2024年に早期アクセスから正式リリースに移行したドイツ軍潜水艦シム『UBOAT』。第二次世界大戦のドイツの潜水艦(Uボート)のメカニズムや操作機構が非常に細かい部分まで再現されているゲームとして、日本でも人気を呼んでいます。
早期アクセス版と正式配信版の大きな違いとして挙げられるのが、「Uボートの種類」です。そもそも「Uボート」という呼び方は普通名詞に近く、実際はその中に様々な種類が存在しました。早期アクセス版では、様々な映画やドラマでも取り上げられているⅦ型のみが用意されていましたが、正式配信版ではより小型のⅡ型が選択できるようになっています。
その上で、近々新しいDLC配信が予定され、なんとⅦ型より大型のⅨ型が選べるようになるとか。これは楽しみだ!!
【2024年~2025年】Game*Spark年末年始特集はこちら!日本を目指したUボート
2018年8月6日、NHKは“海底に眠るUボート終戦直後の「禁断の出撃」”という記事を配信しています。
京都府舞鶴市沖の海底で同年6月に確認された潜水艦について報道した記事ですが、この潜水艦は呂500、それ以前はU-511と呼ばれていたものです。艦首はⅨC型、ドイツ生まれのUボートです。ドイツから大西洋、アフリカ最南部の喜望峰を回ってインド洋に出て日本の呉港に到達しました。しかも、この間に2隻の米国籍の貨物船を沈めています。
このような具合に、Ⅸ型は何隻か日本を目指して航海しています。旅の途中で連合国軍の攻撃に遭い撃沈された艦もある一方、日本軍の協力を得ながら遥かオーストラリア、ニュージーランド沿岸で通商破壊戦を実施した艦も。
今回はハインリヒ・ティム艦長のU-862について解説したいと思います。
最新兵器の欠点
ドイツから喜望峰を回ってアジアを目指したU-862は、Ⅸ型の中でも大きな船体と長い航行距離を持つIXD/2型。ドイツのキール港から兵器の図面、日本に提供する装備品、水銀等の物資を積んで出港しました。
U-862は単に日本軍支配下の地域を目指すのではなく、その途中に遭遇した連合国軍の船舶を沈める役目も与えられています。実際にこの艦は、ドイツから日本が占領するペナンに到着するまで、複数隻の船舶を撃沈しています。
特に注目すべきは、1944年7月25日に南大西洋(アフリカ大陸と南米大陸のちょうど中間辺りです)で遭遇した米貨物船ロビン・グッドフェローの撃沈劇。この船を沈めるのに、ティムはG7es魚雷を使用しています。これはゲーム『UBOAT』にも実装されている、当時最先端の追尾魚雷。なんと、魚雷から敵艦に向かっていくという代物です。
艦内にコンピューターすらなかった時代に、ドイツ軍はホーミング兵器を開発していたのです。これを使えば百発百中……と言いたいところですが、実は大きな欠点がありました。G7es魚雷は単純に「スクリュー音を探知してそれを追いかける」という仕組みのため、必ずしも狙った敵艦に向かうとは限らなかったのです。そして、ティムがロビン・グッドフェローに向けて放ったG7es魚雷は、なんとU-862のスクリューを追尾してしまいました。
飛行艇も撃墜!
気をつけて扱わないと、自分の艦に向かってしまうG7es音響追尾魚雷。実はこれも、ゲームの中でしっかり再現されています。
自爆を回避する対処法は2つ。発射前後に機関を停止させるか、急潜航するか。ティムの場合は機関を停止させることでG7es魚雷の探知を逃れ、生き延びました。その後、通常魚雷でロビン・グッドフェローを撃沈するに至っています。
そこからさらにスコアを重ねたU-862ですが、船舶だけでなくPBYカタリナ飛行艇の撃墜も記録しています。潜水艦にとって、飛行機は極めて分が悪い相手。爆弾や爆雷を上空から落とされたら、ひとたまりもありません。ところが、U-862は飛行機の襲撃を見事に退けているのです。
ちなみに、艦長のティムはUボートの乗組員になる前は掃海艇の艦長を歴任し、1940年にイギリス軍の潜水艦を撃沈しています。彼は「水上艦で潜水艦を沈めたことのある潜水艦の艦長」という、極めて特異な経歴の持ち主でもありました。
U-862から「伊502」に転身
U-862は、ドイツの降伏と共に日本海軍に接収されました。そのため「伊502」という日本海軍所属艦艇としての名前も持っています。ただし、ドイツ降伏以後はシンガポールに留め置かれ、そのままさらなる戦果を挙げないまま終戦を迎えました。
数奇な運命をたどったU-862、このような大冒険がアップデート後の『UBOAT』で体験できるかもしれません。
現状でも、このゲームには「大西洋にやって来た日本軍の潜水艦と接触する」というミッションが実装されています。もちろん、日本の潜水艦はプレイアブルではありませんが、それでも伊号潜水艦の登場は日本人にとっては胸高鳴る瞬間です。同盟国がこうしてヨーロッパ戦線に潜水艦を送っているのだから、今度はドイツ軍が日本にUボートを……という流れになるのは必然と言えます。
2025年も進化し続ける『UBOAT』、熱い心を持つ潜水艦ファンなら買って損はない一本です!
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