2014.05.30
# 国際・外交

北朝鮮の拉致問題再調査で浮上する安倍首相の「サプライズ解散」説

集団的自衛権の行使容認をめぐる国会論議が本格化している。政府は与党協議に際して15の事例を提示したが、国会ではそれらの事例について安倍晋三首相が具体的に地域や対象について説明を加えた。

一方、北朝鮮の拉致問題について北朝鮮が全面的な再調査を約束し、それを受けて日本政府も制裁措置の一部解除を約束するという進展もあった。これをどう考えるか。

まず、集団的自衛権の具体的事例を細かく掘り下げていけば、想定している事態が明確になる一方、結果的にカウントの仕方次第で事例の数が増えていくのは自明である。集団的自衛権行使に反対する新聞はそこを突いて「集団的自衛権もう拡大」(東京新聞)とか「首相、答弁で事例増殖」(毎日新聞)、「自衛隊派遣、中東も想定」(朝日新聞、いずれも5月29日付朝刊一面)と批判した。

これは十分に予想された展開である。なぜなら、集団的自衛権を行使するような事態は戦争に突入しているか、一歩手前の緊張状態だろう。そうであれば、敵がどういう手を打ってくるか、完全には予想できない。15どころか100も200も事例が増えたっておかしくはないのだ。

「ポジティブリスト」は公明党対策

本来なら、緊迫した事態で自衛隊が「何をしてはいけないか」を定める「ネガティブリスト」を決めるのが理想である。それは軍隊を規律付ける国際標準でもある。政府もそれは十分、分かっているが、それでは公明党が納得しない。そこで政府は集団的自衛権の議論を始めるに際して、最初に「何をするのであればOK」と言える「ポジティブリスト」を作る作業を選んだのだ。

ポジティブリスト方式でいくと決めた時点で「細部を詰めていけば、いくらでも枝分かれして事例は増殖していく」のは承知の上だった。だから政府は当面、事例増殖の批判は覚悟のうえで論戦に応じるだろう。

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