米大統領を目指した元上院議員の女性疑惑と瓜二つ
東京都知事選に立候補したジャーナリストの鳥越俊太郎氏をめぐって女性スキャンダル疑惑が浮上した。週刊文春7月28日号(7月21日発売)が「鳥越俊太郎氏『女子大生淫行』疑惑」と題した特集を組んだのだ。
鳥越氏は疑惑を全面否定しているものの、選挙戦では当初の勢いを失いつつある。25日までに出そろった主要各紙の世論調査を見ると、同氏は3番手として元防衛省の小池百合子氏と元岩手県知事の増田寛也氏を追う展開になっている。文春報道が影響した可能性がある。
ただでさえ「争点が見えにくい」「十分な政策論争がない」と言われているなかで、女性スキャンダルに世の中の関心が向かいかねない状況だ。ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏は「鳥越さんの政策とか一ミリも賛成できんけど、女性問題とかで叩くのもういい加減止めにしない?」とツイートしている。
確かにその通りかもしれない。だが候補者の人格に関わる場合はどうだろうか。単に下世話な話と片づけるわけにはいかない場合もあるのではないか。
その意味で振り返る価値があるのは、30年近く前に米国の有力政治家をめぐって起きた女性スキャンダルだ。
渦中にあったのは「次期大統領に最も近い」と言われていたゲーリー・ハート上院議員(当時)。フロリダの地方紙マイアミ・ヘラルドが同上院議員の不倫現場をスクープし、大ニュースになった。米国の政治ジャーナリズムは「ハート前」と「ハート後」で別物になったとまでいわれている。
それをノンフィクションで浮き彫りにしたのが2014年出版の『真実はこれだ:政治がタブロイド化した1週間』(邦訳なし)だ。
著者のマット・バイ氏は「政策論議を深めるのではなくスキャンダルを暴く――これが『ハート後』の政治ジャーナリズムの基本スタンスになった」と嘆いている。堀江氏と同じ問題意識を持っているわけだ。
若くハンサムで「第35第大統領ジョン・F・ケネディの再来」とまで言われたハート氏。米大統領選に2度出馬し、1987年には民主党の最有力大統領候補に躍り出た。女性スキャンダル疑惑が浮上してもきっぱりと否定。ところが最後は不倫現場を暴かれて失墜し、2度と大統領候補として浮上することはなかった。
有力候補として選挙に出馬したところ、女性スキャンダル疑惑をぶつけられ、公の場で完全否定――構図としてハート氏と鳥越氏のケースは瓜二つである。