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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NASHVILLE PUSSY『From Hell To Texas : Live And Loud In Europe』

NASHVILLE PUSSY『From Hell To Texas


米国南部ジョージア州アトランタ拠点のハード・ロックンロール・バンドの2枚組CD。
わりと最近発売されたものと思われる。
2009年リリースの5作目『From Hell To Texas』の“ツアー・エディション”で、
スペイン、チェコ、スロヴァキア、フランス、ドイツ、オランダで録音した
16曲のライヴ・テイクを収めたCDがプラスされている。


過小評価に対するいらだちがぼくに文章を書かせる。
NASHVILLE PUSSYはその筆頭にある。
音楽に限らずみんながみんな不気味なほど一つの話題に集中しがちな日本では特にひどすぎる。
なんでこんな不当な扱いをされなきゃならんのだ。
キワモノみたいにイメージもあるが、
純情なほどまっすぐ、
エクスタシーの如く深い。
キャッチーなのに濃い。
ひっそりと行なわれた2度の来日公演も感動的で、
私的生涯ベスト・ライヴの最上位から動かない。

いわゆる政治的/社会的なバンドではないが、
そういったものに対するスタンスや問題意識の打ち出し方もひっくるめてぼくをインスパイアする。
“おかげさまで”“おたがいさま”“もちつもたれつ”みたいな調子の
ある種日本の伝統に近い関係性で対象を取り込み、
チャーミングなお下劣ユーモアで包み込みながらいつのまにか“石頭”をも虜にする。

いくらメンバーが変わろうが、
むさい男性メンバー2人の肉を派手な女性メンバー2人の肉がはさむステージ上での立ち位置も、
NASHVILLE PUSSY流のナチュラルなフェミニズムと信じてやまない。
そう“sex”や“gender”の取り込み方も現在進行形のロックンロールとして理想的なのだ。


約38分12曲入りの本編は、
後期RAMONESの片腕になったダニエル・レイのプロデュース。
今回リーダーのブレイン・カートライト(vo、g)が再ミックスを施していて、
より音がヴィヴィッドに響いてくる。
セカンドまでのベーシストのコリー・パークスが映画『極悪レミー』に出演するなど
交流が深いMOTORHEAD(本作でレミーが“キリスト”になり切った声でゲスト参加)と、
AC/DCからの影響をブルースとパンク・ロックを増して濃縮したようなサウンドを深化させている。
けどぼくの中ではMOTORHEADやAC/DCに匹敵するし、
気分によっては彼らを凌駕している。
精力モリモリスタミナ満点の最高のロックンロール・アルバムだ。


約48分のボーナスCDは数か所のライヴをノンストップでまとめた作りだが、
違和感無しの流れになっている。
前ベーシスト時代の映像ながらNASHVILLE PUSSYの王道ステージが楽しめる
『Keep On F*cking Live In Paris』(2003年)や、
現ベーシストでの『Live in Hollywood』(2008年)という、
ライヴDVDを見ていただいた方が手っ取り早いのは事実ではある。
だがここには選りすぐりのパフォーマンスが凝縮されている。
音の仕上がりもロックンロールの奥義を極める素晴らしさ。
オープニングにふさわしい曲「Say Something Nasty」で始め、
終盤には初期の代表曲「Go Motherfucker Go」も披露し、
タイトルだけで涙やらナニやら漏れる曲の連発で何度でも何度でも昇天する。
問答無用に最高。


やっぱり
死ぬほど馬鹿馬鹿しくなったら
死ぬほど馬鹿馬鹿しいロックンロールと
死ぬほど馬鹿馬鹿しくファックすればいい。
されば解き放たれる。
未来に向かって突き抜けられる。
言うまでもなくNASHVILLE PUSSYは本物だ。
歌詞も馬鹿馬鹿しく見えてディープ。
真理を突いている。
くだらん能書きも言い訳も文句も垂れない。

NASHVILLE PUSSYは確信に満ちた響きと歌にすべてを託す。
パンク/ハードコア以降のロックンロールの“真言”にすら聞こえる。
だからこそ“In Lust We Trust”。
NASHVILLE PUSSYが最近Tシャツなどで表しているフレーズで、
USAの国家としてのモットーである“In God We Trust”になぞらえれば、
“(神ではなく)欲望を信じる”。
だからこそぼくはNASHVILLE PUSSYをtrust(信頼)する。


★NASHVILLE PUSSY『From Hell To Texas : Live And Loud In Europe』(SPV SPV 306090 2CD)2CD
三面デジパック仕様。
六つ折りポスター状だった以前のブラケースCDのものとは違う
12ページの新デザインのブックレット封入。


コメント

毎回、毎回ジャケットだけでも買いのバンドですよね。


リスペクトしてます!!

いまだに1st聴いてます。ダニエルレイ、プロデュースのラモーンズの音は好きなんでかなり気になってます。個人的にPLASMATICS並びにWENDYも過小評価だと思っています。WENDYが亡くなった時、DOLLで行川さんが書かれてましたけど、あの文章は忘れられません。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
ジャケット買い!も間違いないバンドですね。まさにリスペクト!
>かくさん
PLASMATICSとウェンディもまさに過小評価ですね。エクストリームでお馬鹿にも見えますが、ピシっ!としていて声もしっかり出している人ですし。
ウェンディが亡くなったときには、ミュージックライフでちょこっと書きました。末期のDOLLの連載「VIVA HATE」でも書きましたね。どちらでも記憶していただけてうれしいです。

いまさらですが

NASHVILLE PUSSYでぐぐっていてたどり着きました。
日本ではほんとうに過小評価されているみたいですね
日本のサイトでほとんど見つけられませんでした。

バンド名で損をしているような気がしますが
ロックの本質を体現しているすごいバンドだとおもいます。

メンバーチェンジはありますが、出音の太さはずーーと変わらずで、本当にいいバンドだとおもいます

Re: いまさらですが

みやさん、書き込みありがとうございます。
すさまじい過小評価ですね。
いかにロックンロール~ロック~パンク~ハードコアが頭デッカチで捉えられているかを象徴しています。
まさに出音の太さの不変性にもよく表れていますね。それこそがロックで真実なのです。
今のところの僕の生涯ベスト・ライヴはNASHVILLE PUSSYの2度目の来日時の東京・渋谷公演なのです。
バンド名もパフォーマンスもキワ物スレスレの部分を天然で狙っていてロックンロールの本質を突いています。ある意味ギターウルフにも通じますね。
一般売りしてないCDを直接メイル・オーダーしたことがあるのですが、
ボロボロのポストカードも同封してくれてNASHVILLE PUSSYらしくて感激しました。
変わらずツアーも続けていて、たのもしいです。次作も期待したいですね。

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米国南部ジョージア州アトランタ拠点のハード・ロックンロール・バンドの2枚組CD。わりと最近発売されたものと思われる。2009年リリースの5作目『From Hell To Texas』の“ツアー・エディション”で、スペイン、チェコ、スロヴァキア、フランス、ドイツ、オランダで録音?...

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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