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札幌サウンドデモ7・5救援会

2008年7月5日、札幌で開催された「チャレンジ・ザ・G8 1万人のピースウォーク」のサウンドデモ部分への異様な過剰警備・弾圧があり、4名が逮捕されました(当日のまとめ)。しかしこれは逮捕というより拉致監禁と呼ぶべきまったく不当なものでした。警察に破壊されたレンタルのトラックはすぐには還付されず、トラックごと押収された荷物について札幌中央署の河田警備課長は「押収品ではない」と主張し、7日に返還するまで勝手に持ち去り所持する警察のドロボーぶりを自ら暴露。デモ直後にはウォーク参加者が札幌中央署前で抗議行動に尽力し、その日の初動救援を受け救援会が結成され早期釈放を追求、翌日よりカンパ要請を開始。弁護士もチームを組んで接見を開始、救援会とともに披逮捕者への支援を継続。7日早朝、検事送致(いわゆる送検)、救援会が中央署に駆けつけ押送時に激励、その後トラック以外の荷物を取り戻し差入ロイターのカメラパーソンのみ7日に検事釈放され、8日、ウォーク参加者の3名は地検に勾留を請求され、接見禁止処分付きで裁判官が認容勾留状は不当なものでした。また運転手への杜撰な押収品目録交付と警備課のウソ。9日、救援会が中央署の脇を通るデモ(12日)を申請・デモ呼びかけ。同日午後の記者会見後、署前で激励行動。10日、マニラで日本大使館抗議行動。11日、トラックが直接業者に還付される。運転手逮捕の押収品じゃなかったのか。12日国際連帯呼びかけ札幌で救援会のデモ、東京・大阪・京都・福岡で同日連帯行動、そしてベルリン、ソウルでも行動あり。中央署への抗議FAXキャンペーン(終了)。15日、勾留理由開示請求公判報告。16日、処分保留のまま全員釈放! 18日、報告集会。19日、抗議デモ。8月23日ふりかえる集会
 
 

勾留理由開示公判・弁護人意見書

集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例、道路交通法違反被疑事件
被疑者 (略)


意  見  書


平成20年7月 日
札幌地方裁判所裁判官 石渡圭 御中

 頭書被疑事件の勾留理由開示公判における意見陳述の要旨は下記の通りである。

弁護人  小  坂  祥  司



第1 意見の趣旨
 職権をもって本件勾留を取り消す。
 との決定を求める。

第2 意見の理由
1 本件の被疑事実
  本件の被疑事実は、2008(平成20)年7月5日、札幌市中央区内において開催された「チャレンジ・ザ・G8サミット1万人のピースウォーク」統一行動に参加していた被疑者が、「先導する普通貨物自動車(札幌100わ○○○○号)の荷台から荷台上にあった旗竿を左右に大きく振り回した」こと(道路交通法違反)、「先導する普通貨物自動車(札幌100わ○○○○号)の荷台に乗車して同集団の先頭に位置し、旗竿を振り回すなどして、音頭をとり同集団のフランスデモ及びだ行進を扇動した」(条例違反)とされている。

2 本件逮捕は表現の自由及び団結権の侵害であって違憲である
(1) 本件逮捕の状況
  当職の調査によれば、本件逮捕時の状況は以下のとおりであった。
① 本件現行犯逮捕が強行された2008(平成20)7月5日、被疑者は、「チャレンジ・ザ・G8サミット1万人のピースウォーク」のデモ行進に、自動車上で音楽を流し、市民に語りかけるDJとして参加していた。上記デモは、平和で公正な世界の実現とサミットにもっと多様な人々の声を反映することを目的とするものである。
  なお、本件デモ行進については、平成20年7月4日付けで、北海道公安委員会及び北海道警察札幌方面中央警察署から許可を受けている。被疑者のようにDJが普通貨物自動車の荷台に載ってDJを行うことについても、2人まで荷台に載ることが認められていた。
② しかし、デモ行進が始まるや、自動車の周辺には、多数の公安警察官や機動隊、警察官らが、張り付いていた。
  デモ行進が札幌市中央区南4条西3丁目3番地にさしかかったところ、自動車の荷台に乗車していた2名が集会・集団行進及び集団示威運動に関する条例等に抵触するおそれありとし、現行犯逮捕された。うち1名は、荷台に乗ってから僅か数分以内に逮捕されているが、その人物が本件の被疑者であった。
③ 被疑者は、逮捕されたもう1人のDJが自分の分担時間を終わり、自動車の荷台から降りた後、その交代として荷台にのぼった。被疑者が荷台にのぼってまず行った作業はアンプに電源を入れること、荷台のまわりを片づけることであった。その作業のなかで、自動車の進行方向に向かって荷台の右脇に置かれていた旗竿に気づいたが、これが荷台の中央に転がり落ちそうになっており、これに足がもつれると危険だと考えたため、被疑者は旗竿を持ち、くるまっていた旗の部分を少し緩めて広げ左右に転がらないようにした。その際、旗を何度か上下させたが、上記の目的のためであり、旗の位置も腰より低い位置であった。
  その動作はほんの数秒でしかなかった。全体で見ても、被疑者が荷台に上がり逮捕されるまでの時間は数分でしかない。
④ 被疑者の行った行為は以上のとおりであり、警察はこれを上記のごとき道路交通違反、条例違反として現行犯逮捕を行ったのである。当職は、この被疑者の行為については、現場を撮影したビデオによって確認しているが、道路交通違反行為としても条例違反行為(扇動行為)としても、およそ問題になる行為とは考えられない。犯罪ならざるものを犯罪として現行犯逮捕したのであって、違法な逮捕と言わざるを得ない。
(2) 本件逮捕は違法・違憲である
  以上のような逮捕の経過からすれば、本件現行犯逮捕は、本件デモ行進を妨害する意図のもとになされたものであって、単に現行犯逮捕の要件を満たさない違法があるだけではなく、表現の自由を侵害するものであり違憲というべきである。
① 憲法21条は表現の自由を基本的人権として保障しているが、本件デモ行進のような集団示威運動も表現の自由の一態様であることはいうまでもない。表現の自由は、その内容の価値を問わず、民主制の過程では一度侵害が行われれば回復困難となる基本的人権として強く保障されるべきものである。特に集団的示威行動は、誰でも容易に表現の自由を行使する手段として、立憲民主制をささえる基盤となる表現行為であるため、とりわけ十分な権利保障が要請される。
② さらに、世界の平和・先進諸国民のみならず、全ての人類の平和を訴えた被疑者らの集団示威行動は、憲法28条で保障された団結権の行使の一態様としても、高度な保障が要請されるものである。
  そもそも1944年のILO第26回総会における「フィラデルフィア宣言」は、第1条(b)として、「表現及び結社の自由は、不断の進行のために欠くことができない」と宣言して表現の自由と結社の自由とを密接不可分のものとしている。また、第二次世界大戦の反省に立って、国連は、団結権が保障されていれば、労働組合が抵抗勢力になって、第二次世界大戦は起こらなかったかもしれない。戦後にILOが最初にやるべきことは、団結権を保障することである、との強い要請を行い、そのもとで、1946年、結社の自由及び団結権の保障に関するILO87号条約が採択された。このように、反戦と結社の自由及び団結権も、相互に密接な関係を有するものとして国際的には捉えられている。
③ 被疑者らが行っていたデモ行進は、まさにこうしたILOの理念たる表現及び結社の自由=団結権行使の実現そのものであった。
  当日に開催されたデモも極めて穏当なものであった。ところが、多くの警察官、公安警察、機動隊による過度の規制、警備状況により、デモ周辺は物々しい雰囲気に脅かされ、一般市民への不安感を煽ったのである。
  本件デモ行進に対する警察官らの警備活動逮捕行為に至る過程をふまえると、捜査当局は、本件デモ行進が表現の自由=団結権の行使の一態様であることを意図的に無視し、本件デモ行進自体が、市民の平穏な生活を脅かすもののごとく扱っていた。1万人を超えるとおぼしき警察官、機動隊員が、デモ対応に出動し、中通りごとに多数の機動隊が配備されているという状況で、そのものものしさは、民主主義社会におけるデモ規制のあり方として、『異常』といわざるを得ないものであった。
(3) 以上のように、本件逮捕は、違憲・違法であり、本件勾留もその瑕疵を引き継ぐことになるから、違憲・違法である。

3 本件被疑事実の不存在
(1) 2において述べたとおり、被疑者が上記被疑事実を行ったとすること自体が極めて根拠薄弱であると言わざるを得ない。
  被疑者は、自分の前にDJを担当していた者と交代して上記の自動車の荷台に登ったのであるが、アンプの電源を入れたり、付近を片づけるなどする中で、荷台の自動車の進行方向に向かって右脇に置かれた旗竿を見つけた。その旗竿が荷台の中央に転がってくる可能性があり、被疑者は、足がそれにもつれることがあっては危険と考えて、旗竿を持ち上げ、くるまっていた旗を少しほどいて竿の部分が転がらないように動かしたにすぎない。その際の旗竿の位置は腰より低く、またその動作はわずか数秒のことに過ぎない。
  そのような行動が、「旗竿を左右に大きく振り回す」行為とみることなど到底できるものではない。
(2) また、被疑者がこのようにして旗竿に触れたのは、同人が荷台に登ってから数分も経っていないころであり、旗竿を持っていたのはわずか数秒のことである。被疑者が荷台登ったころにはすでにデモ行進の先頭部分の隊列は乱れており、一部では混乱が起こっていた状況である。被疑者の行為がデモ行進を行っている人々の関心を集めている状況ではなく、同人が「旗竿を振り回すなどして、音頭をとり同集団のフランスデモ及びだ行進を扇動」したとは到底言えず、行為自体がそもそも旗竿を振り回したりしていないことはもとより、現実にも「音頭をとり同集団のフランスデモ及びだ行進を扇動」することとはほど遠いものであった。
(3) 被疑者の行為については、被疑者を逮捕した警察官らによってビデオあるいは写真の撮影がなされているはずである。それを見れば、被疑者の行為は、荷台に登ったあとの荷台内の片づけ以上の行為ではないことが明らかになるはずである。このような行為をことさら、「左右に大きく振り回し」とか「旗竿を振り回すなど」(ただし、「など」については具体的に示されていない)して扇動したとすることは、明らかに事実を誇大化し歪曲するものである。
  なお、2で述べたとおり、当職は、被疑者逮捕時に撮影されたビデオを見ているが、被疑者の行為が被疑事実に該当するとは全く認識できなかったことを付言する。

4 罪証隠滅の恐れがあるとする誤り
(1) すでに述べたように、被疑者はそもそも被疑事実に該当する行為を行っていない。検察官の主張は、被疑者が行った些細な行為をあたかも公然と行われた扇動行為であるかのように歪曲誇張しているものであって、実際の事実経過をみれば到底扇動行為などと呼べるものではないのである。
  被疑者は、被疑事実に該当する行為があったとして、現場にいた多数の警察官の中で現行犯逮捕されているのである。犯行を現認したからこそ現行犯逮捕したはずである。しかも、それを行ったのは素人ではなく捜査の専門家である警察官であり、更には、被疑者の行為も撮影されていたと推察されるのである。このようにしてなお被疑者の犯罪の立証に不安を感じることがあるとすれば、それはそもそも被疑事実として十分な事実が存在せず、逮捕が不当であったことを示す以外の何ものでもない。
  なお、被疑者は、逮捕当初その被疑事実を、「荷台に登って身を乗り出して踊った」ことであると警察官から告げられていた。被疑者はそのようなことをそもそもしたことがなく、その旨告げてから本件のごとき被疑事実に変化したというのである。このような変遷自体もまた、現行犯逮捕の問題性を示すものである。
(2) また、被疑者の行動や逮捕時の映像などの客観証拠はすでに警察官によって確保されているはずであるし、目撃証人も警察官となるはずであり、そのような警察官に対し一市民が証人威迫を行うことなど不可能である。
  このような状況では罪証隠滅などおよそ考えられない。裁判官が勾留を認めた判断は極めて不可解であり、なお罪証隠滅の恐れが考えられるというのであれば、どのような場合を想定しているのか、その一例なりとも示されるべきである。
(3) なお、勾留に関しては、罪証隠滅のおそれについて「犯行時及び前後の事情等の罪体及び重要な状況について、被疑者が、関係者等に働きかけるなどして」という抽象的な文言によってこれを認めるという裁判所の判断が数多く見られるが、勾留の必要性が問われているのは本件についてであり、本件について具体的にどのような行為を想定しているのかが明らかにされなければ、この勾留を維持する理由が示されたことにはならない。例えば、「関係者等」とは誰のことを言うのか、警察官撮影による映像、警察官の目撃証人以外に犯罪立証に何を必要とするというのか、全く示されていないのである。
  また、被疑者の側にとっても防御の必要がある。真実確認のために弁護人のみだけではなく、被疑者本人も同席して関係者と面談し当時の状況を確認することも防御行為として必要なことがあり得る。これを一律に罪証隠滅行為と見なすような上記のごとき理由付けは、その点からも不当である。

5 被疑者に逃亡の恐れがあるとする誤り
(1) 被疑者が旗竿に関して行った行為は上記の通りである。被疑者は被疑事実に該当する行為は行っていないが、刑事手続を恐れるものではない。もしも上記被疑事実によって訴追されるのであれば、法廷で真実を争う意思である。
  したがって、そもそも刑事訴追を恐れて逃走することなどあり得ない。
(2) 被疑者は勾留状記載の住所地に現実に居住する者であり、今回のデモ行進等の活動に参加すべく休暇を取って札幌に来ていた者であった。同人は2つの大学に奉職して講師の職にあり、身元もしっかりしている者である。
  裁判官が、この被疑者について逃亡の恐れがあるとすることは、上記のように定まった住居を持ち、定職も持った一定の地位のある人間が、本件の刑事訴追を恐れて逃亡する可能性があるとすることである。これは全く常識を離れた判断というほかはない。
  本件は、札幌市が定める「集会及び集団行進及び集団示威に関する条例」違反及び道路交通法違反が問題とされている。しかし、その被疑事実と言えば、上記のとおり、旗竿を左右に大きく振り回した、ということであり、仮にそのような事実があったとしても、一体どのような刑罰が予想されるものなのだろうか。そのような刑罰怖さに逃走することなどあるとは思われない。それとも裁判官はこのような行為は懲役刑が相当であると考えているのだろうか。敢えて言えば、住居も家庭も地位もある人物がスピード違反の罰金刑を受けることが怖いあまり、刑事手続に出頭せず逃走する可能性があると言っているに等しいと思われる。
  更に言えば、このような被疑者に対して裁判所が安易に勾留を認めることで、同人の日常生活に大きな悪影響を与えることを考えて頂きたい。上記の通り被疑者は2つの大学の講師を務めている。そのうちの1つは予定していた休暇が切れ、月曜日からは残っていた有給休暇消化という対策をとらざるを得ず、もう1つは非常勤講師であり、同人の出勤日は毎週水曜日であるが、7月9日は休みを取っているものの、勾留期間中到来する16日には休みを取っておらず、欠勤しなければならない状況にある。
これは被疑者一人だけの問題ではなく、講義を開設している大学にとっても不利益であるし、講義を受けようとする受講者にとっても受講できないという大きな不利益である。そのような様々な影響や不利益を考慮してなお、被疑者を勾留しなければならないとするのであれば、比較すべきものの判断を誤ったとしか言いようがないのである。

6 以上の通りである。被疑者の勾留を認めた裁判官の判断は、被疑事実の有無、罪証隠滅の恐れ、逃亡の恐れのどの点を見ても誤りというほかない。被疑者が受けている身体拘束、外部との連絡遮断という人権侵害は甚大であり、速やかにその取消がなされるべきである。

以上

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※DJ一名の弁護人意見書です(被疑者名は伏せました)。
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