2011.07.19

菅首相「脱原発」で儲ける「政商」ソフトバンク
太陽光よりおいしい風力発電にまで
こっそり食指を延ばしていた

定款変更前に「補助金ビジネス」に参入
能弁の裏側でなぜか、こっそり風力発電に投資 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images

 電力参入を可能にする自社の定款変更の前に、こっそりと風力発電会社を掌中に収め、そのうえで菅直人首相に働きかけて風力発電会社の収入を保証する振興法案を成立させる。それによって、10~20年単位で「濡れ手に粟」の利益を我がものとする――。

 福島原発事故ですべての日本国民が憔悴する中で、そんな“離れ業”をやってのけようとする、抜け目ない会社が存在する。孫正義社長が率いるソフトバンクだ。今週は、国民の弱みや不安に、ちゃっかりつけこむ、その抜群の抜け目なさをご紹介しよう。

「ソフトバンクの出資が表沙汰にならないように」

 5月の連休明けのこと。資金繰り難に陥っていた業界中位の風力発電会社グリーンパワー・インべストメント(GPI、本社東京都港区、当時の資本金 9億1500万円、堀俊夫社長)は突然、大株主に名を連ねる各社を驚かせる通告を行い了承を求めた。

 ちなみに、GPIは2004年9月の設立。社長の堀俊夫氏は、総合商社トーメン(現豊田通商)の出身で、オランダに投資ファンドを設置し、欧州の風力発電事業に投資してきた。また、ここ数年は国内の風力発電事業に力を入れていた。しかし、近年は経営難に陥り、融資の返済期限を延長して貰い、大株主や取引先に支援を要請するような有り様だったという。

 そうした中で、GPIが降って湧いたような再建策を通知したのだから、大株主の各社が意外に感じたのは無理のないことだった。

 具体的な内容は、第3者割当増資によって約10億円を調達し、6月4日に返済期限が迫っていた米投資ファンド「Sage Capital  Global」への5億円あまりの借入金を返済するというものだったが、大株主各社は、内容よりも、増資の割当先企業名に驚いたと異口同音に語った。

 というのは、これまで電力事業には縁もゆかりもない、携帯電話事業者ソフトバンクが、その割当先だったからである。

 筆者の取材に対して、ある大株主は「当社がソフトバンクと協力関係を結ぶと世間に誤解されるのは迷惑なこと。今後は、増資も融資も含めて、GPIに対して一切の支援を行わないと通告した」と不満を隠さない。

 別の大株主は「GPIは第3者割当増資の実施をすぐ発表すると話していたのに、1カ月以上経っても、その発表がなく、不審に思っていたところだった」と内情を明かした。

 さらに、別の大株主は、「ソフトバンクの出資が表沙汰にならないように処理するとGPIから聞かされた。変なことをするもんだと感じていた」 と、さらに強い不信感を口にしたのである。

 経営危機会社の大株主にとって、新たな出資者と言えば、投資が紙くずにならなくて済むのだから、本来はそれなりに歓迎すべき存在だろう。それにもかかわらず、なぜ、ソフトバンクはここまで忌み嫌われたのだろうか。どうやら、増資によってソフトバンクがいきなり44%を持つ筆頭株主になることへの感情的な反発だけが、その理由ではなさそうだ。

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