ニューヨーク在住、50ヵ国語を操るという日本人医師・新名美次氏。彼が著した『50ヵ国語習得法~誰にでもできる、いまからでも間に合う』から、語学学習メソッドの一部を公開する。
外国に行ったこともなかった
私が五十数ヵ国語も話せることを知ると、たいていの人は「子供の頃から外国に住んでいたのですか?」と尋ねる。
しかし私の場合、親が外交官や商社マンだったわけではないし、幼い頃から外国暮らしをしてきたわけでもない。また、留学生活を送った経験もない。まして、特別な語学の英才教育を受けたこともない。私は人生の二十数年を日本で過ごし、現在はニューヨークで眼科医として開業しており、決して、外国語のスペシャリストを生業にはしていない。
私は、子供の頃から外国に興味があり、英語をはじめとした外国語を話せることに憧れ、努力し続けてきたに過ぎない。
【話し上手への道に同じ】
世の中には、話し上手といわれる人がたくさんいる。この話し上手というのは、たとえむずかしいことでも、誰にも論理的にわかりやすく話せる人を指すが、このような人の会話は常に自分の言いたい論旨がよくまとまっており、使う言葉はわかりやすく、しかも、的確な言葉の選び方をする。
外国語を勉強する上で、特に、早く外国語をマスターしようとする場合の大切なポイントの1つは、この自分の言いたいことの論旨をうまくまとめること、わかりやすく話せることである。それが上達を早める大きな要素になる。
例えば、話す前に、どのような相手に自分が何を言いたいのか、相手に何を理解してもらいたいのかをよく考えると、おのずからどのような言葉を選び、どのように話せばよいのかがわかってくる。反対に聞く側になった場合、相手が何をしたいのか、何を言いたいのかを理解しようとする時に、適切でわかりやすく説明されると理解が早くなるし、誤解が生じることもないだろう。
有能なセールスマンなどは、それができる類いの人である。彼らは、常に、どのような言葉を使ったらお客に印象づけることができ、しかも最大限のアピールを生み出すことができるかを考える。まず、手始めに、自社の商品を分析し、次にその特性を整理し、的を射た印象深い言葉を使って論理的で効果的なセールスマニュアルを組み立てていく。
そして、お客から絶対的な信用を勝ち得るために、熱意をもって話し始めるだろう。彼らセールスマンにとってお客との信頼関係を築くことができたら、商品が売れたも同然になるという。外国語の勉強をする上で、相手に理解をしてもらえるように話す気持ちを持つことは、強い動機に続く上達へのステップになる。
例えば、医者の立場からも同じことがいえる。私たちは、いつも病状を患者さんにわかりやすく説明し、治療していく。私が病状を説明する時は、患者の立場になり、専門用語よりも簡単な言葉で患者さんが理解しやすく、納得できるまで、根気よく説明を繰り返すようにしている。特に手術をする場合、患者と医者の信頼関係と患者側の病状の深い理解度が、良好な経過をもたらすのである。