二宮寿朗「大迫移籍に見た“太陽型”鹿島」
鹿島アントラーズのエースで、日本代表のFW大迫勇也がドイツ2部の1860ミュンヘンに移籍することが決まった。半年後に控えるブラジルW杯を考えると、リスクのある海外挑戦かもしれない。だが、「いいチャンスがあれば、挑戦したい」と以前から話していた彼にしてみれば、今がそのタイミングだったということだろう。
違約金発生もスムーズな移籍
今回の移籍で注目したいのは、鹿島側に違約金が支払われるということ。
2009年、鹿島に入団した大迫は2014年1月までの長期契約を結んだ後、2011年末には新たに契約を1年延ばしていた。つまり、契約途中の移籍であるため、違約金が発生する形となる。
クラブは海外志向の強い大迫の意向を汲んだうえで違約金を低額に設定していた模様。報道では具体的に7500万円という数字も出ていた。
新シーズンを考えれば2013年シーズンで19得点を挙げた大迫を低額で欧州に行かせていいのか、という声もあるだろう。ただ才能ある若手が欧州の舞台に飛び出していくのが主流になっている昨今、高額の違約金を設定するなどして移籍を阻むのは難しくなってはきている。
なるべく行かせたくないが、それでも行くというなら後押しする。もちろん鹿島での活躍が条件にはなるが。そんなクラブのスタンスが鹿島にはあるように思えてくる。タイトルのひとつぐらい置き土産にしてほしいというのが本音かもしれないが、確かに昨年の大迫の活躍は目を見張るものがあった。5年在籍して昨年結果を残したことで、クラブも本人の希望を“容認”したのだろう。
ケンカ別れではなく、あくまでお互いが納得したうえでの移籍を前提とする。そのため選手側も鹿島と長期契約を結んで、海外移籍する際は多少なりとも違約金が発生するようにしている。鹿島は2010年、DF内田篤人をシャルケに移籍させたときにも、推定1億5000万円の違約金を受け取っている。クラブと選手の信頼関係が良好だからこそ、移籍がスムーズだとも言える。