九重山

大分県にある山地
九重連山から転送)

九重山(くじゅうさん)は大分県玖珠郡九重町竹田市久住町の境界に位置する山々の総称(地質学上の呼称)[1]。最高峰は九州本土最高峰でもある中岳 (標高1,791m)[2]

九重(くじゅう)連山
牧ノ戸峠展望台から見た九重(くじゅう)連山。右が三俣山
所在地 大分県
位置 北緯33度05分09秒 東経131度14分56秒 / 北緯33.08583度 東経131.24889度 / 33.08583; 131.24889座標: 北緯33度05分09秒 東経131度14分56秒 / 北緯33.08583度 東経131.24889度 / 33.08583; 131.24889
最高峰 中岳(1,791 m
種類 主に溶岩ドームからなる火山群
九重山の位置(日本内)
九重山
九重山の位置
プロジェクト 山
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九重山の地形図

一般的には火山群や周辺地域全体を指すときはくじゅう連山(九重連山)、その主峰となっている一山(標高1,787m)を指す場合には久住山も用いている[2]国土地理院の火山土地条件図では「くじゅう連山」とひらがな表記になっている[1]日本百名山の一つに数えられ、一帯は阿蘇くじゅう国立公園に指定されている。

名称

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九重山と久住山

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山麓には古く旧竹田領側に九重山白水寺(法華院)、旧肥後領側に久住山猪鹿寺の2つの寺院が開かれ、山号を基にした表記がそれぞれの地域に結びつくことになり、九重町では「九重山」、久住町では「久住山」の表記が用いられるようになった[1]

国土地理院の5万分の1地形図「宮原」の初版(1903年、明治36年)では、標高1787,9mの嶺峯を「久住山」、星生山や久住山などの嶺峯の総称を「九重山」と表記している[1]

くじゅう連山

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山の統一的な名称については論争があったが[3]、旧直入郡久住町と玖珠郡九重町との合意で、黒岳、大船山、平治岳、三俣山、稲星山、久住山等の山々の総称をひらがな表記で「くじゅう連山」とすることになった[1]。これにより「阿蘇国立公園」にこの地域を加えて改名するにあたり名称を「阿蘇くじゅう国立公園」とすることになった。また、坊ガツルタデ原ラムサール条約への登録名も「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」となっている[2]

地質学上の呼称

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気象庁ではこれらの山々の総称を「九重山」としており研究者の論文の多くもこれに倣っている[1]

なお、宮城火砕流の噴出以降の火山活動で形成された火山体(くじゅう連山及び猟師山、合頭山、黒岩山、泉水山の総称)を九重火山群という(涌蓋山など玖珠川以西の山は含まない)[1]

主要峰

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10数個の火山体が東西13km、南北10kmの範囲に集まっている。標高にして1,700m前後のものが多い。西部には久住山をはじめとする久住山系の山々が連なり、広い坊がツルの草原をはさんだ東側の対面に大船山を中心とする大船山系の山々が並ぶ。

火山活動

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震災予防調査会の地形地質図(1920年)。

九重火山は、約20万年前に形成された宮城火砕流堆積物より上位の活動と定義される、安山岩デイサイトを主体とする火山群である。宮城火砕流堆積物より下位の周辺の活動としては、30万-60万年前に野稲火山群、40万-100万年前に涌蓋火山群、60万-90万年前に時山火山群、80万-100万年前に猪牟田カルデラが存在する。これらの火山も以前は九重火山として含まれていた[4]

活動の初期に比較的大きな火砕流を3回噴出[5]しているが、カルデラを形成した形跡は無い。約5.4万年前にも飯田火砕流、九重第1降下軽石などを噴出する大きな噴火(7.2 DRE km3)が発生した[6]。現在見られる山々のうち西側の久住山・星生山・三俣山などがある久住山系は13万年前から活動していたが、東の大船山系はそれより新しく2万5千年前から噴火を始めた。九重連山で最も東側にある黒岳は約1600年前の噴火によって形成されたもので、噴出量が1 DRE km3を越えるイベントの中では最新の山体である。山中には現在も噴気による立ち入り禁止箇所がある。

火山噴火予知連絡会によって火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山に選定された[7]

この一帯は地熱地帯で、筋湯温泉の近くには火山の熱エネルギーを利用して地熱発電する八丁原発電所大岳発電所がある。

高原

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九重山の北や南は緩やかに波打つ広大な草原となっており、酪農が盛ん。またこの特徴を利用した観光牧場も多い。

植生

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坊がつる賛(讃)歌』に詠われたミヤマキリシマは、初夏に大船山や平治岳の斜面を赤く染める。そのほかにもイワカガミツクシシャクナゲツクシドウダンコケモモマツムシソウリンドウなどが山中のあちこちに次々に咲く。

登山口

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阿蘇市別府市を結ぶやまなみハイウェイ沿線にある長者原(バス停:くじゅう登山口)や牧ノ戸峠が登山口となる。九重山の北側に位置する長者原からは坊ガツル経由で大船山、久住山等へ、西側に位置する牧ノ戸峠からは久住山等への登山道が整備されている。

温泉

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九重山中にある法華院温泉は、標高1,303mの高さにある一軒宿、交通手段は徒歩のみ[注 1]。九重山の中腹を通るやまなみハイウェイ沿いには、寒の地獄温泉星生温泉などの一軒宿が点在しており、「くじゅう連山温泉郷」と呼ばれている。少し離れた筋湯温泉は『打たせ湯』で有名だが、立派な宿泊施設が立ち並ぶ。

 祖母山系(そぼさんけい)大船山系(たいせんさんけい)久住山系(くじゅうさんけい)長者原(ちょうじゃばる)天狗岩(てんぐいわ)高塚山(たかつかやま)大船山(たいせんざん)北大船山(きたたいせんざん)平治岳(ひいじだけ)稲星山(いなぼしやま)中岳(なかだけ)久住山(くじゅうさん)三俣山(みまたやま)星生山(ほっしょうさん)沓掛山(くつかけやま)牧ノ戸峠(まきのととうげ)黒岩山(くろいわやま)一目山(ひとめやま)崩平山(くえんひらやま)涌蓋山(わいたさん)
由布岳の山頂から見た九重連山。大船山系と久住山系の間の谷に、ラムサール条約登録湿地である坊ガツルが広がる。長者原から牧ノ戸峠にかけては、やまなみハイウェイの名で親しまれている大分県道11号線が走る。写真左奥の祖母山系は大分・宮崎県境に連なる山塊である。

脚注

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注釈

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  1. ^ ただし、荷物の輸送には軽トラック大船林道経由で使用される。

出典

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  1. ^ a b c d e f g 火山土地条件調査報告書”. 国土地理院. pp. 3-4. 2020年12月27日閲覧。
  2. ^ a b c 緑の大自然(くじゅう連山)”. 竹田市. 2020年12月27日閲覧。
  3. ^ 小俣幸太郎「地形図における地名註記の問題点:久住山と九重山」『地図』第1巻第3号、日本地図学会、1963年、25-27頁、doi:10.11212/jjca1963.1.3_25ISSN 0009-4897NAID 130003812878 
  4. ^ 川辺禎久・星住英夫・伊藤順一・山﨑誠子『九重火山地質図 解説 3: 形成史』地質調査総合センター、2015年https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/kuju/text/exp-2.html 
  5. ^ 地層下位から宮城火砕流、下坂田火砕流、豊後渡火砕流
  6. ^ 九重火山 産業技術総合研究所, 2015年2月11日閲覧 (PDF)
  7. ^ 火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山”. 気象庁. 2016年2月25日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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