ついに習近平が本気の「台湾獲り」に動き出す

2期目の最大の目標は「中台統一」

近藤大介です。遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます!

この現代ビジネスの連載「北京のランダム・ウォーカー」は、おかげさまで8年目を迎えました。今回が、342週目のレポートになります。本年も引き続き、習近平政権の「いま」を追っていきたいと思います。

アジアを繋ぐ鎖が緩んでいく

昨年の日本を象徴する漢字は「金」だったが、今年のアジアを象徴する漢字は、「乱」に違いない。

日本を取り巻く東アジアは現在、4つの火薬庫を抱えている。南シナ海、台湾海峡、尖閣諸島、朝鮮半島である。

この4つの火薬庫は、これまで火花を散らしながらも、大爆発には至らなかった。それはひとえに、アメリカという「世界の警察官」が、アジアを強力な鎖で繋いでいてくれたからだ。

ところが、トランプ新政権が出帆する1月20日以降、アメリカという「世界の警察官」は、「世界の暴力団」に変わる(これはビートたけし氏の言葉です)。

というのは大袈裟かもしれないが、トランプ新政権は、第二次世界大戦後の歴代アメリカ政権のように「理念」ではなく、「実利」で行動するようになる。その結果、世界はアメリカの利益のために振り回され、アジアを繋いでいた鎖は緩んでいく。

アメリカ軍は徐々にアジアから引いていくだろう。たとえそのまま居続けたとしても、今後はアジアの戦争には加担しないに違いない(加担するように見せるかもしれないが)。その代わり、アメリカ製の武器・兵器をどんどん買わせようとするだろう。そちらの方がアメリカ人の雇用が増えてアメリカが儲かるからだ。

そうなると、アジアはレフリーのいないフィールドでスポーツをやっているようなもので、4つの火薬庫は、俄然キナ臭くなってくる。

私は、中でも一番リスクが高まるのは、台湾海峡だと見ている。その理由は、今年秋に2期目を迎える習近平政権が、2期目5年間の最大の目標として「台湾統一」を掲げ、本気で取りに来ると思われるからだ。そもそも、5年に一度の共産党大会の年は、対外的に強硬になる。

そこで今週は、台湾海峡の問題について述べたい。

 

蔡英文政権と「92コンセンサス」

昨年5月20日に、台湾独立を綱領に掲げる民進党の蔡英文政権が、台湾で発足した。その日の就任演説で、中国は「92コンセンサス」を承認するよう強く迫ったが、蔡英文新総統は拒否した。

〔PHOTO〕gettyimages

「92コンセンサス」というのは、中華民国(台湾)行政院大陸委員会のHPでは、次のように解説している。

〈 両岸の利便性を高めるため、財団法人海峡交流基金会は、民国81年(1992年)10月、大陸側と香港で協議した。大陸側が提起した「一つの中国」(一個中国)に関する政治的な議題だったが、物別れに終わった。そこで台湾側が同年11月3日、双方が各自で口頭で表明してはどうかと建議した。

表明する内容とは、同年8月1日に李登輝総統が主催した(台北の)国家統一会議で通過した「一つの中国の意味について」を基礎として、「双方が一つの中国の原則を堅持しながらも、一つの中国の意味するところは互いに異なる」というものだ。

同日、中国大陸の海峡両岸関係協会から電話が来て、11月16日には正式な書類が届いた。台湾側の「口頭で声明を発表し、各自のやり方で表現する」というアイデアを、「十分尊重に値し、受け入れる」。すなわち台湾側の建議は「コンセンサス」となったのだ!

このように「92コンセンサス」は大陸側が提起し、台湾側が強制的に呑まされたのではなくて、台湾が提起して大陸が受け入れたのだ。この歴史的事実を認めるべきだ。

双方が発表した文章は長かったので、そのうちに台湾のメディアは略して、「一個中国、各自表達」(一つの中国だが、各自が表現する)と表記するようになった。当時は「92コンセンサス」(九二共識)という言葉もなく、「一中各表」のコンセンサスと言っていた。台湾側が主張する「一中」とは、当然ながら中華民国のことだ 〉

一方、中国大陸の国務院台湾事務弁公室のHPでは、核心部分の説明はこうなっている。

〈「92コンセンサス」の中で重要なのは、「一つの中国」を双方が認めたということであって、一つの中国が意味するものについては、ひとまず先送りしたのだ。実際に、「92コンセンサス」によって、両岸関係は発展していった。「92コンセンサス」は口頭合意ではあるけれども、「一つの中国」を否定したり歪曲することは許されないのだ 〉

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