ニュース | 2008/06/30
都立高校の職員会議では、校長が採決で教員の意見を聞くことだけではなく、教員が「手を挙げて意見を言うこと」さえもが禁止されているそうです。こうなるともう、まともに文章を書いてコメントをするのが徒労にしか思えません。あえて言うとしたら、大政翼賛体制の日本でも、ナチ支配のドイツでも、ここまでの統制はなかったのではないだろうかというくらいでしょうか。
どんな強権的なトップが運営する組織でも、通達で「手を挙げて意見を言うことを禁止」というのは聞いたことがありません。教員委員会が<教職員組合>の意見と違う形で学校を運営したいというのなら、正当な手続きに基づいて議論を交わし、説得し、その上で、場合によっては彼らの意見に反してでも、堂々と自分の主張する方針にしたがって運営すれば良いのです。自分の意見と合わない意見に対して、「手を挙げて意見を言うこと」を禁止するというのは、自らの主張が間違っていることを認めるということであり、まともな神経を持った人間が考えつくことではないでしょう。原因が、権力者としての奢りか、社会の仕組みに対する無知か、あるいは精神異常かは分かりませんが、いずれにせよ尋常ではないことには変わりありません。
「自分の意見と合わない意見は、表明することすら禁止する」。これは民主主義の否定であり、民主主義国家における国民教育の否定とも言えます。都立学校の校長のうち、この異常な方針に反対しているのはたった一人で、それ以外の校長はだんまりを決め込んでいるようですが、こうした日本国民の恥としか言えないような校長たちが、どういう面をして生徒に道徳を語るのか不思議でなりません。もちろん、理想と現実の間に挟まれて悩んでいる校長の気持ちも分からないことはありません。しかし、それは、凶悪犯罪を犯した犯罪者の気持ちも分からないことはないと言うのと大して変わらない意味での同情でしかないでしょう。
このままいったら冗談抜きで日本に未来はないかもしれない。そんな、暗澹たる気分になる記事でした。
東京都教育委員会が都立学校の職員会議で挙手や採決を禁じた通知に、都立三鷹高校の土肥信雄校長(59)が「現場の言論の自由が失われている」と撤回を求めている。都立高校の改革に現職校長が異議を申し立てるのは異例だが、都教委は「方針を変えるつもりはない」としている。
通知は06年の「学校経営の適正化について」。「職員会議を中心とした学校運営からの脱却」を掲げ、校長の意思決定に影響を与えないよう、職員会議での挙手や採決で教職員の意向をはかるのを「不適切であり、行わないこと」とした。翌年、通知が守れていないとして4校の校長を厳重注意した。
これに対し、土肥校長は「教員に何を言っても仕方がないという空気が広がり、職員会議でほとんど意見が出なくなった。生徒に日々接する教員の声が直接反映されないと、活性化につながらない」と昨年秋以降、校長連絡会などで通知の撤回を求めてきた。自校では職員会議で多くの教員に発言を求め、意思決定の参考にしているという。
土肥校長は東京大学卒。学生の頃は東大紛争の時代で、クラス討論や集会に参加。商社に就職後、「平等や平和主義を生徒と考える仕事を」と免許をとって高校の政治経済の教師になり、02年から校長に。「都教委は校長主導といいながら、校長を自らのロボットにしている。民主主義を教える教育の世界で言論の自由がないのは許されない」と語る。
都立校の校長の一人は「土肥校長の言う通りだが、教職員組合に決定権を握られると困る。都教委か組合かと言われれば、多くの校長は都教委につくしかない」と話す。
都立高校の保護者や教員、市民らでつくる「自由の風ネットワーク」は土肥校長の主張を5月に入って知り、「教育者としての信念を貫かれる校長先生に敬意を表する」と校長を支援し、通知に反対する署名活動を開始。1200人を超えたという。それを21日午後、都教委に渡し、通知の撤回を求める予定だ。(編集委員・氏岡真弓、大隈崇)
都立高校長、教委に反旗「職員会議で挙手禁止おかしい」(朝日新聞 2008年5月21日)
http://www.asahi.com/national/update/0521/TKY200805210162.html
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