華氏451度
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『華氏451度』(かしよんひゃくごじゅういちど、Fahrenheit 451)は、レイ・ブラッドベリによって1953年に書かれたSF小説。
1966年、フランソワ・トリュフォー監督によって『華氏451』として映画化された。また、フランク・ダラボン監督が新たに映画化を企画中である。
概要
編集本の所持や読書が禁じられた、架空の社会における人間模様を描いた作品。題名は(本の素材である)紙が自然発火する温度(華氏451度≒摂氏233度)を意味している。
愚民政策を題材とした作品として語られることが多いが、ブラッドベリ自身は『この作品で描いたのは国家の検閲ではなく、テレビによる文化の破壊(a story about how television destroys interest in reading literature)』と2007年のインタビューで述べている。[1]
あらすじ
編集舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会。そこでは漫画以外の本の所持が禁止されており、発見された場合はただちに「ファイアマン」(fireman、焚書官または昇火士)と呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた。(表向きの)理由は、本によって有害な情報が善良な市民にもたらされ、社会の秩序と安寧が損なわれることを防ぐためだとされていた。密告が奨励され、市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。だがその結果、人々は思考力と記憶力を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた。
そのファイアマンの一人であるガイ・モンターグ(Guy Montag)は、当初は模範的な隊員であった。ある秋の夜、仕事から戻ったとき、彼は新しい隣人であるクラリス・マクレランという風変わりな少女に出会う。クラリスと関わる事によって、モンターグは自分の人生や仕事に疑問を抱きだす。モンタ―グは家に帰り、妻のミルドレットが睡眠薬を過剰摂取していることを知り、医師の診察を求め、一命をとりとめる。
登場人物
編集- ガイ・モンターグ
- 主人公。焚書の仕事をしているファイアマン(焚書官または昇火士)。30代。ミルドレッドからはガイと呼ばれているが、他からはモンターグと呼ばれている。クラリスとの出会いや老女の件をきっかけに社会に疑問を抱く。
- クラリス・マクレラン
- モンターグ家の隣に引っ越してきた少女。17歳。高校生だが、奇行のため精神科に通院させられている。モンターグからは、実年齢よりもずっと上のように見えることがあると評されている。交通事故により死亡。
- ミルドレッド
- モンターグの妻。モンターグからはミリーと呼ばれている。睡眠薬を大量に飲み、死にかける。
- ベイティー
- モンターグの上司で署長。ファイアマン。本に対して、博識でありながらも本を否定する。フェイバーからはおそろしく狡猾な男と評され、モンターグの異変にいち早く気付く。
- フェイバー
- 元カレッジの英語教師の老教授。本を隠し持っている。現在の社会を憂いていたが行動には移せずにいた。モンターグの協力者となる。
- 老女
- 本を隠し持っていたため、隣人の密告により処罰対象となる。
- ストーンマン
- モンターグの同僚のファイアマン。
- ブラック
- モンターグの同僚のファイアマン。
- フェルプス夫人
- ミルドレッドの友人。ミルドレッドからはクララと呼ばれている。
- ボウルズ夫人
- ミルドレッドの友人。子供が二人いる。
日本語訳書
編集- 華氏四五一度 レイ・ブラドベリー 南井慶二訳 元々社・最新科学小説全集 1956年6月
- 華氏451度 宇野利泰訳 早川書房・ハヤカワ・SF・シリーズ3065、1964年3月
- 華氏451度 宇野利泰訳 早川書房・世界SF全集13、1970年5月
- 華氏451度 宇野利泰訳 早川書房・ハヤカワ文庫NV106、1975年11月、ISBN 4-15-040106-3
- 華氏451度 宇野利泰訳 早川書房・ハヤカワ文庫SF1691、2008年11月、ISBN 978-4-15-011691-0
- 華氏451度〔新訳版〕 伊藤典夫訳 早川書房・ハヤカワ文庫SF1955、2014年6月、ISBN 978-4-15-011955-3
関連項目
編集- ディストピア
- 焚書
- リベリオン - カート・ウィマー監督のアメリカ映画。本作を原案とする、思考(感情)統制され、書物や文化財が焼却される未来を描くSF。
- 華氏911 - マイケル・ムーア監督のアメリカ映画。題名が本作にちなんだものであることが知られている。
- ファーレンハイト9999
- 図書館戦争 - 有川浩によるSF小説。アニメ版第6話においては、国家による書籍の検閲及びそれに伴う事実上の内戦状態を予言した「予言書」として、本書が禁書とされているとのオリジナル設定がある[2]。
- いしかわじゅん - 本作のパロディとして、やはり本が燃やされた世界で地下組織がその知識を守っているのだが、すでに大部分が失われ、たとえば枕草子は「春はあけぼの」だけになってしまっている、という作品を書いている。(1980年 光文社 ポップコーン第4号掲載)
- HTTP 451
- DAI-HONYA - 『書店法』により本を読むこと、所持することが特殊技能となった世界が舞台。
- 黒塗り世界宛て書簡
- 451 - ヨルシカの楽曲
脚注
編集- ^ RAY BRADBURY: FAHRENHEIT 451 MISINTERPRETED
- ^ アニメ版『図書館戦争』DVD第1巻初回限定版特典別冊付録「DVD SPECIAL BOOKLET」18ページ参照