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爆弾を抱く女怪盗

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#1820「爆弾を抱く女怪盗」
好き好んで爆弾を抱いてゐる訳ではない

製作年:1960年
製作国:日本
製作会社:新東宝
監督:土居通芳
出演:高倉みゆき/菅原文太吉田輝雄/三原葉子/三条魔子/沼田曜一
公開:1960年2月7日


 更にもう一つ高倉みゆき。1960年の「爆弾を抱く女怪盗」で、これまた土居通芳監督作品。原案が室町加納と云ふ人。知らない人が多くて困ります。名前からして京都の人でせうか。脚本は土居通芳と大貫正義 、音楽は渡辺宙明となつとります。白黒シネマスコープ、79分。

 夜行列車でバッグを奪はうとした二人組を追ふ鉄道公安官・朝倉(菅原文太)。しかし謎の女(高倉みゆき)が遮り、逃がしてしまふがバッグは戻りました。被害者は東洋貿易の専務・吉沢(岬洋二)。この不審な女を取り調べやうとする朝倉ですが、麻薬を嗅がされ眠らされ、逃げられました。朝倉は此の責任を取つて辞職願を出します。

 サテその夜、東洋貿易が例の女を首領とする一団に襲撃されます。社長の立花(沼田曜一)は、警察には五~六千万相当のダイヤが盗まれたと供述しました。この東洋貿易、密輸の疑ひがあり朝倉が予め潜んでゐました。鉄道公安官の仕事ぢやないよね。それとも単なる好奇心?

 で、朝倉は発見されてしまひ協力か死を選ぶやうに脅され、結局仲間に入る事になりました。この女、実は元北支開発副総裁の三ノ宮伯爵の令嬢・三ノ宮雅子で、この一連の行動は、父を殺し三ノ宮家の財産を横領した元執事の立花に復讐するためのものでした......

 ツウホウさん得意の活劇で、テムポ好くアクションの連打が渡辺宙明のサウンドに乗つてゐます。勿論大蔵新東宝なので、脚本の完成度とかは期待できませんが、一応ミステリの側面でも愉しませてくれます。一度土居通芳監督に、もつと練つた脚本で、全体にカネをかけた作品でアクションものを撮つて欲しかつた喃。

 主演高倉みゆきは、「貞操の嵐」での小母さん臭さに比べればかなり弾けてゐます。問題は沼田曜一への復讐方法で、かくも大人数を率ゐて仰々しく行動するのは、容易に綻びを予想させます。もつと頭を使つた復讐法がありさうな気がします。
 後半は逃亡する沼田をヘリコプタアで追ふなど、アクチブに対応しますが、逆転され船にダイナマイトと共に括り付けられます。タイトルは「爆弾を抱く女怪盗」で勇ましい感じですが、実態は心ならずも爆弾を抱かせられてゐた訳です。

 準主演格に菅原文太。結局この人は公安官を辞めたのかどうなのか不明です。最後は巡視船に乗り、高倉の危機を救ふので商売替したのでせうか。菅原と同じくハンサムタワーズの吉田輝雄も出演してゐますが、影は薄い。恋人の三条魔子はシークレットフェイスとしてクレジットされてゐます。「地下帝国の死刑室」でもさうでしたが、「三条魔子」の名を出すなら既にシークレットではないのでは。高倉みゆきと共にダイナマイトを抱かされます。後の三条江梨子。

 ワルの親玉は沼田曜一。この人、極悪であればあるほど、何故か笑つてしまふのです。情婦三原葉子はせくしいショットはあるものの、全体では控へ目な出演。あと、普段は善人役が多い御木本伸介が、組織を裏切り殺される役を演じるのが印象的。

 普通の映画ファンなら洟も引掛けないチープさですが、何故か大蔵新東宝にはファンが多く、このチープさも含めたB級感が人気なのださうです。確かに泡沫扱ひされても好いのに、DVD化され、名画座で上演され、CSで放映されるのだから不思議と申せませう。斯く申すわたくしも、新東宝と聞くとピクリと反応する一人なのでした。何故だらう。

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