スケートリンク
スケートリンク(英: ice rink、または、(ice) skating rink)は、スケートをすることが可能な広さと丈夫さを持つ、水平に氷が張られた平面、また は、それを含む施設のこと。「銀盤」「アイススケートリンク」「スケート場」「スケートセンター」「アイスアリーナ」などとも呼ばれる。
語源
編集リンク(rink)は、スコットランド語で「コース」を意味する単語であり、カーリングをする場所の名前として使われていた。その後、この語は、他のスポーツやさまざまな用途の氷の張った場所に対して転用されるようになった[1]。
概要
編集アイススケートを実施するには、人が多数乗っても割れないほど丈夫で、摩擦が小さい平面が必要だが、冬季の気温が充分低くなって結氷する地域では、湖沼や運河、あるいは、勾配が小さい河川が最も簡便にアイススケートに供されるスケートリンクとなる。湖沼等が結氷しない地域でも、ある程度の広さをもった水平の陸上(学校の校庭・河川敷・田畑など)に冬季に水をまいて氷を張り、スケートリンクとして使用される。
製氷技術を使って人工のスケートリンク(パイピングリンク)を設置する場合は普通、冷却管を敷き詰めて水を張り、冷凍機で氷点以下に冷却した熱媒体を冷却管に循環させて氷結させる。熱媒体としては塩化ナトリウム水溶液(塩水、ブライン)や塩化カルシウム水溶液を用いる例がよく見られる。これら塩(えん)の水溶液は、凝固点降下によって氷点以下でも氷結しない。また、液化二酸化炭素を熱媒体として冷却管に循環させる方法もある。いずれであっても冷凍機を稼働させるエネルギーが必要であり、それは電気であることが一般的である。ほかに、液化天然ガス(-162℃以下)を火力発電や工業等で利用するため再ガス化する際、気化熱を周辺から収奪することを利用して熱媒体を冷却する方法もある。この例として日本国内には、大阪府立臨海スポーツセンタースケートリンクがある。
近年は、滑走可能なほど摩擦が小さいプラスチック素材を使って、氷以外でスケートリンクを造る技術もある。この方法ではエネルギーを必要としないが、滑走面にワックスを適宜塗る必要がある場合もある。
一般にレジャーとしてのアイススケートの参加人口が増加するのは冬季であるため、野外型のスケートリンクは需要と供給が合った施設となるが、屋内型は夏季の利用者減少が営業上の問題となる。また、屋内型は夏季の外気温の高さや電気料金の設定などにより、最も暑い時期のランニングコストが冬季に比べて数倍になる地域もある。そのため、屋内型は夏季にランニングコストがより低くて参加人口の多いプールや体育館等に転用し、冬季に再びスケートリンクに戻すことを毎年繰り返す施設も多い。逆に、通常は体育館や展示会場として使用し、競技会のときのみ冷却管を敷き詰めてスケートリンクを設置する例も見られる。野外型のスケートリンクでも、夏季は運動場として利用する例も見られる。なお、亜熱帯地方などでは、夏季の外気温の高さから逃れるために、涼しい屋内スケートリンクを利用する者もいるため、夏季のアイススケート参加人口が極端には減らないとの説明もある。
スケートリンクはアイススケート競技での利用を考えて、想定される競技に合った規格で建設される例がよく見られる。スケートリンクで実施される競技として、アイスホッケー、バンディ、リンクバンディ、リンゲット、スピードスケート、フィギュアスケート、アイスストックスポーツ、長靴ホッケー、カーリングがある。
種類
編集レジャー用
編集特に決まった規格はなく、開設場所の事情に合わせて設置される。校庭などの土の上に水をまいてリンクをつくる場合は水平をつくるのが難しいため、あらかじめコンクリート等でリンクの大きさの水平面をつくり、その上に水をまく方法もある。
競技用
編集種目 | リンク模式図 | 規格 |
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スピード スケート |
野外、屋内、または室内において、1周が最大400m~最小333と1/3mで、ダブルレーンを備え、2つの180度のカーブを持ったトラックが使用される[2]。カーブの内側半径は25m~26m、レーンの幅は内側が4m、外側が4m以上[2]。 | |
ショート トラック スピード スケート |
屋根付きの閉ざされた室内(要暖房設備)にある60m×30m以上の広さのリンクにおいて、1周が111.12mの楕円形トラックをつくって使用する[2]。 | |
アイス ホッケー |
国際規格では最大61m×30m、最小56m×26m[2]。NHLで使用される北米規格は、200フィート(約61m)×85フィート(約26m)。詳細は「ホッケーリンク」参照。 | |
フィギュア スケート |
国際規格では最大60m×30m、最小56m×26m[2]。 | |
カーリング | カーリングを参照。 | |
バンディ | バンディを参照。 |
日本のスケートリンク
編集地図外部リンク | |
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日本国内のアイススケート場 | |
現在営業中(通年&季節限定) | |
閉鎖されたリンク | |
地図の不具合を報告 | |
第二次世界大戦前は、大正時代末期に大阪の市岡パラダイス内に日本初の人工のスケートリンク「北極館」ができた[3]が、全国的には数が少なかった。一般的には冬季に湖水・池水の自然氷を利用して天然のリンクとして滑走したが、天候、氷の厚さ、氷の良し悪しに左右されることが多かった。しかし、第二次世界大戦後、特に高度経済成長期に人工のスケートリンクが急速に増加したことで、天候に大きく左右されるということは少なくなった。同時にスピードスケートにおいては記録の飛躍的な向上につながった。
文部科学省の社会生活基本調査[4]によれば、屋内リンクの設置箇所数は1969年には122、1985年には268、1996年には127あったが、年々減少し2008年には96箇所にまで減った。屋外リンクは1969年には270、1985年には672、1996年には278あったが、年々減少し、2008年には115箇所になった。冬季オリンピックが行われるたびに一時的に脚光を浴びるが、すぐに廃れてしまうのを繰り返している。
競技面からいえば、練習場所が少なくなるのは死活問題である。また、通年利用できる400mトラックのリンクがないため、日本国内の選手は、夏期の練習は海外に行かなければいけないのが難点であるが、2009年9月には北海道帯広市に屋内に400mトラックリンクを有する明治北海道十勝オーバルが完成し、翌年からは7月中旬にはリンクの使用を開始し、日本国内のスピードスケート競技者が夏期の練習を行う拠点になりつつある。
また関西大学の「関西大学アイスアリーナ」や中京大学の「中京大学オーロラリンク」のように大学が独自のスケートリンクを建設した例もある。
主なスケートリンク
編集400mトラック
編集スピードスケートに使用される。
- 真駒内屋外競技場 真駒内セキスイハイムスタジアム(北海道札幌市) 屋外
- 苫小牧市ハイランドスポーツセンター屋外スケート場(北海道苫小牧市) 屋外
- 帯広の森スピードスケート場 明治北海道十勝オーバル(北海道帯広市) 屋内
- 釧路市柳町スピードスケート場(北海道釧路市) 屋外
- 八戸市長根スケートリンク YSアリーナ八戸 (青森県八戸市) 屋内
- 岩手県営スケート場(岩手県盛岡市) 屋外
- 山形市総合スポーツセンタースケート場(山形県山形市落合町) 屋外
- 福島県郡山スケート場(福島県郡山市) 屋外
- 日光霧降スケートセンター(栃木県日光市) 屋外
- 群馬県総合スポーツセンター伊香保リンク(群馬県渋川市) 屋外
- 富士急ハイランド コニファーフォレストセイコオーバル(山梨県富士吉田市) 屋外
- 山梨県立八ヶ岳スケートセンター(山梨県北杜市) 屋外
- エムウェーブ(長野県長野市) 屋内
- 茅野市運動公園国際スケートセンター(NAO ice OVAL)(長野県茅野市) 屋外
- 軽井沢風越公園スケート場(長野県軽井沢町) 屋外
- 岡谷市やまびこ国際スケートセンター(長野県岡谷市) 屋外
- 松原湖高原スケートセンター(長野県小海町) 屋外
- 岐阜県クリスタルパーク恵那スケート場(岐阜県恵那市) 屋外
ホッケーリンク
編集ホッケーリンクは、アイスホッケーのほか、ショートトラックスピードスケートやフィギュアスケートに使用される規格であり、カーリングに対応している場合もある。多数あるので、通年で営業しているリンク[5]のみ以下に列挙する。ここで言う通年営業は、週1回程度の定休日で1年中営業日を設けているという意味である。以下の中には、一般利用と貸切使用を合わせて、1年中24時間営業をしている施設もある。
- サイズ:メインリンクのサイズ。縦(m)×横(m)。
- 通年化:通年営業になった年。ただし、不明の場合は開設年。通年化した後、運営者が変更になったり、営業中断期間があったり、旧施設を解体・新設したりしている場合あり。
- 学校法人梅村学園・中京大学および学校法人関西大学・関西大学のリンクは、大学関係者および競技者の専用施設であるが、一般開放日が設定される場合あり。学校法人加計学園・倉敷芸術科学大学の教育施設であるヘルスピア倉敷のリンクは一般開放されている。
- 鉤括弧内は正式名称と並列される愛称。括弧内は広く知られた通称。命名権売却によって正式名称より優先される愛称が設定されている場合は、愛称の方を記載。
カーリング場
編集カーリングでは霧状の蒸留水を散布して、「ペブル」と呼ばれる微細な氷の突起をリンク上につくる。他の氷上競技ではリンク上をより平滑にするための製氷が行われるため、「ペブル」は邪魔なものとなる。
関連項目
編集出典
編集- ^ Redmond, Gerald (1982). The sporting Scots of nineteenth-century Canada. Toronto, Ontario: Associated University Presses Inc.. p. 271. ISBN 0-8386-3069-3
- ^ a b c d e 「第71 回国民体育大会競技施設基準」の改定(案) (PDF) (希望郷いわて国体・希望郷いわて大会実行委員会)
- ^ 『日本のスケート発達史 ―スピード・フィギュア・ホッケー―』 ベースボール・マガジン社、124p、1981年。
- ^ 総務省統計局(1969・1985・1996):「社会生活基本調査」。調査種別・施設種別体育・スポーツ施設設置箇所数より抜粋。
- ^ 全国の通年型スケートリンク一覧 (PDF) (新潟市)