クサガメ
クサガメとは、最もポピュラーにして地味なカメの一種である。
概要[編集]
このカメはアカミミガメなどのように自己主張が強くないので、鮮やかな体色を纏っておらず、臭そうなウンコ色をしている。背骨が三本もあることで知られ、甲羅を見ると三本の背骨がはっきりと隆起しているのが見えるが、これは三本もの背骨で身体を支えないと生きていけない貧弱な亀であることを反映している。事実、クサガメが生息する池や沼地に他の亀を放したところ、生存競争に負けてあっという間に駆逐されてしまう。
亀の中でも弱っちいクサガメだが、凶暴な外来種であるザリガニに対しては圧倒的な強さを発揮する。ザリガニの鋏を甲羅によって容易くはじき、逆に顕著な消化力でザリガニを丸呑みにして平らげてしまう。例え相手が亀の中では弱いクサガメでも、チョキであるザリガニはグーである亀には決して勝てないという、じゃんけんの世界の鉄則がここにある。しかし、亀がまだパーである状態、つまり甲羅が発達していない子供の時であれば、逆にザリガニが亀を返り討ちにする。亀の中でも弱いクサガメであれば、まず間違いなく食い殺される。
乱獲[編集]
クサガメは、甲羅の板と板の境界線に金色の筋が通っていることで知られる。そのため中国ではクサガメを「金線亀」と呼んでいた。一方日本では甲羅の線の美しさよりも体色の薄暗さ、地味さにばかりが注目され、なんだか身体の色が濃くて臭そうという理由からクサガメ(臭亀)という名前を頂戴してしまった。何でも金儲けに利用しようとする守銭奴の中国人と悪い所にばかり目を向けあら捜しをする日本人の民族性が命名によく現れている。だがカメの体臭は人間にとって我慢の限界を超えるほど臭く、クサガメはその中でも臭いが顕著であるというのもまた事実である。
なお、中国では近代に入るまで、クサガメの甲羅の金色の境界線には実際に金塊が詰まっているというデマが流布しており、さらに甲羅の中にはより多くの金塊が入っているとまで言われた。そのため金塊目当てにクサガメは乱獲され殆ど絶滅状態となってしまったが、中国政府はこれも自然淘汰であると誰も気にしなかった。
クサガメの仲間[編集]
クサガメと似たカメの仲間にイシガメとウンキュウがいる。イシガメは生態や身体の形など、クサガメとよく似ているが、クサガメと違い甲羅の色がウンコ色でなかったため、クサガメのような不名誉な名前を付けられずに済んだ幸運な亀である。ウンキュウはイシガメとクサガメのハイブリッドである特殊な亀で、ウンコ色と石の色が混ざったなんとも名状しがたい甲羅の色が特色である。なお、ウンキュウの名前の由来は勿論うんこなのだが、爬虫類図鑑などではこのことを教えてくれない。
ペットとしての人気[編集]
クサガメは飼いならすと人間に簡単に従順になるため、凶暴なミシシッピアカミミガメと比べるとペットとしての需要が高く、野に捨てられて野生化し生態系を壊す危険性は希薄である。しかし従順すぎるがゆえに、心無い人間によって酷使され寿命を縮めたり事故死してしまうケースも多い。かの南方熊楠もクサガメをペットとして養育しており、彼の屋敷はカメ屋敷と呼ばれるほどであった。しかし熊楠の死後、外国から入ってきたミシシッピアカミミガメにこのカメ屋敷のカメは殆ど駆逐されてしまった。