教科書にはテイラー・スウィフトが
学費が無料であるオランダの小学校は、基本的に実費で教科書を購入することはない。すべて学校から無料で支給されるのだ。その代り、宿題でもでない限り、教科書を家に持ち帰ってくることもない。そのため、筆者はオランダの公立小学校に通う自分の娘が、学校でどのような教科書を使用しているのか知る機会はほとんどなかった。
けれど初等教育6年生(9歳頃の子供が所属する学年)になって数週間たったある日、娘が「来週英語のテストがあるから、家で自習しなくちゃいけないんだって」と英語の教科書(兼問題集)を持ち帰ってきたのだ。
娘に頼んで教科書を見せてもらった時、筆者はあまりの驚きにわが目を疑った。何故なら、その教科書の表紙にいたのは、アメリカのポップシンガーのテイラー・スウィフトだったからだ。
実はオランダは、「非英語圏における英語力世界一」と言われ、その高い英語力に定評のある国。英語教育に関し50年以上の歴史を持つ国際組織「EF」が非英語圏で毎年実施している英語テストでは、2016年・2017年に2年連続でトップを飾った。同様に英語力が高い北欧諸国に1位を譲る年もあるが、2011年以降の記録では3位より下になったことがないという。
オランダの保護者たちの英語教育に関する関心も高く、就学前の子供がどの小学校を選ぶか判断するための見学会では、「どのような英語教育が行われているのか」と保護者から質問が出るところを何度か目撃したことがある。
そんなオランダの小学校では、一体どのような英語教育が行われているのだろう。
世界一の英語力を誇りながら、オランダの小学校の英語の授業は「厳しい勉強」とは程遠いものだった。そんな奥深いこの国の英語教育の一端をご紹介したいと思う。
「英語のできない先生」が教える日本
ここで一度、日本の小学校における英語教育の歴史を振り返ってみたい。まず2008年度に、小学5年生および6年生を対象に年35時間の「外国語活動」として小学校の英語教育はスタートした。そして後の2011年度に「小学5年生から必修化」された。この時点では、まだ成績を評価されることはなかった。
けれど文部科学省は2017年3月31日に新学習指導要領を公示し、「小学3年生からの必修化」「小学5年生からの教科化」を明文化したのだ。それによると、2020年度に完全実施する流れになっている。
移行期間を考えると、学校によっては2018年度から段階的に実施されるのではという声も上がっている。
文部科学省の2015年の調査によると、日本の公立小学校の61,7%は、小学校5、6年生に対してALT(外国語指導助手)と呼ばれるネイティブスピーカーの英語教師による英語の授業を導入している。
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とはいえ、授業の内容は英語になじませる程度のもの。英語圏に1年滞在して帰った中学年の生徒が「ローマ字読みからやる意味がわからない」「単語しかやらないから物足りない」とこぼしてるのを聞いたことがあるが、それは致し方ないだろう。
高学年でも簡単な英語劇などをやるような授業もあるというが、基本はあくまでテキストがある真面目な授業だ。それは日本の教育全般に言えることだろう。
一番の問題は、ネイティブスピーカーでない教師が英語の授業に関わる場合だ。