浜松藩
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浜松藩（はままつはん）は、江戸時代の藩の一つであり、遠江国敷知郡浜松宿（現在の静岡県浜松市中央区）に所在の浜松城を居城とした。
沿革
[編集]藩主は、桜井松平家、高力家、大給松平家、太田家、青山家、本庄松平家、大河内松平家、井上家、水野家といった譜代大名諸家が入部した。浜松藩の特徴としては、大名家の入れ替わりが非常に激しいことがあげられる。また江戸時代265年の間に藩主は22名で、約12年弱毎に藩主が変わっている。別名「出世城」としても知られ、その背景には徳川家康の成功譚をはじめ、老中や京都所司代など幕府の要職についた藩主を多数輩出したことがあげられる。
概要
[編集]浜松城は徳川家康が元亀元年（1570年）6月から居城として、遠江西部の経営に当たった重要拠点である。元亀3年（1572年）12月の三方ヶ原の戦いのとき、家康は武田信玄に大敗して浜松城に逃げ帰ったが、このときに城門を開いて空城の計を用い、武田軍を退却させたという逸話は有名である（実際は、追撃する武田軍が城に攻め込んでも、城に退却していた徳川軍の敗残兵に挟撃されることを恐れて退却したとされる）。家康は天正14年（1586年）12月、駿府城に居城を移した。
さらに家康が小田原征伐後に武蔵に移封されると、浜松城には豊臣氏の重臣・堀尾吉晴が12万石で入る。慶長4年（1599年）に吉晴は隠居し、子の堀尾忠氏が城主となった。忠氏は慶長5年（1600年）9月の関ヶ原の戦いで武功を挙げたことから、11月に出雲富田藩（後の松江藩）に加増移封された。
慶長6年（1601年）2月、徳川氏譜代の重臣・松平忠頼が美濃金山藩から5万石で入ったことにより、浜松藩が立藩する。しかし慶長14年（1609年）9月29日、忠頼は三河水野藩主・水野忠胤の茶会に招かれていたとき、忠胤の家臣の争いを止めようとして巻き込まれて刺殺され、これにより桜井松平家は改易された。後に子の松平忠重が成長してから、大名として復帰している。
忠頼死後の12月22日、水野重央（のちの水野重仲）が常陸水戸藩より2万5000石で入る。重仲は徳川家康の子・徳川頼宣の附家老であり、頼宣が駿府藩主に就任したことに伴い、浜松に領地を与えられたのである。ただし、附家老のために藩主として正式に認められてはいなかったようである。元和3年（1617年）10月24日、1万石の加増を受けて3万5000石の大名となるが、元和5年（1619年）7月19日、頼宣が紀伊紀州藩に移封されたのに伴い、紀伊新宮藩に移封された。
代わって9月に武蔵岩槻藩から高力忠房が3万5000石で入る。しかし島原の乱後の寛永15年（1638年）4月13日、肥前島原藩に移封された。
直後の4月25日、美濃岩村藩から松平乗寿が3万6000石で入る。しかし寛永21年（1644年）2月28日には上野館林藩に移封された。
代わって三河西尾藩から太田資宗が3万5000石で入る。しかし第2代藩主・太田資次時代の延宝6年（1678年）6月19日、資次が大坂城代に任命されたことから、所領を摂津・和泉周辺に移封された。
入れ替わる形で8月18日、大坂城代であった青山宗俊が5万石で入る。しかし第3代藩主・青山忠重時代の元禄15年（1702年）9月7日には丹波亀山藩に移封された。
5日後の9月12日、常陸笠間藩より松平資俊が7万石で入る。しかし次代の松平資訓は、享保14年（1729年）2月15日に三河吉田藩に移封された（この松平氏は本庄松平家である）。
入れ替わる形で松平信祝が7万石で入る（この松平氏は大河内松平家である）。しかし次代の松平信復が寛延2年（1749年）10月15日に三河吉田藩に戻され、入れ替わる形で松平資訓が浜松に戻ってきた。
資訓は宝暦2年（1752年）に死去し、新たに藩主となった松平資昌は宝暦8年（1758年）12月27日に丹後宮津藩に移封された。
代わって京都所司代として摂津・河内・播磨・近江などに所領を持っていた井上正経が6万石で入る。しかし第3代藩主・井上正甫時代の文化14年（1817年）9月14日には陸奥棚倉藩に移封された。
このため、肥前唐津藩から水野忠邦が6万石で入る。忠邦は天保5年（1834年）に老中となったことから1万石の加増を受けて7万石（7万453石とも）の大名となる。しかし天保の改革に失敗したことから弘化2年（1845年）9月に2万石を減封され、さらに家督を子の水野忠精に譲って強制的に隠居の上、蟄居に処された。11月に忠精は出羽山形藩に移封となる。
代わって、井上正甫の後を継いでいた井上正春が、上野館林藩から6万石で入る。明治元年（1868年）9月、第2代藩主・井上正直は徳川家達が駿河・遠江・三河を支配する駿府藩主になったことから、上総鶴舞藩に移封され、これにより浜松藩は廃藩となった。
幕末の藩主の井上氏の浜松藩の支藩には下総高岡藩と常陸下妻藩があり、どちらも廃藩置県まで存続した。
藩政
[編集]浜松藩の藩政は、高力忠房の時代に確立された。忠房は新田開発・検地などの民政に積極的に取り組んだ。島原の乱後の島原藩に移封されたことも、乱で荒廃した島原藩の再建を江戸幕府から期待されてのことであり、忠房は島原領も再建している。
松平乗寿は浜松藩主時代の寛永19年（1642年）12月19日に老中に任じられた。彼は浜松藩主で初めて幕閣に抜擢された人物である。
太田氏の時代には承応年間に検地が行なわれ、農村支配が確立された。しかし太田氏の歴代藩主は幕閣に関与することが多かったため、藩政にはあまり関与していないともいわれてる。
その後の青山氏・本庄松平家・大河内松平家などは移封や再封を繰り返したため、浜松藩領の統治に大きな影響は残していない。井上氏は3代60年にわたって浜松藩を支配し、歴代藩主の中でも支配期間が最も長かったが、特筆する藩政の特徴はない。第3代藩主の井上正甫は素行が悪かったことから陸奥棚倉藩に左遷された。
歴代藩主の中で最も有名なのは、井上正甫の後に浜松藩主となった水野忠邦である。忠邦は江戸幕府の老中となって天保の改革を主導したが、浜松藩政においも藩財政の再建を中心とした藩政改革を行っている。しかし忠邦は天保の改革に失敗し、藩政改革のほうでも効果があったとは言い難かった。忠邦は幕府により減封・老中罷免・強制隠居の上の蟄居という処分を受けることとなった。
その後、井上氏が再度藩主となった。井上氏の統治下では繊維業や藩士の育成に力を注がれ、明治維新へと至った。
藩庁
[編集]歴代藩主
[編集]松平（桜井）家
[編集]譜代 5万石
水野家
[編集]譜代 2万5000石→3万5000石
高力家
[編集]譜代 3万5000石。
松平（大給）家
[編集]譜代 3万5000石
太田家
[編集]譜代 3万5千石→3万2000石
青山家
[編集]譜代 5万石
松平（本庄）家
[編集]譜代 7万石
松平（大河内・長沢）家
[編集]譜代 7万石
松平（本庄）家
[編集]譜代 7万石
- 松平資訓
- 松平資昌
井上家
[編集]譜代 6万石
水野家
[編集]譜代 6万石→7万453石→5万石
井上家
[編集]譜代 6万石
幕末の領地
[編集]中内田村 2004石485962・月岡村 99石789162
- 佐野郡のうち - 3村
杉谷村 189石828995・亀甲村 35石549599・海老名村 17石447001
- 豊田郡のうち - 28村
本沢村 54石133999・上島村 248石298004・蝋燭島村 76石628998・中野島村 46石465000・上小島村 62石201000・中野村 71石183998・下小島村 55石837002・中瀬村 535石085022・細島村 93石120003・恒武村 329石105988・松小池村 220石373001・八幡村 136石626007・永島村 229石097000・新野村 69石077003・高薗村 348石979004・新堀村 79石984001・倉中瀬村 109石180000・羽鳥村 331石471985・・常光村 63石134998・白鳥村 691石651001・大見村 174石570007・長命村 175石240997・長命村 175石240997・大明神村 46石978001・松ノ木島村 273石483002・上神増村 198石287994・三家村 270石134003・壱貫地村 141石304993・下神増村 102石842003
- 長上郡のうち - 87村
西塚村 83石053001・将監名村 1石627000・篠ヶ瀬村 436石345001・下堀村 397石433990・植松村 321石962006・宮竹村 98石297997・宮竹新屋村 59石435001・小池村 990石361023・上新屋村 228石987000・中田村 371石369995・丸塚村 329石061005・西在所村 231石225006・天王村 461石980988・原島村 300石700012・永田村 565石161011・上之郷村 270石792999・天王新田村 85石720001・下飯田村 254石231003・小松方村 2石320000・北島村 255石115005・青谷村 224石082001・渡瀬村 172石326004・別久村 23石540001・次広村 5石989000・名切村 44石473000・下村 173石949997・塚越村 71石491997・薬師新田村 89石155998・薬師村 142石162994・上飯田村 653石700989・竜光村 130石261993・福増村 53石641998・西之郷村 227石376007・長鶴村 112石211998・金折村 409石674988・橋羽村 209石121994・恩地村 302石308990・本郷村 438石462006・弥十村 228石600006・石原村 190石093002・八反畑村 61石820000・大柳村 497石880005・鼠野村 182石820007・参野村 221石434006・松島村 143石854996・鶴島村 104石651001・下中島村 160石699997・頭陀寺村 30石457001・西島村 372石269012・下前島村 80石277000・清光庵村 18石596001・御給村 194石899994・古川村 107石914001・富屋敷村 76石964996・向金折村 19石542000・西村 188石847000・立野村 135石322006・江之島村 214石000000・福島村 107石140999・安松村 211石882996・蒲島村 19石158001・平左衛門新田 42石478001・四本松村 180石667007・江川村 34石584999・土呂新田 34石509998・沼村 38石658001・東美薗村 240石953995・中条村 403石489014・油一色村 49石561001・西美薗村 365石235992・高畑村 247石479996・横須賀村 205石718994・有玉上瀬村 429石136993・有玉松木島村 97石288002・有玉畑屋村 470石665009・有玉下村 514石856018・有玉新村 39石928001・有玉欠下村 217石509003・有玉町田村 279石385986・笠井村 402石493988・上前島村 188石455002・上大瀬村 261石335999・下大瀬村 958石153992・漆島村 152石923996・万斛村（万石村） 465石908997・橋爪村 434石369995・西ヶ崎村 526石843994
- 敷知郡のうち - 94村
浜松宿 0石000000(地子免許無高) ・寺島八幡地 582石156982・寺島八幡地ノ内・新地 1石557000・新町 16石643000・板屋町 30石993000・田町 32石661999・塩町 420石000000・名残村 116石616997・野口村 390石635986・細島新田 36石070000・谷上村 33石972000・早出村 490石319000・馬込村 185石285004・船越一色村 123石028000・佐藤一色村 233石567993・八幡村 17石086000・茄子一色村 62石352001・東追分村 24石391001・西追分村 11石820000・米津村 262石447998・小沢渡村 300石941010・堤村 73石680000・新橋村 351石251007・法枝村 226石828995・田尻村 199石427994・浅田村 571石739014・明神野村 646石278992・東明神野村 13石623000・十軒新田 146石266006・島之郷村 644石687012・上島村 644石314026・助信村 209石740005・一本杉村 111石684998・高林村 403石153992・新津村 177石343002・中沢村 73石223000・上池川村 127石088997・下池川村 0石500000・白羽村 596石781006・中田島村 457石014008・福塚村 131石626007・寺脇村 639石705994・瓜内村 343石546997・伊場前飛地 31石445000・三島村 432石049988・馬領家村（領家村）197石815002・上中島村 237石182999・楊子村 170石212006・奈川新田 5石095000・福地村 19石517000・向宿村 290石735992・宇布見村 538石809998・増楽村 296石160004・若林村 697石893005・東若林村 342石571014・富塚村 774石294983・小藪村 29石566999・馬生村 18石773001・富新屋村 38石987999・馬船村 17石372000・段子川村 37石165001・不遣村 12石225000・寸田谷村 49石279999・東鴨江村 62石633999・伊場村 1051石397949・入野村 1998石952026・蜆塚村 51石555000・西鴨江村 311石727997・片草村 35石694000・佐浜村 500石809998・須之木沢村 85石807999・東大山村 200石408997・西大山村 162石970001・和地村 884石145020・大崎村 460石816010・佐久米村 198石347000・都筑村 221石039001・駒場村 32石131001・津々崎村 335石862000・宇志村 352石507996・三ヶ日村 423石506989・釣村 119石842003・日比沢村 189石595001・本坂村 131石087006・鵺代村 291石782013・下尾奈村 361石681000・上尾奈村 133石283997・大知波村 533石536987・利木村 113石285004・横山村 33石702000・入出村 347石197998・太田村 386石634003・神座村 150石923004・南川尻村 194石804001
今井新田 112石858002・亀成新田 183石210007・惣深新田 2774石962891・甚兵衛新田 125石897003・和泉屋新田 92石121002・下曾根新田 114石014999・佐野屋新田 105石778000・中根新田 47石173000・松虫新田 16石635000・松木新田 91石091003・下井新田 156石052002・長門屋新田 112石058998・中田切新田 116石053001・行徳新田 90石461998・押付新田 118石234001・萩原新田 45石187000・将監新田 46石956001・布鎌酒直新田 137石423004・布鎌脇川新田 74石810997・布鎌四ヶ村新田 65石153999・布鎌四ヶ村新田 50石869999・布鎌北新田 137石938995・布鎌横須賀新田 59石512001・布鎌押砂新田 25石304001・布鎌長門谷新田 88石300003・布鎌大森新田 42石710999・布鎌押付新田 130石169998・布鎌上曾根新田 55石421001・布鎌南新田 184石878006・布鎌西新田 172石087997・布鎌太郎右衛門新田 273石233002・布鎌利右衛門新田 51石981998・布鎌源五左衛門新田 60石266998・布鎌七右衛門新田 42石479000・布鎌中谷新田 270石458008・布鎌四谷新田 61石255001・布鎌下和田新田 87石332001・布鎌請方新田 620石216003
東村 172石815994・田谷村 149石302994・保木村 238石057999・善祥寺村 52石132000・中島村 51石615002・久次村 433石048004・長谷村 261石915985
- 加東郡のうち - 19村
買野村 177石589005・豊地村 58石442001・池田村 256石944000・曾根村 417石552002・土沢村 331石092987・蔵之谷村 99石856003・横谷村 352石178009・念仏村 805石724976・新定村 574石737976・森村 552石447998・岩屋村 274石204010・久米・畑村 159石220001・天神町 20石493000・長谷村 291石121002・黒石村 183石376007・古家村 417石920013・常田村 212石294006・少分谷村 100石950996・下鴨川村 165石091003
播磨国内の飛地領の変遷については、「旧高旧領取調帳」ではすでに飾磨県と記載されているため、詳細は不明。
外部リンク
[編集]| 先代 （遠江国） |
行政区の変遷 1609年 - 1868年 |
次代 府中藩 （藩としては鶴舞藩） |
| 北海道地方 |
|  |
|---|---|---|
| 東北地方 | ||
| 関東地方 | ||
| 北陸・甲信地方 | ||
| 中部地方 | ||
| 近畿地方 | ||
| 中国地方 | ||
| 四国地方 | ||
| 九州地方 | ||
| 関連項目 | ||
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藩庁の置かれた地域を基準に分類しているが、他の地方に移転している藩もある。順番は『三百藩戊辰戦争事典』による。 明治期の変更: ★＝新設、●＝廃止、○＝移転・改称、▲＝任知藩事前に本藩に併合。（）内は移転・改称・併合後の藩名。（）のないものは県に編入。 | ||
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