | 片上大輔 |
生年月日 | 1981年8月28日(43歳) |
プロ入り年月日 | 2004年4月1日(22歳) |
棋士番号 | 251 |
出身地 | 広島県広島市 |
所属 | 日本将棋連盟(関東) |
師匠 | 森信雄七段 |
弟子 | カロリーナ・フォルタン |
段位 | 七段 |
棋士DB | 片上大輔 |
2022年9月15日現在 |
片上 大輔(かたがみ だいすけ、1981年8月28日 - )は、将棋棋士。棋士番号は251。森信雄七段門下。広島県広島市出身。
東京大学在学中にプロデビューし、史上初の「東大生棋士」として時の人となる。その後、同大学を卒業したが、「東大卒棋士」も史上初である。
棋歴
[編集]少年時代
[編集]小学校6年の秋に奨励会に入会。
村山聖、山崎隆之、糸谷哲郎などの棋士を生んだ広島将棋センター出身。師匠も彼らと同じ森信雄である。1学年上の山崎とは少年時代からしのぎを削り、1万局は指したという。
東大生棋士
[編集]同大学3年在学中の2004年2月に奨励会三段リーグで最終戦を待たずして四段昇段(プロ入り)を決める。最終成績は16勝2敗で歴代1位タイの記録であった。将棋界初の東大生プロ棋士ということで、多くのマスメディアに取り上げられた。ただし、プロ将棋界の中には「『奨励会員が東大に合格(していた)』と表現するのが適切」とする向きもあったようである。
プロ入り後、初参加のC級2組順位戦(2004年度 = 第63期)で、すぐに8勝2敗の好成績を収めるが、次点(4位)で昇級を逃す。
なお、2009年4月に渡辺弥生が史上初の東大卒女流棋士として、2020年4月には谷合廣紀が東大卒・東大大学院在籍の棋士としてプロデビューしている。
東大卒業後
[編集]東大を卒業した2005年、第18期竜王ランキング戦6組で優勝。さらに竜王挑戦権を争う本戦トーナメントでも2勝を上げ、準々決勝に進出。
2006年度、第19期竜王ランキング戦5組で、敗者復活から3位となって4組昇級を決め、五段に昇段。これは、竜王戦の規定による昇段の条件(の一つ)が「竜王ランキング戦連続2回優勝」から「竜王ランキング戦連続2回昇級」へ緩和された後に適用された初のケースである(山崎隆之、大平武洋も同じ条件で同じ期に昇段している)。同年度、第65期C級2組順位戦で9勝1敗で1位の成績を収め、C級1組へ昇級。
2007年度、第20期竜王ランキング戦4組で優勝し、3期連続昇級。本戦トーナメントでも1勝を上げる。
2008年度、第16期銀河戦で決勝トーナメントに進出。郷田真隆九段から1勝を上げベスト8。
2009年度、第22期竜王ランキング戦3組で優勝(準決勝で勝った時点で2組昇級が決まり、六段昇段[1])。自身3度目となる本戦でも、1戦目で森下卓九段(2組2位)から1勝を上げる(2戦目で1組2位の羽生善治名人(四冠)に敗れる)。しかし、翌年度の第23期では2組1回戦で敗退し、昇級者決定戦も1回戦敗退したため、プロ7年目にして竜王戦・順位戦を通して初の降級が決まる。
アマ日本選手権に特別参加
[編集]2006年2月26日、社会人と大学生の日本一チームが対戦する7人制団体戦「第18回アマチュア将棋団体日本選手権」に東大チーム大将として特別参加。NECチーム大将として同じく特別参加した瀬川晶司四段(同日時点でNECの関連会社・ワイイーシーソリューションズに勤務、同年3月末退職)に勝ち、チームも5-2で勝利した。この大会に参加した棋士は片上と瀬川が初めて。
片上の特別参加は、東大将棋部(在学中の片上が毎日のように顔を出していた)から「片上を出場させたい」と依頼を受けた主催者のリコーが、瀬川やNEC、片上と瀬川が所属する日本将棋連盟から了解を得て実現した[3]。しかし、当時まだ会社に在籍していた瀬川と違い、片上は前年9月に東大を卒業し「東大OB」になっていたため、特別参加を疑問視する記事を書いた観戦記者もいた。
棋風
[編集]主に指す戦法が矢倉、角換わり、四間飛車の3つで、指す頻度も3つそれぞれ同じぐらいという、プロ将棋界では珍しいタイプである。
人物
[編集]- 趣味は、当時三段だった大学時代に始めたバックギャモンである。当時の仲間だった望月正行、鈴木琢光、木原直哉、矢沢亜希子のうち、望月・鈴木・矢沢はのちにバックギャモンの世界選手権(モナコ公国・モンテカルロ)で優勝し、木原はのちにポーカー世界選手権である「ポット・リミット・オマハ/シックス・ハンデッド」という種目で優勝した[4]。2005年には国内大会第12回王位戦で優勝し初タイトルを獲得。なお、後に妻となる北尾まどかもこの年のビギナーズ王位戦で優勝した。2011年には日本代表の一員としてワールドカップに出場し、団体戦優勝を果たした[5]。2018年には再び王位戦のタイトルを獲得[6]。2021年2月にはバックギャモンの世界団体であるBMAB (The Backgammon Masters Awarding Body) が認定するグランドマスターの称号を獲得した[7]。日本人としては8人目[7]。
- 2013年6月、日本将棋連盟の理事(電子メディア部・事業本部)に就任[8]。2016年に将棋ソフト不正使用疑惑が発生し、理事として混乱に対する責任を問われ、2017年2月27日に行われた臨時総会で青野照市、中川大輔と共に解任された[9][10]。
- 2014年4月より、首都大学東京において、法学系特別講義「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」の非常勤講師を務める[11]。
- 女流棋士の北尾まどかと2006年に結婚したが[12]、離婚し(片上自身が、2016年に公表[13]。離婚時期は二年ほど前の2014年[14]。)、2016年に一般女性と再婚した[13]。
弟子
[編集]女流棋士となった弟子
[編集]名前 | 女流プロ入り日 | 段位、主な活躍 |
---|---|---|
カロリーナ・フォルタン | 2017年2月20日 | 女流初段 |
(2023年3月31日現在)
- フォルタンは北尾に紹介され、彼女が修行中は自宅に住まわせていた。
昇段履歴
[編集]- 1993年奨励会入会 9月 : 6級 =
- 1996年 3月 : 初段
- 1998年11月 : 三段(第25回三段リーグ = 1999年前期から三段リーグ参加)
- 2004年 4月 1日 : 四段(第34回三段リーグ1位 = プロ入り)
- 2006年10月10日 : 五段(竜王ランキング戦連続昇級)[15]
- 2009年[16] 5月12日 : 六段(竜王ランキング戦2組昇級)
- 2018年[17] 7月18日 : 七段(勝数規定 /六段昇段後公式戦150勝)
主な成績
[編集]在籍クラス
[編集]開始 年度 |
順位戦 出典[18]
|
竜王戦 出典[19]
| ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
期 | 名人 | A級 | B級 | C級 | 期 | 竜王 | 1組 | 2組 | 3組 | 4組 | 5組 | 6組 | 決勝 T |
|||||
1組 | 2組 | 1組 | 2組 | |||||||||||||||
2004 | 63 | C246 | 8-2 | 18 | 6組 | 2-1 | 6-0 | |||||||||||
2005 | 64 | C204 | 6-4 | 19 | 5組 | -- | 4-1 | |||||||||||
2006 | 65 | C212 | 9-1 | 20 | 4組 | 1-1 | 5-0 | |||||||||||
2007 | 66 | C125 | 6-4 | 21 | 3組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2008 | 67 | C109 | 5-5 | 22 | 3組 | 1-1 | 4-0 | |||||||||||
2009 | 68 | C115 | 8-2 | 23 | 2組 | -- | 0-2 | |||||||||||
2010 | 69 | C104 | 5-5 | 24 | 3組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2011 | 70 | C113 | 4-6 | 25 | 3組 | -- | 3-1 | |||||||||||
2012 | 71 | C125 | 8-2 | 26 | 2組 | -- | 0-2 | |||||||||||
2013 | 72 | C106 | 6-4 | 27 | 3組 | -- | 0-2 | |||||||||||
2014 | 73 | C110 | 6-4 | 28 | 4組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2015 | 74 | C110 | 5-5 | 29 | 4組 | -- | 0-3 | |||||||||||
2016 | 75 | C117 | 6-4 | 30 | 5組 | -- | 2-2 | |||||||||||
2017 | 76 | C109 | 4-6 | 31 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2018 | 77 | C123 | 5-5 | 32 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2019 | 78 | C119 | 6-4 | 33 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2020 | 79 | C110 | 6-4 | 34 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2021 | 80 | C110 | 7-3 | 35 | 5組 | -- | 3-2 | |||||||||||
2022 | 81 | C104 | 5-5 | 36 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2023 | 82 | C110 | 5-5 | 37 | 5組 | -- | 1-2 | |||||||||||
2024 | 83 | C116 | 38 | 5組 | -- | |||||||||||||
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。 |
年度別成績
[編集]年度 | 対局数 | 勝数 | 負数 | 勝率 | (出典) |
---|---|---|---|---|---|
2004 | 32 | 24 | 8 | 0.7500 | [20] |
2005 | 43 | 28 | 15 | 0.6512 | [21] |
2006 | 44 | 31 | 13 | 0.7045 | [22] |
2007 | 41 | 29 | 12 | 0.7073 | [23] |
2008 | 39 | 19 | 20 | 0.4872 | [24] |
2009 | 28 | 16 | 12 | 0.5714 | [25] |
2010 | 29 | 16 | 13 | 0.5517 | [26] |
2004-2010 (小計) |
256 | 163 | 93 | ||
年度 | 対局数 | 勝数 | 負数 | 勝率 | (出典) |
2011 | 31 | 14 | 17 | 0.4516 | [27] |
2012 | 30 | 20 | 10 | 0.6667 | [28] |
2013 | 32 | 17 | 15 | 0.5313 | [29] |
2014 | 24 | 10 | 14 | 0.4167 | [30] |
2015 | 32 | 15 | 17 | 0.4688 | [31] |
2016 | 35 | 20 | 15 | 0.5714 | [32] |
2017 | 33 | 16 | 17 | 0.4848 | [33] |
2018 | 36 | 20 | 16 | 0.5556 | [34] |
2019 | 29 | 16 | 13 | 0.5517 | [35] |
2020 | 34 | 16 | 18 | 0.4706 | [36] |
2011-2020 (小計) |
316 | 164 | 152 | ||
年度 | 対局数 | 勝数 | 負数 | 勝率 | (出典) |
2021 | 31 | 15 | 16 | 0.4839 | [37] |
2022 | 36 | 20 | 16 | 0.5556 | [38] |
2023 | 30 | 13 | 17 | 0.4333 | [39] |
2021-2023 (小計) |
97 | 48 | 49 | ||
通算 | 669 | 375 | 294 | 0.5605 | [40] |
2023年度まで |
著書
[編集]- 3手1組プロの技(2007年8月、毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-2551-2)
- 将棋 平成新手白書 居飛車編(2019年2月、マイナビ出版、ISBN 978-4-8399-6853-3)
- 令和新手白書 振り飛車編(2019年12月、マイナビ出版、ISBN 978-4-8399-7137-3)
- 令和 新手白書【角交換振り飛車・相振り飛車編】(2021年2月、マイナビ出版、ISBN 978-4-8399-7428-2)
脚注
[編集]- ^ “片上大輔五段が六段に昇段|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2009年5月13日). 2018年7月19日閲覧。
- ^ “片上大輔六段が七段に昇段|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2018年7月19日). 2018年7月19日閲覧。
- ^ “第18回アマチュア将棋団体日本選手権”. リコー将棋部. 2006年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月20日閲覧。
- ^ 『将棋世界』2022年2月号 pp.38-40
- ^ “世界バックギャモン、個人・チームとも日本勢V”. 読売新聞. (2011年7月26日) 2011年7月26日閲覧。
- ^ “王位戦 | 日本バックギャモン協会”. 2021年2月28日閲覧。
- ^ a b “【王手報知】東大卒棋士・片上大輔七段がバックギャモンのグランドマスターに「系統立てて勉強すれば成果を…」”. スポーツ報知 (2021年2月28日). 2021年2月28日閲覧。
- ^ “日本将棋連盟新役員のお知らせ|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2013年6月7日). 2018年7月19日閲覧。
- ^ “将棋連盟、ソフト不正使用疑惑の混乱で理事3人を解任”. 日本経済新聞. (2017年2月27日) 2022年12月9日閲覧。
- ^ “日本将棋連盟理事解任のお知らせ|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2017年2月27日). 2018年7月19日閲覧。
- ^ “首都大学東京にて法学系特別講座が開講|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2014年2月26日). 2018年3月20日閲覧。
- ^ “片上五段結婚式 11月11日(土)”. 森信雄の日々あれこれ日記. 森信雄. 2019年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月13日閲覧。
- ^ a b “ご報告”. daichanの小部屋. 片上大輔. 2019年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月13日閲覧。
- ^ 北尾まどか [@nemurineko] (2016年6月13日). "片上ブログに記載がありましたが、二年ほど前に離婚しました。(以下略)". X(旧Twitter)より2021年8月3日閲覧。
- ^ “日本将棋連盟からのお知らせ(2006年10月27日時点のアーカイブ)”. web.archive.org (2006年10月27日). 2024年7月22日閲覧。
- ^ “片上大輔五段が六段に昇段|将棋ニュース|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2024年7月22日閲覧。
- ^ “片上大輔六段が七段に昇段|将棋ニュース|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2024年7月22日閲覧。
- ^ 「名人戦・順位戦」『日本将棋連盟』。
- ^ 「竜王戦」『日本将棋連盟』。
- ^ [1][名無しリンク]
- ^ [2][名無しリンク]
- ^ [3][名無しリンク]
- ^ [4][名無しリンク]
- ^ [5][名無しリンク]
- ^ [6][名無しリンク]
- ^ [7][名無しリンク]
- ^ [8][名無しリンク]
- ^ [9][名無しリンク]
- ^ [10][名無しリンク]
- ^ [11][名無しリンク]
- ^ [12][名無しリンク]
- ^ [13][名無しリンク]
- ^ [14][名無しリンク]
- ^ [15][名無しリンク]
- ^ [16][名無しリンク]
- ^ [17][名無しリンク]
- ^ [18][名無しリンク]
- ^ [19][名無しリンク]
- ^ [20][名無しリンク]
- ^ [21][名無しリンク]
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 片上大輔 - 日本将棋連盟
- daichanの小部屋
- daichanの小部屋(旧館)
- daichan's opinion
- Daisuke Katagami (@shogidaichan) - X(旧Twitter)