阪神
阪神(はんしん)という言葉は単純であるが、実は様々な意味が内包されている。それを今回は順を追って解説する。
大阪と神戸[編集]
阪神という言葉はもともと、大阪市(大阪民国)と神戸市(コーベグラード)という近畿における二大都市のことを指していた。
明治期以降、五港のひとつとして神戸が繁栄するようになり、それと日本の商業中心地であった大阪は自然的に結びついたため、両都市を合わせて呼ぶ習慣が出来、阪神の語が生まれたとされている。
両都市を結ぶもの[編集]
その後、阪神の言葉は両都市をつなぐものという意味を内包するようになった。明治38年に開業した阪神電気鉄道がそれを代表する存在となり、他に阪神国道(国道2号と国道43号)、阪神急行電鉄(後の阪急電鉄)なども生まれている。
特に阪神電鉄は大阪・神戸両市民のみならず、沿線住民からも親しまれた。同社の関わった事業の多くには、必然的に「阪神」の言葉がつくようになって、「阪神」が阪神電鉄グループの総称ともなった。
さらにこの派生として、阪神高速も存在する。その路線は阪神間では事足りずに、地球を周回する路線もあると言われている。
大阪と神戸のいずれにも属さない都市[編集]
阪神電鉄や阪急電鉄の躍進により、大正から昭和期にかけてその間にある都市―すなわち豊中市、川西市、池田市、尼崎市、伊丹市、宝塚市、西宮市、芦屋市などは、もともと「大阪」か「神戸」のいずれかに属していたのだが、次第に独自の文化を作り上げ、独立地域とみなされるようになった。よってこれらを総称して、「阪神地域」などと呼ぶようにもなっている。なお、うちのトコではの神戸は、神戸市だけでなく、これらの地域の兵庫県側(西宮市、尼崎市、宝塚市、芦屋市、伊丹市、川西市、猪名川町、三田市)を指す…はずである。ただ、「摂津」といってしまうと大阪の3分の1近くが入ってしまうため、結局「神戸」呼びに収まっている。
宝塚歌劇団をつくり上げた阪急のお膝元宝塚、それに後述する野球で名を上げることになる、阪神が開発した西宮の甲子園などは、それを象徴する存在となった。
なお、この地域の地位向上には小林一三の功績が大きい。阪急総帥の小林は当時、東京を凌ぐ人口を有していて「大大阪」と呼ばれることもあった大阪を、水道さえも整備されておらず伝染病がしばしば流行るなどしていたことから「醜悪な街」と忌み嫌っており、それに変わる地域として自社線の沿線を整備しようと志したという。そして彼は実際に、住宅開発や文化事業を沿線で実施し、今日に至る阪急王国を築き上げ、阪神地域を大阪と切り離された場所に変貌させた。
野球[編集]
阪神電鉄は日本で3番目の球団として、「大阪タイガース」を昭和11年に設立している。このときは「大阪」と名乗っていることからも分かるとおり、当時甲子園のある西宮は大阪の植民地とみなされていた。
しかし後には「神戸」、それに前述したように阪神地域とされる「尼崎」・「西宮」・「芦屋」の躍進が目覚しく、球団は「大阪」の枠を越えてしまった。そのため昭和36年、それら地域民の「われわれは大阪ではない」と主張する圧力を受け、「阪神タイガース」に改称している。
全国的に「阪神」といった場合、この意味で通用する事が多い。阪神オタクの存在が大きいためであると推測されている。
また、「阪神」という言葉を冠して言われることはあまり無いようであるが、甲子園と言えば高校野球であり、高校野球と言えば甲子園である。日本高等学校野球連盟(高野連)と、毎日新聞社あるいは朝日新聞社は、毎年春と夏の2度にわたり結託して、ここを本拠地とする阪神タイガースを押し退けたうえに[1]、世間の注目も一身に背負って大日本帝国臣民の興奮と涙を呼び起こしている。
空港[編集]
伊丹空港(大阪国際空港)があり、伊丹は大阪にあるように思えてしまうが兵庫県にある。伊丹空港の正式名称は、大阪国際空港である。しかし、滑走路のほとんどは伊丹市の地下に存在する上、国際線は一本も飛んでいない。一歩譲って以前国際線があり、国際空港級の施設であることを考慮して国際空港と名乗ることは良しとしても、大阪と名乗るには無理がある。確かにターミナルビルは大阪府豊中市に立地するが、空港はターミナルビルだけでは成り立たない。逆にターミナルビルがなくても、滑走路さえあれば空港と言える。百歩譲って阪神間であることを考慮し、阪神国際空港(Osaka-Kobe International Airport)と名乗るべきところを、神戸からは遠く大阪府にターミナルビルがあることから、「大阪国際空港」にされてしまっている。このことに配慮してか、滑走路もターミナルビルも大阪府にある泉州空港の正式名称は、新大阪国際空港ではなく「関西国際空港」になっている。
高速道路[編集]
関東の都市高速道路は首都東京(東京都)を意味する「首都高速」を名乗っている。これに関西が対応するとすれば商都大阪を意味する「商都高速」が適当だっただろう。しかし、開通当時日本一の貿易港を有していた神戸の経済力を考慮し、阪神高速道路と名付けられている。名前からは名神高速が名古屋と神戸を結ぶだけであるように、大阪と神戸を結ぶだけのようにも思えてしまうがそうではない。阪神間を結んでいるのは3号神戸線と5号湾岸線の2本しかないのに対して、大阪府内には、1号環状線、11号池田線、12号守口線、13号東大阪線、14号松原線、15号堺線、16号大阪港線、17号西大阪線、2号淀川左岸線、4号湾岸線、6号大和川線という11本もの路線がある。京都に8号京都線があることを考えると、神戸や京都の路線はグリコのおまけのようでもある。
脚注[編集]
- ^ 押し退けられた阪神タイガースとそのファンには「魔のロード」として恐れられていると言われている。