5月3日の憲法記念日に、安倍首相が2020年の改憲をめざすと、日程を決めて宣言したことから大きな話題になっている。
ところが、その具体的な内容は、9条の1、2項はそのまま残し、新たに付け加える3項で自衛隊の存在を明文化するものだった。これは、自民党がこれまで実現を目指してきた9条改正、ひいては「自主憲法」という全面的な改正とはまったく異なるものである。むしろ連立を組む公明党が主張している加憲論に限りなく近いものだ。
はたしてこれで、首相がスローガンとして掲げる「戦後レジームの脱却」が実現できるとは思えない。実は、首相が公明党に歩み寄る姿勢を見せたのは、東京都議会選挙を意識してのことだろうと思われるのである。
東京から始まる自公連立のほころび
その東京都議会選挙が7月に迫ってきている。
世間で、もっぱら注目されているのは、小池知事を支持する新たな政党「都民ファースト」がどの程度の議席を確保するかである。あわせて、小池知事とは対立関係にある自民党の都議会議員団がどれだけの議席を守れるかにも注目が集まっている。
その陰で、さほど注目を集めていないのが、公明党の動向である。公明党は都議会において長く自民党と連立を組んできた。その歴史は、国政における連立よりもはるかに長いのである。
ところが、議員報酬の削減問題でもめ、公明党の側から連立を解消してしまったのである。
これによって、次の都議会選挙において、公明党が自民党と選挙協力をすることはなくなった。公明党は、小池知事や都民ファーストとの連携を深め、選挙に臨もうとしている。
公明党と自民党とが連立を組んでいる場合には、密接な選挙協力が行われていた。とくに、公明党の支持母体である宗教団体・創価学会の会員たちは、公明党の候補者を勝たせるための選挙活動に邁進するだけではなく、選挙協力が行われている選挙区で、自民党の候補者も積極的に支持してきた。つまり、創価学会は、自民党にとっても相当に有力な支持母体となってきたのである。
それが、次の都議会選挙では行われない。創価学会の会員が、自民党の候補者に投票することはほとんどないだろうし、組織的に自民党の選挙活動を応援することなどまったくないだろう。
はたして、そのような状況で、自民党は多くの議席を獲得できるのだろうか。実際の選挙戦になれば、両者は血みどろの戦いをくり広げることになるに違いない。
そうなれば、必ずや国政にも影響する。今のところ、公明党も自民党も、都政と国政とは別だというスタンスをとっている。だが、国会議員を交えていったん激しい選挙戦を行ってしまえば、少なくとも今までのようには協力できないだろう。いったいどうなるのだろうか。