コンビニがコーヒーで成功して、ドーナツで失敗したシンプルな理由
市場規模という名の「魔物」コンビニ各社が「戦略商品」として大々的に宣伝してきたドーナツが不振にあえいでいる。
コンビニ・コーヒーやフライド・チキンは定番商品となったが、ドーナツは完全にパイの奪い合いとなってしまった。
コンビニ各社は「脱チェーンストア理論」を掲げ、個性的な店舗運営を目指しているが、言葉とは裏腹に現実にはむしろ商品の画一化が進んでいる。今後はM&A(合併・買収)が加速することで、個性的な商品や店舗はますます消滅していくかもしれない。
コーヒー大成功には理由がある
そもそもコンビニ各社が一斉にドーナツを積極展開したのはなぜなのか。その背景にはコンビニ・コーヒーの大成功がある。コンビニ・コーヒーは既存のコーヒー・チェーンにそれほど大きな影響を与えることなく、主力商品に育て上げることができたからである。
コンビニ・コーヒーは最近登場してきたというイメージが強いが、実はセブン-イレブンが30年以上も前から繰り返し導入を試みてきた。同社はオペレーションの問題などから本格展開を見送ってきたのだが、日本マクドナルドの「マックカフェ」の成功をきっかけに、サークルKサンクスがコーヒー市場への本格的な参入を開始。その後、ローソンやファミリーマートも追従、2013年にはセブンが満を持してサービスを始めたことで、市場が一気に拡大し、ヒット商品となったわけだ。
コンビニ各社がこれほどまでにコーヒーへの参入にこだわったのは、新しい需要を創造することによって、コンビニの潜在的な事業規模を拡大できると考えたからである。コンビニでコーヒーを購入する顧客は、必ずしも既存のコーヒー店の常連客とは限らない。既存市場とパイの奪い合いをせず、新しい需要を作り出すことができれば、コンビニの市場はまだまだ拡大が可能という期待が出てくる。
実際、コンビニ・コーヒーはそれに近い効果をもたらしたといってよい。セブンは2015年2月期において7億杯のコーヒーを提供したことを明らかにしている。セブンのコーヒーはホットの場合レギュラーサイズ(R)が税込100円、ラージサイズ(L)が150円、アイスの場合、レギュラーが100円、ラージが180円となっている。これが一年で7億杯出るので、セブン1社だけで年間約750億円もの売り上げとなった。