炭素の同位体
炭素の同位体には、炭素8から炭素22まで15種類が知られており、そのうち2種類(炭素12と炭素13)が安定である。長寿命の放射性同位体である炭素14の半減期は5700年である。これは天然でみられる唯一の炭素の放射性同位体で、宇宙線との相互作用による14N + 1n → 14C + 1Hという反応で、痕跡量が生成している。最も安定な人工放射性同位体は炭素11で、半減期は20.334分である。その他の全ての放射性同位体の半減期は20秒以下であり、ほとんどが200ミリ秒以下である。最も不安定な同位体は炭素8で、半減期は10×10-21秒である。天然の存在量の平均をとった、炭素の標準原子量は、12.0107(8) uである。
炭素11
編集炭素11は、炭素の放射性同位体である。約99%は陽電子放出してホウ素11に、0.19-0.23%は電子捕獲してやはりホウ素11に崩壊する[1][2]。半減期は20.38分である。
炭素11は、ポジトロン断層法で分子の放射性ラベリングによく用いられる。
天然同位体
編集炭素には、炭素12、炭素13、炭素14の3つの天然同位体が存在する。炭素12と炭素13は安定で、天然の存在比は、約99:1である。炭素14は、大気上層で宇宙線からの熱中性子により生成し、地表に下降して生物に吸収される。炭素14の存在比は無視できる程度であるが、半減期5700年の放射性を持つため、放射計で検出することができる。死んだ組織は、それ以上炭素14を吸収しないため、炭素14の存在量は放射年代測定に用いることができる。
古気候
編集12Cと13Cは海洋循環を説明する温度トレーサーとして使われる。より軽い同位体(12C)の方が、植物が光合成するときに吸収されやすいことが分かっており、そのときのプランクトン(浮遊生物)の大発生により大量の12Cが海に取り込まれる。もし海水が成層化して海洋循環が滞ると、プランクトンの死滅によって12Cが海底に沈降し、表層は比較的多くの13Cで満たされる。そして、深い場所から冷水がわき上がる場所(北大西洋)から12Cがもたらされる。過去の気候のトレーサーには熱帯種、サンゴの成長環などがある(Flannery 2005)。
一覧
編集同位体 核種 |
Z(p) | N(n) | 同位体質量 (u) | 半減期 | 核スピン数 | 天然存在比 | 天然存在比 (範囲) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
励起エネルギー | |||||||
8C | 6 | 2 | 8.037675(25) | 2.0(4) x 10-21 s [230(50) keV] | 0+ | ||
9C | 6 | 3 | 9.0310367(23) | 126.5(9) ms | (3/2-) | ||
10C | 6 | 4 | 10.0168532(4) | 19.290(12) s | 0+ | ||
11C | 6 | 5 | 11.0114336(10) | 20.334(24) min | 3/2- | ||
12C | 6 | 6 | 12 by definition | STABLE | 0+ | 0.9893(8) | 0.98853-0.99037 |
13C | 6 | 7 | 13.0033548378(10) | STABLE | 1/2- | 0.0107(8) | 0.00963-0.01147 |
14C | 6 | 8 | 14.003241989(4) | 5.70(3) x 103 years | 0+ | <10-12 | |
15C | 6 | 9 | 15.0105993(9) | 2.449(5) s | 1/2+ | ||
16C | 6 | 10 | 16.014701(4) | 0.747(8) s | 0+ | ||
17C | 6 | 11 | 17.022586(19) | 193(5) ms | (3/2+) | ||
18C | 6 | 12 | 18.02676(3) | 92(2) ms | 0+ | ||
19C | 6 | 13 | 19.03481(11) | 46.2(23) ms | (1/2+) | ||
20C | 6 | 14 | 20.04032(26) | 16(3) ms [14(+6-5) ms] | 0+ | ||
21C | 6 | 15 | 21.04934(54)# | <30 ns | (1/2+)# | ||
22C | 6 | 16 | 22.05720(97)# | 6.2(13) ms [6.1(+14-12) ms] | 0+ |
- #でマークされた値は、全てが純粋に実験値から算出されたものではなく、一部体系的な傾向から導き出された推定値を含んでいる。明確なデータが得られていない核スピンに関しては、かっこ書きで表記している。
- 数値の最後にかっこ書きで表記しているのは、その値の誤差を示している。誤差の値は、同位体の構成と標準の原子質量に関しては、IUPACが公表する誤差で表記しており、それ以外の値は、標準偏差を表記している。
- 同位体存在比の正確さと質量数は変化によって制限される。天然存在比の範囲は、通常の地球上のどの場所でも同じはずである。
- すべての核種の原子量の標準として扱われるように12Cは特に重要であり、その原子量は12と定義されている。
出典
編集- ^ Scobie, J.; Lewis, G. M. (1 September 1957). “K-capture in carbon 11”. Philosophical Magazine 2 (21): 1089–1099. Bibcode: 1957PMag....2.1089S. doi:10.1080/14786435708242737 27 March 2012閲覧。.
- ^ Campbell, J.L.; Leiper, W., Ledingham, K.W.D., Drever, R.W.P. (NaN undefined NaN). “The ratio of K-capture to positon emission in the decay of 11C”. Nuclear Physics A 96 (2): 279–287. Bibcode: 1967NuPhA..96..279C. doi:10.1016/0375-9474(67)90712-9 27 March 2012閲覧。.
参考文献
編集- Flannery, T (2005). The weather makers: the history & future of climate change. Melbourne, Australia: The Text Publishing Company. ISBN 1920885 84 6
- Isotope masses from Ame2003 Atomic Mass Evaluation by G. Audi, A.H. Wapstra, C. Thibault, J. Blachot and O. Bersillon in Nuclear Physics A729 (2003).
- Isotopic compositions and standard atomic masses from Atomic weights of the elements. Review 2000 (IUPAC Technical Report). Pure Appl. Chem. Vol. 75, No. 6, pp. 683-800, (2003) and Atomic Weights Revised (2005).
- Half-life, spin, and isomer data selected from these sources. Editing notes on this article's talk page.
- Audi, Bersillon, Blachot, Wapstra. The Nubase2003 evaluation of nuclear and decay properties, Nuc. Phys. A 729, pp. 3-128 (2003).
- National Nuclear Data Center, Brookhaven National Laboratory. Information extracted from the NuDat 2.1 database (retrieved Sept. 2005).
- David R. Lide (ed.), Norman E. Holden in CRC Handbook of Chemistry and Physics, 85th Edition, online version. CRC Press. Boca Raton, Florida (2005). Section 11, Table of the Isotopes.