スマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスの企業利用が拡大している。スマートデバイスは小型軽量で操作性に優れ、素早く起動して、ネットワーク経由で社内システムやクラウドサービスに手軽に接続できる。利用者は外出先から必要な情報に簡単にアクセスできるようになった。ここ最近はBYODというキーワードが流行っているように、個人持ち端末の業務利用を認める企業も出てきている。

 一方で、常に持ち歩くスマートデバイスは紛失・盗難の危険にさらされやすい。時にはバッテリー切れや故障などで使えなくなることもある。また、管理者にとっては、利用者がセキュリティポリシーや業務ルールを守っているかどうかもチェックしなければならない。

 そこで、スマートデバイスの安心・安全な企業利用を手助けしてくれる管理ツールが急速に普及してきた。それがMDMである。MDMはスマートデバイスの状態を「見える化」してくれるので、管理者は端末個体の様子を直感的につかんだり、適切な処置を素早く施せたりできる(図1)。スマートフォン、タブレット端末を本格活用したい企業の管理者にとっては必携のツールといえる。そこで本連載では、6回にわたってMDMの仕組みと初歩的な使い方を解説する。

図1●MDMとは
スマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスを、安全にかつ安心して使うための運用管理ツールがMDMである。「遠隔操作」「情報収集」「設定配信」 といった目的で使う。 一般的なMDMはインターネット経由で指示を与え、情報をやり取りする。
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企業に広がるスマートデバイス

 iPhone/iPadやAndroid端末に代表されるスマートデバイスの出荷台数はうなぎ上りに増えている(図2)。携帯電話の国内販売台数に占めるスマートフォンの割合は2011年度に50%を超えそうだ。2009年度はわずかな台数しか出ていないタブレット端末も、2010年度に大きく伸びた。これは個人利用によるものと見られる。2011年度も高成長を予測しているが、これは企業利用の拡大を見込んでいる。

図2●急成長するスマートフォンとタブレット端末市場
いずれも国内の販売台数を示した。2011年度以降は予測値。
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 スマートデバイスの企業利用が拡大するのは、従来の携帯電話やノートパソコン、専用端末に比べて明らかなメリットがあるからだ(表1)。第一は、外出先から会社のメールやスケジュールなどを参照するリモートアクセスがやりやすいこと。一般にスマートフォンの画面は携帯電話よりも大きく、タブレット端末はノートパソコンよりも軽くてかさばらない。起動時間が短く、タッチ入力で直感的に操作できるところも魅力だ。

表1●なぜスマートフォンやタブレット端末が重宝されるのか
メリット 理由
メールやスケジュールの閲覧が簡単にできる 携帯電話に比べて画面が大きい。パソコンに比べて起動が速い
顧客への説明力が向上する パソコンなどに比べて、動画などを交えたわかりやすい説明が可能
営業担当者のスキル不足を補える 経験が浅くてもタブレット端末の指示通り説明すればよい
ペーパーレス化で個人情報の漏洩を防止する 書類と違って、セキュリティ対策がなされていれば、紛失・盗難に遭っても漏洩しない
電子化によりデータの入力コストを削減できる バックオフィスの作業が大幅に減る
市販の端末を使うことでハードウエアコストの削減になる 専用の端末を用いる場合に比べて半額以下になるケースもある

 特に営業担当者にとってのメリットはいくつも挙げられる。例えばプレゼンテーションアプリや動画による商品カタログを使うことで顧客への説明力が向上する。ノートパソコンでも同じことはできるが、タブレット端末なら顧客と一緒に画面を共有しながら話を進められるところが違う。契約時には従来なら紙に書いてもらっていた内容を、顧客が直接タブレット端末を触って入力することで、簡単にペーパーレス化できる。オフィスに戻ってから手作業で入力していた手間を省き、入力ミスの心配もなくなる。

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