ブンガワンソロ
『ブンガワンソロ』は、1951年制作の日本映画。市川崑が新東宝で撮った最後の作品(この後、東宝に復帰した)。
ブンガワンソロ | |
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監督 | 市川崑 |
脚本 |
和田夏十 市川崑 |
原作 | 金貝省三 |
製作 | 佐藤一郎 |
出演者 |
池部良 森繁久彌 伊藤雄之助 久慈あさみ 藤田進 |
音楽 | 飯田信夫 |
撮影 | 横山実 |
編集 | 長田信 |
製作会社 | 新東宝+佐藤プロ |
配給 | 新東宝 |
公開 | 1951年10月19日 |
上映時間 | 92分 |
製作国 | 日本 |
言語 |
日本語 インドネシア語 |
太平洋戦争終結前夜のインドネシア・ジャワ島を舞台に、日本軍の脱走兵と彼に恋心を抱く村の娘の悲恋を描く。日本映画技術賞特殊技術賞(新東宝特殊技術スタッフに対して)。昭和26年度藝術祭参加作品。
あらすじ
編集太平洋戦争終結前夜の1945年8月、ジャワ島のジャングル奥深くにある村に3人の日本軍の脱走兵、深見・武・野呂が逃げ込んでくる。野呂はマラリアに感染していたため、3人はスヘルマン家に匿われる。
スヘルマンの娘サリヤは日本兵を嫌っていたが、彼らの世話をするうちに深見に恋心を抱くようになる。ある日、3人が村を出ようとしたとき、深見が突然、村に残ると言い出す。深見もまた、サリヤに恋心を抱いていたのだ。その時、小田切という足を負傷した日本軍の軍曹が村に流れて来た。3人を連行しようとした小田切だったが、スヘルマンが祭の酒席に誘い、酔っているうちに意気投合。だが、武は不慮の事故に遭う。そこに3人の脱走兵を追った憲兵が村に現れた。
サリヤは市場へ行くふりをして、マラリアに感染した深見を馬車に乗せてこっそりと連れ出す。
スタッフ
編集キャスト
編集逸話
編集監督に市川崑の名が記載されているが、劇中の半分以上は別の人物が演出しており、市川が後年に本作を語った時も、誰が演出したかについては一切明かさなかった(但し監督としてキャリアがある人物であることは市川も認めている)という曰く付きの作品である。製作当時、市川は話の設定がインドネシアのジャワ島であることを考慮して、ロケ撮影では強い日差しが入る演出の必要性を感じていたが、新東宝に海外ロケの予算はなく、国内のオープンセットで撮影を行っていたが日照不足で撮影が捗らず。スケジュールに遅れが生じたことで、新東宝に封切りの延期を求めるよう交渉している最中に、スケジュールの延滞に加えて封切り日を繰り上げたい新東宝側が、「市川が撮影を放棄した」と一方的に判断して別の人物に撮影させ、編集も無断で行って完成させてしまった。市川は監督協会に訴えたうえで新東宝に監督のクレジットを外すよう要望したが「監督のタイトルのない映画は公開できない」と認められず、結局は本作を生涯鑑賞することなく(代わりに妻である和田夏十が試写に参加した)、東宝へ移籍することになるが、本作の一件が直接の原因ではなく、藤本真澄に誘われる等、複数の要因が重なっての移籍であったと、後年証言している[1]。
久慈あさみが全速で馬車を駆るシーンを御殿場で撮影中、馬が暴走し右足に「二寸五分の裂傷で骨が欠けるほどの」重傷を負うたので撮影は中断され、封切り予定日に大幅な狂いが出た。この事も市川昆と新東宝の軋轢の原因のひとつと成っている[2][3][4]。
スヘルマン一家を演じた久慈あさみ、若山セツ子、小沢栄、高橋豊子は、専門家の指導のもと、全編マレー語のみで演じ、すべての台詞に字幕スーパーが表記されている[5]。
DVDパッケージや日本映画データベースでは上映時間が92分と表記されているが、各媒体の収録時間は約84分。東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵プリントも84分。よって上映時間は84分である。
公開当時、主題歌である『ブンガワンソロ』は作者不詳で、クレジット表記がされていなかったが、現在ではインドネシアのグサン・マルトハルトノの作詞作曲であることが判明している[6]。
脚注
編集- ^ 『完本 市川崑の映画たち』、2015年11月発行、市川崑・森遊机 、洋泉社、P69~72
- ^ 針生進「昭和26年の久慈あさみ」『白鴎大学論集』第32巻第2号、白鴎大学経営学部、2018年3月、43-75頁、ISSN 0913-7661、NAID 120006530660、2021年12月12日閲覧。
- ^ Template:「『ブンガワンソロ』製作秘話」鈴木宣孝
- ^ Template:「東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション」No.58(デアゴスティーニ・ジャパン、2016年)添付リーフレット4-5頁
- ^ 『完本 市川崑の映画たち』、2015年11月発行、市川崑・森遊机 、洋泉社、P70、72
- ^ 『完本 市川崑の映画たち』、2015年11月発行、市川崑・森遊机 、洋泉社、P494