2017.04.21
# 格闘技

誰も語らなかった、新生UWF消滅前夜と「その後」の真実

証言・「新生・1988年のUWF」後篇

ノンフィクションライター・柳澤健氏の『1984年のUWF』発売を機に、いま、何度目かのUWFブームが起こっている。そんな中、株式会社UWFの営業部員で、その後外国人ブッカーとして、PRIDE、K-1などの格闘技ブームに貢献した「ブッカーK」こと川﨑浩市氏に話を聞いた。

前編では、川﨑氏が体感した熱狂について、そして「チケット持ってますか」事件の真相などが赤裸々に明かされたが、今回は、ついに川﨑氏の口から「解散後のU」の衝撃的な真実が語られる――。(前篇はこちらから

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前田が社長に不信感を抱いた理由

(新生UWFでは、いくつもの移籍話が浮上した。川﨑氏が「会社に来たのを目撃した」という有名レスラーとは…?)

――その、事務所に現れた男とは、誰だったんですか!?

川﨑 佐々木健介さんです。

──え!? 噂では聞いたことがありましたけど、やっぱり移籍の話はあったんですか!

川﨑 健介さんも人気が出る前ですから、僕は顔も名前も知りませんでしたが、おそらく藤原さんからの話だったのではないかと思います。ある日の朝出社すると、始業時間の前に神社長との面談に来ていた健介選手と、会社の階段ですれ違ったんです。結局健介さんは移籍しませんでしたが、話だけは聞きに来たってことでしょう。

──そんなUWFですけど、90年に入ると例の「内紛騒動」(※神社長とエースの前田日明による感情的対立を、週刊プロレスをはじめとするプロレスマスコミが一斉に報じたことから発覚。前田日明は「経理の不透明さ」及び「神社長、鈴木専務による公金横領」を主張するなど、会社を二分する騒動に発展した)が表面化しますね。当然ながら川﨑さんはその渦中に置かれたわけですが、どのように見ていましたか?

川﨑 今、選手がこの話をすると、それぞれの立場があるので辻褄が合わなかったりもするでしょう。記憶の問題もあります。はっきりさせておきたいのは、末端の営業部員だった僕はどっち派ということはありませんでした。その点公平な立場で発言はできます。

──気になるのは、前田さんがたびたび主張されていたように「神社長は会社の金を横領していたのかどうか」です。

川﨑 それについてですが、まず神さんと鈴木さんは、あの時期にマンションを買って、会社でも不動産を購入していたみたいです。当時はバブルでしたから、投機の意味もあったのかもしれません。でもそれが即「横領」だったかというと……ただ、前田さんの不信を買ったのは間違いないと思います。

──ちょっと待って下さい! それはどういうことか、一から説明していただけますか。

 

川﨑 わかりました。その昔「友&愛」というレンタルビデオ・CD屋さんがあったのを憶えていますか?

──憶えています。当時僕の実家のある鳥取にも店舗があったのでよく利用していました。ブルーハーツとかレッド・ウォリアーズとかよく借りていましたので。

川﨑 で、その「友&愛」のフランチャイズを2店舗経営しているXさんって方がいたんです。またもや高田延彦ファンクラブの会員さんだったんですが。

──また高田ファンクラブだ(笑)。

川﨑 そのXさんというのは、第一次UWFのときから、佐山先生や前田さん、高田さんと仲良くされていた方です。一緒に遊びに行ったり、また、お気に入りの楽曲をダビングして選手に渡したりとかしていました。確か前田さんのテーマ曲「キャプチュード」は、もとはXさんの選曲だったんじゃないかなあ……。第一次UWF時代から、佐山先生も含め、前高山の関東近郊の会場への送迎もおやりになっていたみたいです。Xさんも喜んでやっていらっしゃいましたね。

──まあ、ファンからすれば嬉しいことでしょうね。

川﨑 当時レンタル屋も絶好調で、Xさんは不動産投資も積極的にやっていました。時代がバブルですからね。それで不動産投資を神さんや鈴木さんに勧めていたようです。「ようです」というのは、僕みたいな末端の社員はそんなことは聞かされていなかった。いちいち聞かされる必要もないことなんで。

──確かにそうですけど、どことなく、きな臭い話になってきました。

川﨑 それでXさんと話していると「こないだ神が買った砧のマンションは狭い」とか「鈴木に教えてやった岩槻のマンションはウン千万でさあ」とか僕らの知らない話を色々教えてくれました。それで僕は「あ、社長はマンションを買ったのか」と知ることになるんです。当然、前田さんはそういう話をXさんから聞かされていたはずです。プライベートで友人なわけですから。

──でしょうね。ともかく前田さんがXさんから、神社長や鈴木専務のマンション購入の話をたびたび聞いて「なんでそんなにマンション買うんや。あいつら金をパクってるん違うか」みたいに不信感を募らせたのは間違いないと。

川﨑 多分あったでしょうね。お金の流れをガラス張りにしていないということはないけど、でも忙しくて、経理をガラス張りに出来てなかったのも事実です。それで誤解を招いてしまったんでしょう。前田さんは新生UWF旗揚げ1年目から、経理のガラス張りについて「どうなってるんだ」っておっしゃっていましたから。

──うわあ、なんかいろんな意味でショックだ。

川﨑 それにやっぱり給料ですよ。神さんの給料は最初は月25万円。それが50万円、100万円、後半の頃には200万円になっていたと聞いています。前田さんよりもらっていたようです。前田さんがそのとき調査を依頼していたことを、のちにリングスの経理を担当された方から教えていただきました。僕は正直「取り過ぎ」だったと思っています。

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