書店で買うことの意義
このところ大いに気になっていることがある。それは、旭屋書店がぽつりぽつりと支店を閉めていることだ。旭屋書店といえば、わたしが人生で最もたくさん利用した本屋さんの一つだ。大阪・梅田の本店は、わたしにとって“ゆりかご”のような空間だった。ちなみに2009年9月22日時点のWikipedeiaをみると、閉鎖・閉店が続いている。ネットダイレクト旭屋書店(2007年12月、オンライン書店市場から撤退)、近鉄桃山店(2008年2月)、香港ジャスコ店(3月)、銀座店(4月)、水道橋店、イオン高松店、堺プラットプラット店、モレラ岐阜店(6月)、新金岡店(7月)、札幌店(2009年1月、北海道内からの撤退)、マリノアシティ福岡店(7月)。もしかして、アマゾン効果だろうか。だとすると、胸がチクチク痛む。(右の写真は、「ニューヨークの良心」と言われるユニオンスクエアのスタンドブックストアで撮影したもの。古びた店内。でもNYの宝のひとつ)
書店を語るのはしんどい。この方面は柴野さんの『書棚と平台』に詳しくわたしなどの出る幕ではないが、アマゾンのようなオンライン書店やジュンク堂のような超大型書店が優勢となりつつあることは事実。店を構える書店が消えてゆくのは忍びないが、かくいうわたし自身がオンライン書店で注文することが多くなっていて、書店員さんに質問するよりデータベース検索することに慣れ始めた。
振り返れば、わたしが高校生のころ、梅田の旭屋本店の書店員さんの中には、担当している棚の本はすべて読んでいるのではないかと思われるような人もちらほらいて、図書館司書や高校教師よりも頼りがいがあった。本好きだという連帯感とともに、この人にはかなわないなあという尊敬の念すら抱いくこともたびたび。
昔ながらの純喫茶や名画座が街から消えていくのは寂しいが、書店が消えていくのも負けず劣らずさびしい。コンビニのCMではないが、それらはみな「街のホットステーション」のはず。本なんて安ければ安いほどいいという態度をあらため、街の文化の担い手になる。その第一歩は、なるべく地元の本屋さんに足を運んで買うことから始めるしかない。それは何も本に限った話ではなく、すべての消費において言えるのだと思う。
旭屋書店などは大手で、ほんとうに守るべきは、土地々々の人たちが営む小さな店ではないかと叱られるかもしれない。旭屋書店が小さなパパママ書店を駆逐した例もあるだろう。だけど、銀座店や水道橋店が閉鎖されたことは、かなりショックだ。その街の顔だったのだから。文化的な施設が喪失したような気がする。
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コメント
実はこういうのをやっています。今後の展開をあれこれ考え中。既にお目にとまってしたらごめんなさい。便乗してしまいました。
http://flat.kahoku.co.jp/sub/book/
投稿: schmidt | 2009年9月26日 (土) 20時32分
>schmidtさま
存じていますよ(^^)
書店って、お金と本を交換するだけの場所じゃないですよね。
投稿: 畑仲哲雄 | 2009年9月27日 (日) 00時35分
久々に旭屋書店の名前を見たので懐かしくなりました
私も2007年に閉店した近鉄プラッツ京都店でバイトとして勤務していました
桃山店もネットダイレクトも撤退ですか・・・なんだか寂しい気分です
投稿: HUNTER | 2009年9月29日 (火) 00時44分
>HUNTERさん
たしかに、寂しいです。
ただ、まだまだ巻き返しができると思います。期待しましょう!
投稿: 畑仲哲雄 | 2009年9月29日 (火) 07時41分