陸奥湾
地理
編集青森県下北郡佐井村の焼山埼と東津軽郡外ヶ浜町[注 1]の平舘灯台を結ぶ線から南側の海域を指す[1]。湾口幅14km、面積1667.69km2、湾内最大水深75mである[1]。
平舘海峡で津軽海峡と通じ、津軽暖流が津軽海峡から平舘海峡を経て流れ込み、湾内を周回して津軽海峡に出ている。
湾奥の中央部の夏泊半島を境に湾南部は東南の野辺地湾と、西南の青森湾に分かれ、北東にも大湊湾(安渡湾)という小さな湾がある。大湊湾は芦崎と呼ばれる砂嘴によって内部に芦崎湾(大湊港)を形成しており、芦崎には干潟や海岸平野や砂丘も存在する[2]。
湾内の海岸近くには無人島や岩礁が幾つかある。湯の島(青森市)は対岸の浅虫温泉からカタクリまつりなどの時季に船で渡ることができるほか、夏泊半島突端の大島(平内町)は橋で行き来できる。このほか平内町の沿岸には茂浦島と鴎島が、むつ市脇野沢沖には鯛島がある。
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浅虫温泉付近
生物と水産業
編集陸奥湾内では各所でホタテの養殖が行われ、ナマコ、ホヤ、トゲクリガニ、ヒラメなどの漁場にもなっている。しかしホタテは海水温の上昇に弱く、2010年の猛暑で養殖ホタテに被害が出た。成貝に比べ暑さにも強いとされているホタテの稚貝も相当数が死滅した。ホタテは殻付きで出荷されるほか、貝柱だけを取り出して貝殻は捨てられる場合も多い。陸奥湾沿岸には現代版の貝塚とでも言うべき高く積み上げられたホタテ貝殻の小山が存在する。
湾内にはマイワシやカタクチイワシなどを追ってカマイルカが回遊し[3]、津軽海峡フェリーなどを応用したイルカウォッチングも行われている[4]。津軽海峡は様々な鯨類や鰭脚類の回遊経路になっている[注 2][5][6][7]が、カマイルカ以外の海獣の陸奥湾内における観察は概して珍しく、陸奥湾内や平舘海峡の周辺で近年に毎年確認されているのはミンククジラ[4][8][9]とキタオットセイ[4][10]である[注 3][11][12]。
芦崎には干潟が形成されており、オオハクチョウや貝類などの多様な生物に利用されている[13][2]。また、沿岸部には世界最北端の分布として知られるニホンザルも頻繁に出現する[5]。
交通
編集沿岸部の多くは国道4号など道路が整備され、鉄道では青い森鉄道線とJR東日本の大湊線、津軽線が走る。JRの快速列車「リゾートあすなろ」は、海岸近くの区間では陸奥湾の眺望を売り物の一つにしている。
青森県の北半分は、陸奥湾を挟んで陸地が「ω」字状に向かい合う。陸奥湾を通る旅客船やフェリーは、道路・鉄道整備や過疎化で減ったとはいえ、現在も複数運航されている。平舘海峡は冬季を除き、むつ湾フェリーで渡ることができる。青森港からは北海道の函館港と青函航路が設定されているほか、シィラインが下北半島北西の佐井港などと結んでいる。この航路は景勝地として知られる仏ヶ浦を海上から遠望できるほか、4~10月は仏ヶ浦に寄る観光船に乗り継げる。
陸奥湾は、国際海峡である津軽海峡を含めた日本北方海域をにらむ大きな内海であるため、湾北東の大湊が日本海軍時代から現在の海上自衛隊まで重要な軍港として使われている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b “陸奥湾”. 公益財団法人国際エメックスセンター. 2021年9月10日閲覧。
- ^ a b Kashmir3D, 青森県:芦崎の砂嘴, 日本の地形千景+α
- ^ 千嶋淳, 片岡義廣, 青木則幸, 2018年3月, 「北海道東部太平洋の2海域における鯨類ならびにキタオットセイの分布」, 浦幌町立博物館紀要, 18号, 19-31頁
- ^ a b c 清川繁人, 2016年, 陸奥湾を回遊するイルカの行動に関する研究, 青森大学付属総合研究所紀要, Vol.17, No.2, 12-25頁
- ^ a b 青森県自然保護課, 2 青森県レッドリストに掲載されている希少野生生物の生息・生育状況, 5-33頁,
- ^ 津軽海峡フェリー, 津軽海峡エリアの鯨類紹介
- ^ 浅虫水族館, 2021年3月, マリンスノー, No.40
- ^ むつ湾フェリーでいるかに会いたい(隊), 2022年03月12日, シーズンイン前にミンククジラ♪
- ^ 東奥日報社, 2020年06月08日, 陸奥湾に珍しいザトウクジラ まったりと, Youtube
- ^ 東奥日報, 2023年5月1日, 「脇野沢川河口にキタオットセイ/むつ」
- ^ 青森県海区漁業調整委員会事務局, 2008年01月31日, 青森県海区だより, 活彩あおもり, 第22号
- ^ 青森・陸奥湾 イルカ情報, 2022年3月12日
- ^ しもきたTABIあしすと, 芦崎湾