イスラム国による日本人人質事件にみる安倍首相の「胆力」

現地対策本部が置かれる在ヨルダン日本大使館 〔PHOTO〕gettyimages

ヨルダンとトルコの全面協力を取り付けた安倍首相

1月23日午後2時50分の「期限」が過ぎた。だが、何も起こらなかった。そして、イスラム過激派「イスラム国」によって人質に取られた日本人男性2人(フリージャーナリストの後藤健二さんと会社経営者の湯川遥菜さん)の動静は不明のままだ。

2億ドル(約235億円)の身代金を要求された日本政府は、「人命第一で対応に全力を尽くす」とした上で安倍晋三首相が22日の会見で「テロに絶対屈しない」と述べたように、人質解放のための身代金支払いを前提とした交渉には応じない姿勢を崩していない。

イスラエル滞在中の人質殺害脅迫事件発足後、安倍首相は20日午後(現地時間)、予定を変えることなく首都エルサレムからパレスチナ自治区のラマラに防爆車で移動しアッバス議長と会談してからエルサレム市内のホテルに戻り、同所からヨルダンのアブドラ国王とトルコのエルドアン大統領との電話会談で両国の全面協力を取り付けた。

マスコミ報道では、日本は「イスラム国」との水面下での交渉を行なっていない、同国へのアクセスがないというものが過半であった。しかしヨルダンは、実は非エネルギー資源国でありながら国情が安定しているのはアブドラ国王の卓越したリーダーシップもあるが、あの地域では精鋭部隊を有する軍事大国であると同時に、優れた情報機関を持っているのだ。

一方のトルコのエルドアン政権は、「イスラム国」が実効支配するシリア北部と国境を接するだけでなく、シリアのアサド政権に抵抗する反体制派組織、イラク内の反体制派(イスラム教スンニ派)の各部族長にもアクセスがある。加えて、安倍首相とはケミストリー(波長)が合うエルドアン大統領自らが交渉仲介に乗り出しているのだ。

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