イカダ漂流ゲーム『RAFT』と全く同じ状況に追い込まれた人が2018年に存在していた件【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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イカダ漂流ゲーム『RAFT』と全く同じ状況に追い込まれた人が2018年に存在していた件【年末年始特集】

現実の漂流は、やはり『RAFT』のようなのんびり海洋ライフ……とはいかないようです。

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イカダ漂流ゲーム『RAFT』と全く同じ状況に追い込まれた人が2018年に存在していた件【年末年始特集】
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大海原を漂流するイカダで生活し、あらゆるものを集めて家を建てることができるゲーム……といえば、多くの人が『RAFT』を連想するでしょう。

どこまでも続く海を漂いながら、それでも食料を調達して生き延びる――そんな内容の冒険小説は、古くから存在しました。そこから無人島へたどり着くか、それともそのまま潮の流れに身を任せるか。このシチュエーションは、過酷でありながらも「どのようにサバイバルするのか?」という次の展開が明確で、それ故に「漂流もの」は「サバイバル作品の定番ジャンル」としての地位を確立しています。

しかし、現実では『RAFT』のような漂流を経験した人は世界中どこ探しても存在しません。ましてや、動力船やGPSが発達した現代、そのような冒険は本かゲームの中の話……と言いたいところですが、いるんですそういう人が。『RAFT』も顔負けの「小屋付きイカダで長期間漂流」したという人が、2018年に実在していました!

小屋付きのイカダ「ロンポン」

インドネシアは、非常に広大な島嶼国家です。

サバンからメラウケまで、いくつもの文化圏を抱えいくつもの言語、いくつもの宗教、いくつもの民族が存在します。今回の記事の主人公アルディ・ノフェル・アディランさん(当時18歳)は、北スラウェシ州マナドの漁師。ロンポン(Rompong)と呼ばれる小屋付きの漁業用イカダの中で、半年の契約期限付きの仕事をしていました。

ロンポン漁法は北スラウェシ独自のもので、海中に向けて照明を照らしたり撒き餌をして、魚が集まってきたところに釣りをするという方法で用いられます。管理人がロンポンの上に滞在できるだけの設備があるのが大きな特徴で、水や食料は週1回ボートで輸送されるという仕組みです。

この記事を読んでいる皆さん、一度Googleで「Rompong」と検索してみてください。「まさに『RAFT』だっ!」という見た目のイカダが出てきます。

アルディさんの乗ったロンポンは、何と係留ロープが切れてしまい、そのまま沖に流されました。ロンポン自体に動力は一切ないため、アルディさんは港に戻ることはできません。

島嶼国家インドネシアでは、漁船の動力が故障した等の理由で遭難する事故が時折発生します。しかし、アルディさんは計49日、何とスラウェシ島から約2,000km離れたグアム島沖まで漂流しました。そこでパナマ船籍の船に救助されています。

日本へ到達した漂流者

アルディさんのこの冒険は、日本の全国紙でも報道されました。

というのも、アルディさんを救助したパナマ船籍の船はその後、山口の徳山港に向かったからです。現地メディアLiputan6によると、アルディさんは日本の海上保安庁の健康診断を受けたあとに在大阪インドネシア総領事館に保護され、無事飛行機で日本を出国したとのこと。ありがとう海上保安庁!

それにしても、アルディさんの体力と精神力には驚愕せざるを得ません。食事は魚を獲ることで何とかつないでいたそうですが、アルディさんのいるところは怒涛の太平洋。精神的な負担が大きく、錯乱寸前になったとか。そんなアルディさんを支えていたのは、ロンポンに持ち込んでいた聖書だったそうです(マナドはプロテスタント信徒の多い地域でもあります)。

アルディさんの強運

さて、『RAFT』と言えば何といっても鮫。海中に飛び込むと、待ってましたとばかりにすぐに現れます。早くイカダに戻らないと、そのまま美味しく食べられてしまいます。実はアルディさんも鮫の脅威と戦っていました。何と、ロンポンの周りを鮫が取り囲んでいたということがあったそうです。

また、アルディさんの漂流は2018年の7月から8月にかけてのことという点も考慮すべき。この時期グアム近海では台風が頻繁に発生します。実際、アルディさんが救助された10日後にグアムの北を台風22号(マンクット)が東から西へ通過しています。最低気圧905hPa、フィリピンや香港、マカオ、中国本土に多大な被害をもたらしたスーパー台風であり、ロンポンなどとても太刀打ちできなかったはずです(インドネシアに台風は殆ど来ません)。

そのような数々の幸運に恵まれたアルディさんは、19歳の誕生日を家族と一緒に過ごすことができました。

年末年始はイカダ生活をしよう!

現実の漂流は、やはり『RAFT』のようなのんびり海洋ライフ……とはいかないようです。

大海原を生き延びるには、体力と精神力と幸運が同時に揃っていなければならず、悠々自適に生活する余裕など生まれません。けれどまぁ、都会の喧騒を離れてイカダの上で生活したい! というのは現代人の秘かな欲望でもあります。年末年始は、ややこしいことなど一切忘れて海上でのイカダ暮らしに打ち込んでみるのもアリかもしれませんね!


【2024年~2025年】Game*Spark年末年始特集はこちら!
ライター:澤田 真一,編集:TAKAJO

ライター/ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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