デル、PCモニター新製品説明会で“スマートモニター”を披露
ウルトラワイド液晶やタッチパネル液晶を紹介、ゲーミングモニターの投入は見送り
デルは11月29日、都内にて一般・法人向けの液晶モニターの新製品説明会を開催した。
今回発表された新製品としては、エントリーモデルとなるEシリーズの最新モデル「E2313H」を発表したのみで、多くの時間を同社の豊富なモニターラインナップの紹介やサポートの充実ぶり、そして地球環境へ配慮の説明に割いていた。
また、説明会の後半では、11月15日に発売したばかりの29インチウルトラワイド液晶モニター「U2913WM」と、Windows 8での利用を意識したタッチパネル式のモニター「S2340T」のデモを行なった。これらは共に好調なセールスを記録しており、今後も両ラインを拡充していく方針を改めて表明した。
■ 液晶モニターの分野で国内トップシェアを誇るデル
説明を行なうデル マーケティング本部リレーション製品マーケティング本部ブランドマネージャー河田浩行氏 |
デルは国内でトップシェアを誇る |
デルが狙うセグメントは“お手軽な価格のスマートモニター” |
デルといえばかつてはPCメーカーだったが、現在は、PC、サーバーはもちろんのこと、それらにマッチする最適な周辺機器まで含めたトータルなコンピューティングソリューションを提供するメーカーになっている。とりわけ、年々事業的に大きな存在となっているのがモニターで、2012年は(2012年第1四半期〜第三四半期まで)は国内でトップシェアを維持している。
こうしたなかでデルでは、インテリジェントな機能を備えた液晶モニター“スマートモニター”戦略を強化している。E、IN、S、プロフェッショナル、メインストリーム、デジタルハイエンドなど、個人、法人向けにTPOに合わせた様々なラインナップを提供し、上位ラインでは「Dell Display Manager」や「Smart Video Enhance」といった同社独自の機能を取り入れ、他社との差別化を図っている。
他社のラインナップと比較しての大きな違いは、デルの液晶モニター全シリーズ共通してコストパフォーマンスを最重視していることと、ゲーミングラインが存在しないことだ。
デルのモニター事業は、自社でファブを持たず、液晶モニターの心臓部である液晶パネルは他社からの供給に頼っているところが大きな特徴になる。29インチウルトラワイド液晶モニター「U2913WM」はLG製のパネルだし、機能を限界までそぎ落とし圧倒的な低価格を実現したEシリーズは、台湾系のパネルを使っている。他社からパネルを大量購入し、スケールメリットを活かして安価で提供し、デルの流通チャンネルで売りまくる。こうしてデルは国内でシェアを伸ばしてきた。
もうひとつの特徴として、これだけ豊富なラインナップを揃えながらゲーミングのカテゴリがないことだ。もちろん、デルには、ゲーミングブランド「ALIENWARE」が存在するが、厳密にはデルのモニター事業と、ALIENWAREは別事業で、そのALIENWAREからもここ数年、新製品が出ていない。もともとコンシューマーよりビジネス寄りのソリューションに力を入れてきたデルだが、液晶においてもその傾向はより一層強くなっている。
デルの基本的な考え方としては、現行の個人向け、法人向けのラインナップの性能を上げることで、ゲームファンにも使って貰えばいいというスタンスで、今後もゲーミングのカテゴリを新設したり、応答速度1〜2msのパネルを採用したり、各種ゲームモードを搭載するということは考えていないようだ。もっとも、ゲーマーこそ、もっとも価格にシビアという見方もあり、デルのこのスタンスは必ずしもゲーマーの切り捨てを意味していない。むしろ一種のしたたかさを感じさせる戦略と言える。
【スライド】 | |
---|---|
PCとそのあらゆる周辺機器を提供する | 液晶モニターのラインナップ。個人、法人含めてかなり複雑なラインナップ構成となる |
サポート体制。不良品や液晶欠けに手厚い | 地球環境への配慮 |
■ 価格を抑えつつ一芸に秀でた液晶モニター群
幕を取る河田氏 |
「U2913WM」は全画面タイプのコンテンツを表示するとその広さが実感できる |
「S2340T」は、Windows 8を快適に利用するために設計されたモニターとなる |
新しくなった筐体デザインでは、ベゼル部分はザラつきのある素材に変更され、指紋が付きにくくなっている |
発表会後半では、新製品の説明が行なわれた。29インチウルトラワイド液晶モニター「U2913WM」の説明では、デルの河田浩行氏による除幕式があり、幕を取り払うと2,560×1,080ドットの領域にGoogleマップを広々と表示した「U2913WM」が出現した。
「U2913WM」は、2,560×1,080ドット、アスペクト比にして21:9という横長のAH-IPSパネルを採用した液晶モニター。11月15日に発売を開始し、29インチと大型サイズであるにも関わらず39,980円と強気の価格設定で、早くも人気モデルになっているという。デルでは、この特異な横長の表示領域を有効活用して貰うために2つの機能を搭載している。それが先ほど紹介した「Dell Display Manager」と「Smart Video Enhance」になる。
「Dell Display Manager」は、OSD(On Screen Display)の一種で、Easy Arrangeと名付けられた独自の画面分割モードと、オートモード(自動プリセット)、パワーナップ(自動スリープ)機能の設定が行なえる。Easy Arrangeを使うと、2,560×1,080ドットの画面を1ウィンドウ1画面扱いで、最大6つに分割して使うことができる。複数のモニターを並べて使いたいときなどに非常に便利な機能となる。
もうひとつの「Smart Video Enhance」は、「U2913WM」のみの搭載で、「U2913WM」の特徴を活かした機能となる。具体的には映像をウィンドウ表示した際に、ビデオ表示ウィンドウのみに、ビデオ表示設定に合わせて映像を最適化してくれるというもので、映像を見ながらWebも見るといった“ながら”の使い方に適したモードとなっている。
そのほかにも、すでに発表されているように、豊富なインターフェイス(DVD-Dデュアルリンク×1、HDMI×1、DisplayPort1.2×1、Mini DP1.2×1、VGA×1、USB3.0アップストリーム×1、USB3.0ダウンストリーム×4)を標準搭載しているほか、高さ(130mm)、前後への傾斜(チルト4~21度)、左右回転(スィベル30度)など、細かい調整機能も搭載しており、ゲームへの利用も十分可能なモニターとなっている。
23インチマルチタッチモニター「S2340T」は、Windows 8で標準対応しているタッチインターフェイス向けの10点マルチタッチモニターで、通常の液晶モニターのように立てて設置する標準的な置き方から、タッチパネル式の案内板のように角度を付けておいたり、地図を広げてみるように地面にフラットに置くこともできるという多関節スタンドが特徴となる。
また、スタンド部には電源コネクタのほか、HDMI×1、DisplayPort×1、USB3.0×2、ギガイーサネットといった多彩な端子を備えており、モバイルノートPCの母艦としても活用できる。その他、タッチ操作の障害にならないように、凹凸のないベゼル設計を採用していたり、IPSパネルによる広視野角の実現など、優れたスクリーンパフォーマンスを実現している。応答速度も「U2913WM」と同じ8msということで、ゲーム利用にもまずまずの適したモニターと言えそうだ。
最後に紹介する「E2313H」は、主に法人向けを意識したフルHD液晶モニターとなる。新モデルにあたってはベゼルを含む外装を一新し、一層の省電力を実現している。液晶モニターとしては、最大解像度1,920×1,080ドット、応答速度5msのTNパネルを採用し、インターフェイスはVGA×1、DVD-D×1のみという非常に割り切った設計のモニターとなっている。とにかく価格を抑えてフルHD液晶モニターが欲しいという向きには選択肢の1つに数えられるモニターになるだろう。
【U2913WM】 | |
---|---|
【S2340T】 | |
---|---|
【E2313H】 | |
---|---|
(2012年 11月 29日)