西田厚聰元会長・東芝のドンの告白「戦犯と呼ばれて」

「僕は悪者。だが、メディアも悪い」

かつてはカリスマ経営者。いまは会社を経営危機に陥れた戦犯。表に裏に東芝を知り尽くしたこの男が本誌に語った、会計事件について、原発問題について、半導体売却について、東芝について……。

みんな、いい加減だ

「客観的に見ると、訴訟問題が終わっていない以上、僕は悪者として(皆さんの記憶に)残っちゃっているんです。それが何を言ったってね。犬の遠吠えに過ぎないんです」

東芝で社長、会長を歴任した西田厚聰氏を自宅にたずねると、インターフォン越しに語り出した――。

東芝で不正会計問題が発覚した2015年以降、戦犯と名指しされた西田氏は表舞台から姿を消した。東芝でドンと呼ばれ、一時は経団連会長候補と目されたこの男は、あれから何を想い、どんなことを考えているのか。

その胸の内を聞くために本誌はここ数年西田氏の自宅をたずねてきたが、その度に「話すことはない」と門前払いが続いた。

不正会計問題を調査した東芝の第三者委員会の報告書は、西田氏が東芝に根付く「チャレンジ」と称する損益改善活動を、現場に対して過剰に求めていたと断定。

東芝はそうした不正会計処理で会社に損害を与えたとして西田氏ら旧経営陣に賠償を求めて提訴したが、西田氏は会社側と争うことを選んだ。

 

東芝ではその後も米原発子会社ウェスチングハウス(WH)をめぐる巨額損失問題が勃発し、今秋には稼ぎ頭の半導体子会社の売却に追い込まれた。その原発と半導体は西田氏が東芝社長時代に2本柱として育てた事業だけに、忸怩たる気持ちもあるのではないか。

心境の一端でも聞ければとこの10月末に再び自宅をたずねると、西田氏は冒頭のように語り出し、少しずつ現在の心境を明かしていった。

不正会計問題の戦犯とされていることについて、西田氏が'06年に約6400億円でWHを巨額買収したことが批判されていることについて、東芝が稼ぎ頭の半導体事業を売ることについて、みずからがトップとして行ってきた経営について……。

西田氏はまず、不正会計問題の戦犯とされていることについての率直な想いを吐露した。

(以下、西田氏の話)

いやもうね、いま訴訟をやっている間は、僕が何を言ったって悪者扱いですから。この決着がつかないと信用されないんですよ、本当に残念ですがね。みなさんがどう書こうが、読む側は悪者のイメージで読むわけですよ。

僕はあなた方(メディア)にも責任があったと思います。第三者委員会のレポート(報告書)が出た後の報道というのは、あのレポートが正しいという前提。それを金科玉条のようにして、絶対に正しいとして、どんどん報道していったからね。

当事者には取材しないのに、第三者委員会の人のところにはずいぶんとインタビューに行ったジャーナリストもいるみたいですよ。みなさん、いい加減なことをするよね。

馬鹿げたことを言う人がいる

あのレポートはひどく間違っているんです。強引なシナリオに引きずり込んだ話でしてね。僕が「チャレンジ」をしたといったって、「ずいぶんマイルドだった」と会社の弁護士さんも言っていましたよ。「社員に聞いたら、そうだった」と。

「西田さんとチャレンジすると、一緒になってそのチャレンジをどうやって達成するかということを考えてくれたという風に言う人もいました」とも言っていましたけどね。事実、僕もそのつもりでやってきたんです。

(第三者委員会は2ヵ月で報告書を出したが)たった2ヵ月でできるわけがないでしょう。私が知っている(東京地検)特捜部にいた弁護士からも、「あれはひどかったみたいですね」という話を聞いていますから。

そういう風に作られたレポートを皆さんがまったく正しいとしている。会社もそれを正しいと言っているわけです。

あのような調査委員会は罰則規定がないので、勝手なことを書けてしまう。それによって罰を受けることはないんです。そして一度レポートが出されると、我々が何を言おうが言った通りには理解されない。

最近会社側から出された内部管理体制に関する報告書にしても、前提が第三者委員会のレポートが正しいということで書いている。そうである限り、僕は悪者になってしまう。だから何を言ってもねえ。

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