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知らず知らずのうちに導入が近づいていたこの制度。役所での手続きが簡単になれば便利だが、人が番号で管理されるというのはやっぱり気持ちが悪い。逃げ道のない監視社会が、まもなく訪れる。
とにかく、やれ!
「遅い!」
首相官邸の5階にある総理執務室。安倍晋三総理の甲高い怒声が響く。連日のように呼び出され、叱責を受けているのは、マイナンバー制度の実務を担当する内閣官房社会保障改革担当室の宮島俊彦室長だ。
いよいよ10月5日から、日本に住むすべての人に一枚のカードが配られる。12ケタの「マイナンバー」が記された、「通知カード」である。
いったい、いつのまに—。そう思う人も多いだろうが、国民全員が一生変えられない番号を与えられ、個人情報のすべてが国によって管理される日が、わずか3ヵ月後に迫っている。
通知を目前に控えた今、なぜ安倍総理は焦っているのか。内閣官房職員が明かす。
「6月1日に公表された不正アクセスによる約125万件の年金情報流出事件以来、参院でのマイナンバー法案の審議は完全にストップしている。サイバーテロに対するセキュリティを一から見直さなければなりませんが、それが進んでいない。だから安倍さんは怒っている。6月末に閣議決定する『新成長戦略』の目玉はIT分野だが、そのために『万全のサイバーセキュリティ』という文言を、成長戦略に入れなければならない。もちろん、マイナンバーのためにもです。