アジア危機の悪夢再び。米国はインフレ目標を打ち出したのに、欧州危機を前に「消費税増税」を仕掛ける財務省と野田政権の愚策
消費税増税国会がはじまった。民主党マニフェストに書いていなかった消費税増税は、2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げるというスケジュールが決まっているが、消費税を充てるという社会保障制度にマニフェストで書かれていた最低保障年金は盛り込まれていない。
この点だけでも消費税増税は失格政策だが、このコラムの読者なら他にも、欧州危機が現実化する中での増税、歳入庁がないことによる税・保険料の不公平、消費税の社会保障目的税化の社会保障費増大への懸念や地方分権への支障などいろいろな観点からの問題点があることをご存じだろう(昨年12月19日「その前に財務省が嫌がる歳入庁の設立を。租税論、経済政策論、地方分権・・・消費税の社会保障目的税化は世界でも類例がない愚策だ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/30515を参照)。
そうした本質的な問題点をそらすために、わかりやすい三点削減セット(定数、国会議員歳費、政党交付金)や公務員給与カットなどを消費税増税とバーターにする動きがある。法案は国会で議論されるが、その審議順番などは「国対」がカギにある。国対関係者はどちらかというと政策に疎いので、わかりやすい話が取り上げられて動きかちだ。
政治改革三点セットや公務員給与問題は、本来であれば、消費税増税とは無関係に進められるべきものだ。そんなものでお茶を濁されては国民はたまったものでない。
消費税増税の最大の問題は、経済との関係だ。もし増税して景気がよくなるなら、いくらでも税率100%まで増税すればいい。
はっきりいえば、消費税増税の大義名分は財政再建だけだ。社会保障に充てると言いながら、野田政権の意見がコロコロ変わるように、カネに色がついていない以上、そうした説明は意味がない。昨年12月26日の本コラム「財務省とのなれ合いで自民党政権時代よりも10兆円以上歳出が増えた民主党政権。大増税に導く2012年度予算はこんなにデタラメだ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31237で明らかにしたように、民主党政権になって予算規模が膨らんだために、その穴埋めで今回の消費税増税が行われるにすぎない。
ただし、財政再建の大義も、景気が悪くなっては元も子もない。財務省は、1997年4月から消費税増税をしたが、その直後にアジア危機があり、一般会計税収は1997年度の53.9兆円からその後はそれを下回っている(2012年度予算は42.3兆円)。
財務省は、その後の景気の落ち込みはアジア危機のためで消費税ではないという。その説明は苦しい。アジア危機の震源地である韓国は、たしかに危機時は景気が落ち込んだが、少し経つと回復している、一方、日本は回復していない。