FGO/シトナイがアイヌ伝説由来ではない問題について
「Fate /Ground Order」(FGO)というゲームがあります。
ご存じない方にすごく大雑把に説明しますと、古今東西の英雄たちが出てきて、聖杯をめぐって戦うゲームなのですが、
その中にシトナイというキャラクターが出てきます。設定上「アイヌ伝説に登場する女性英雄」となっています。
ところが、このキャラ、実はアイヌの伝説ではなくて、
その実は、大正時代の和人による「創作伝説」なんですね。
さらに元は、中国の説話を換骨奪胎(丸パクリ)したものである、ということがわかっています。
http://iboshihokuto.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-883fe1.html
(「シトナイ」の名は、幕末・明治期の小樽クッタルシの乙名の名前。実在した男性ですが、もちろん名前以外関係ありません)。
つまり、アイヌの神話ではない。
ただし、その伝説は、小樽の白龍神社の縁起と関連付けられており、アイヌの伝説由来ではないが、比較的新しい和人による「北海道の昔話」とはいえなくもない。
しかし、現状、多くの人がこのシトナイを「アイヌの神話・伝説に登場する女神・女傑」だと思っており、
すでに「虚像」が「アイヌの伝説」として流布しているので、けっこう看過すべきではないとも思います。
ヤオさん、という方が、そのあたりをずっと追求されています。
個人的には、FGOの公式の設定から「アイヌの伝説が出典である」という間違いを、外してもらえば、「アイヌ文化からインスパイアされたキャラ」ということで、まあ問題ないとは思うのですが…(まあ、どうなんでしょう)。
巨大なコンテンツであるだけに、多くの人が関わっており、関わる人の「教養」や「リテラシー」にも差があるでしょう。
また、少数民族文化の簒奪や、信仰の対象になっているもの、
あるいは歴史上の人物であるけれども子孫がまだいらっしゃる近代の人物などの、安易で無自覚な「キャラ化」が進んでいく現状は、ちょっと怖いことだと思います。
ただ、作り手側に、その感覚は、説明してもわからない人はいる。
「歴史上の人物だから、パブリックなものだからいいじゃないか」と。
そこは、その人のそれまで経験、見てきたものにもよる価値観なんだと思います。いいとか悪いとかいうことではなく、その人が何を重んじるかという。
ネットで拾った人物、信仰、文化の情報を読んで、「こいつ面白いじゃん」「キャラに使えるじゃん」と思っても、その文化を実際につないできた人々がいるわけですよね。
でもそのリアルがわからないと、それで面白く遊べてしまう。
たとえば、古事記や日本書紀にも載っていない、地方の小さな神社にある縁起書の看板にしかない神様の伝説を誰かがネットに上げる。
聞いたことのない面白い神様だといって、漫画やゲームのネタにする。
でも、その地域の素朴な信仰をつないできた人々がいて、今も毎日手を合わせているご老人がいたりするとして、その人はまさかその信仰の対象がキャラかなんかにされて、薄い本にされて萌えまくられているなんて知らない。
もしそんな状況があるとすれば、それはちょっとグロテスクじゃないでしょうか。
もちろん、アレキサンダー大王とか、アーサー王とか、メジャーな神様や英雄とかなら、いくらでもネタにしてもいいと思います。多少イジられようが、多くの人が元ネタがこういうものだというのが定まっており、小揺るぎもしないほど、文化として盤石な原典であれば。
でも、言い方が悪かもしれませんが「吹けば飛ぶような」、少数者の文化だと、巨大なマスメディアで虚像を流布されてしまうと、そもそも原典が知られていない存在の場合は、本当にその名前は虚像に乗っ取られてしまうわけですよね。(ネット上でいえば、「サジェスト汚染」というやつもそうです)。
たとえば、僕に寄せて考えると、「文豪なんちゃら」というゲームのキャラに「違星北斗」が登場し、ヒグマに乗ってやってきて
「待たせたね。僕の名前は違星北斗。
北の大地とともに育った自然の子さ!
カムイの怒りを知るがいい!
アナザー・スター・ノーザン・アタック!」
みたいなことをやられると、ちょっと待て、となるわけですよね。
さらに、それをユーザーの手で、ネットや同人誌で「あられもないこと」までさせられてしまう。(ユーザーの手による二次創作は、メーカーとしては関知しないかもしれないですが、そうなっちゃう現状です)。
もちろん、北斗のご遺族の方もいらっしゃるわけで、その人が見てどう思うかということも含めて。
で、シトナイ問題もそうなんです。
元々シトナイは幕末から明治の、小樽のクッタルシコタンの乙名(指導者)の名だったりするんですね。我々が知らないだけで、その子孫の方が現在もいらっしゃる可能性も高いわけです。
(ご本人が知っているかどうかは別として)。
ちなみにこの本物の「シトナイ」(小樽クッタルシの乙名)の方は、どうも違星北斗の祖父万次郎の「開拓史学校」の同級生のお兄さんらしい。また、シトナイ伝説を中国の説話から丸パクリした青木純二という人は、北斗の昔話もパクっているかも知れない疑惑があって違星北斗の研究者としても、いろいろ看過できない。
そのへんのこと、wikipedia に「シトナイ」ページを作るなどして、ちょっと整理してみたいと思います。
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シトナイがどのようにして、中国の古典をもとに創作(剽窃)され、広まっていったかをまとめました。
《時系列でたどるシトナイ伝説》→http://iboshihokuto.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-883fe1.html
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失礼します。あなたの記事がおらふとう人に盗用されているみたいですよ。
ttp://ivforafu.hatenablog.com/entry/2020/06/04/233528
投稿: | 2020年6月 5日 (金) 08時06分
これは全く問題ないです。
投稿: コタン管理人 | 2020年6月 5日 (金) 11時08分
始めまして、プリン二世という者です。
https://twitter.com/npcKvsV2Qx4HzN1
不躾な頼みで申し訳ないのですが、上記のおらふ氏が盗用云々に関してツイッターで非難してる方がいまして、
https://twitter.com/leonardoipua/status/1268595513688903680
読んで貰えると分かるのですが、本人が問題ないと言ってるだろと言っても聞く耳がなくて…ツイッターに書き込むなりここでコメントするなり管理人さんからこの方に直接一言言って貰えると助かります。
投稿: プリン二世 | 2020年6月 5日 (金) 18時38分
ツイッターにも書きましたが、こちらにも改めて。
この度は僕の無理なお願いに答えて頂いて誠にありがとうございました。
投稿: プリン二世 | 2020年6月 5日 (金) 22時19分
上記のわたなべEXという人物ですが、おらふ氏を剽窃で攻撃出来なくなったので今度はパクリだと攻撃し始めましたね。先程凍結されましたが。このわたなべEXというのは暴言吐きまくりで凍結されては別垢で復活、を繰り返す問題人物です。山本さんが返信したリプ欄だけでも垢を三つ作ってて全て凍結されてます。下手に関わると山本さんも攻撃対象になる危険性があるので、これ以上近づかない方が無難です。
投稿: | 2020年6月10日 (水) 12時32分
偽書ともされますが、ホツマツタエには、九頭竜・八岐大蛇が化身したとされて、瀬織津姫神に恨みを抱いて、小樽赤岩山で待ち構えている白竜が出てきたと思うのですが、もともと何らかの良くない竜の伝承も、小樽にはあったのではないかと思いました。
つまり、シトナイ伝説はもともとあった小樽の伝承を塗りつぶしているのではないかということです。
投稿: 天軸 | 2020年8月18日 (火) 08時26分
ホツマツタヱは置いても、
江戸時代、遅くとも明治に和人によって白蛇・白竜が祀られていたと思われるので、伝承自体はあったのは間違いないです。
大正時代、それに青木という人が「アイヌ少女の竜退治」という創作童話(元ネタは中国の説話)をくっつけたということですね。
投稿: 管理人 | 2020年8月18日 (火) 11時36分