70年代が生んだ最も重要な音楽スタイルであるファンクを実質的に作り上げたのがスライ・ストーンだと言っても過言はないでしょう。60年代には希望に満ちあふれた前向きな曲の数々でヒットを飛ばした Sly & The Family Stone ですが、71年にリリースした『There's A Riot Goin' On』は暗くダウナーなサウンドが特徴的。70年代初頭に多くの人々が沈み込んだ夢や希望の喪失感を反映した音です。こんな暗いアルバムなのですが、70年代において最も偉大で影響力のあるアルバムとして広く認められています。
普通の星条旗は青赤白で5つの角の星なのですが、このジャケットは黒赤白で9つの角の星(太陽を表している)なのです。
黒は色の欠如、白はすべての色の混合、そして赤はどんな人種にも流れる血の色を表しているんだ。星というのは探さなければならないし、数が多すぎる。でも太陽は常にそこにあってこっちを見ているものだろ。このアルバム・ジャケットは「すべての人種の人々」を表しているんだ。 by Sly Stone
エピック・レコードとの契約では少なくとも70年にはアルバムを渡さなければならないことになっていたものの、スライ・ストーンは何度も期限を遅らせていました。スライは自宅の屋根裏に設けたプライベート・スタジオにこもり、このアルバムの制作作業をほとんど一人で行います。他のメンバーの演奏が含まれた曲も収録されていますが、60年代のように全員が揃って演奏するのではなく、別々に録音したものをオーバー・ダビングするようになっていきます。
71年の11月についに2年ぶりの新作として『暴動』はリリースされます。第1弾シングルとして発売されたのが「Family Affair」。初期のヒット曲のサウンドとは大きくかけ離れた音に世間は驚きながらもナンバーワンヒットとなりました。(スライ・アンド・ファミリーストーンの最後のヒット曲でもあります)
スライ・ストーンの低い暗鬱なトーンのボーカルに、妹のローズ・ストーンのコーラスをかぶせた曲で時代の変わり目を生きる家族を描いたとてつもなく悲しい曲です。
この曲のリズムはドラムマシンによるもので、ドラムマシンを使った曲としてはかなり早い時期の部類に入ると言えるでしょう。スライはリズム・ボックスで非現実的なサウンドを作ろうと考えておりドラムマシンのボタンを押しながらテープを回し、また巻き戻してはオーバーダブを繰り返し、この独特なサウンドを作り上げました。
スライ・ストーンが『暴動』で使用したのは Maestro Rhythm King MRK-2 というマシン。 hollyの勝手に訳詞「家族の問題」
家族の問題、それは家族の問題 家族の問題、それは家族の問題 ある子は大きくなって 勉強が好きな人間になる 別の子は大きくなって 焼き殺してやりたくなる人間になる 母親はどちらの子も愛している それは血の問題 どちらの子も母親に優しい "血は泥よりも濃い" 家族の問題、それは家族の問題 家族の問題、それは家族の問題 結婚してから一年が経ち それでもお互いを監視し続けている 誰だって失敗したくないし 誰だって家を出て行きたくはない 心がそこにある限り、出て行くことはできない でも残ることもできない、君がどこかに行ってしまったから 泣くことなんてできない、家族がダメになるのを目の当たりにするだけから でも結局泣くしかない、全てがダメになってしまっているのだから 家族の問題、それは家族の問題 家族の問題、それは家族の問題 追記:『暴動』のA面最後には「There's a Riot Goin' On」というタイトル・トラックがクレジットされています。しかし演奏時間は 0:00と表記され(CDでは8秒間の無音が収録されています)、音は何も入っていません。
オレはいかなる暴動も起こってほしくない。 だから「There's a Riot Goin' On」には演奏時間がないのさ by Sly Stone
テーマ:ロック - ジャンル:音楽
2010/07/05(月) 19:00:00 |
ロック名曲ぶったぎり
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