鳩山さんのライバルが「若林さん」(それ誰?)に決まった、という「トンデモ事件」
あまりに面白い事が起こったので、いつもと違う話題を書いてみたいと思います。
16日に行われる予定の「次の首相を誰にするか」の首相で、鳩山さんの対抗馬として、「若林さん」という人が担ぎ上げられることになりました。
この時点でもう笑い転げてしまっている人もいると思いますが、ほとんどの人には
・「若林さんって誰?」
・「なんでそんな人が、鳩山さんの対抗馬として立つの?」
に違いありませんから、面白さがわかるようになるまで説明をしてみたいと思います。
#本当は笑っている場合ではないですが・・・
解らない人はぜひ読んでください、びっくりすると思います。
◆次の首相は(形式上は)まだ決まっていない
ニュースを段階的に引用しつつ、いかに妙なことが起こっているか、説明したいと思います。
なお、こちら関係の話題はあまり詳しくないので、細かいところで間違いなどがあったらすみません。
混乱回避へ苦肉の策=「首相候補」に参院・若林氏-自民
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2009090800953
自民党は8日の両院議員総会で、16日召集の特別国会での首相指名選挙で若林正俊両院議員総会長に投票する方針を決定、衆院選直後から続いた混乱はひとまず沈静化された。
ニュースの一番大事な部分は以上なのですが、まずは順番に事情を説明しましょう。
もう終わりましたが、八月末までは衆議院選挙が行われていました。衆議院選挙は、誰が衆議院議員になるかを決めるとともに、誰が次の首相になるかを決める行事です。
選挙は以下の構図で行われました
・次の首相も麻生で:自民党/公明党
・次の首相は鳩山で:民主党/社民党/国民新党
そして「誰が衆議院議員になるか」については、自民党/公明党のぼろ負けになりました。そしてその結果として、「誰が次の首相になるか」についても鳩山さんに事実上決定しました。
しかし、事実上決定しただけで、まだ実際に首相が交代したわけではありません。実際、今の時点では日本国の首相は麻生さんのままです。
次の首相は、「16日に行われる、特別国会での首相指名選挙」で決められることになっています。
つまり、
・新しく当選した衆議院議員が衆議院に大集合し
・当選した議員「全員」が「私はこの人に首相になってもらいたい」という人へ投票を行う
・得票が一番多かった人が新しい首相になる
「誰が次の首相になるか」は16日の投票結果次第であり、形式上においては「まだ誰になるかわからない」状態にあります。
まあ実際は、鳩山さんに決まったようなものですが。
◆勝てなくても候補は立てなければならない、という悩み
つまり、16日には「衆議院議員」の「全員」が、次に首相にしたい人の名前を書いて投票しなければなりません。問題は「全員」というところです。
「民主党/社民党/国民新党」については悩む必要はありません。「鳩山さんがいいと思います」と書いて提出するだけです。
問題は自民党と公明党の議員です。彼らも「○○さんがいいと思います」と書いて投票しないといけないのです。
もちろん、過半数を割っていますから、誰の名前を書こうとも結果は変わりません。しかし、まさか一緒になって「鳩山」と書くわけには行きませんから、勝てなくても対立候補を立てて投票しなければなりません。
問題は、それを「誰の名前にするか」です。
選挙の筋としては、「次の首相も麻生で」として選挙をやったのですから、「麻生太郎」と書いてみんなで書いて投票しましたが多勢に無勢でした、というのが筋でもあります。
しかし麻生さんは、この無茶苦茶な結果を招いた張本人としてあらゆる方面からフルボッコ状態にあり、本人も責任を取って自民党の総裁を辞めると表明してしまいました。
つまり、16日には「麻生さん」の名前を書くのは嫌だ、ということになりました。俺は麻生にやってもらいたいんだ、と思って投票した人からすると失礼なことですが、麻生と書いても世間から反省が足りないとお怒りの声が上がるのも事実でしょう。
「代わりの名前」が必要なのだけれど、それが無いからどうしよう、という揉め事がしばらく続いていました。
◆誰もなりたがらない
理想的なのは、16日までに自民党の新しいしっかりしたリーダーを決めることです。ですが、それができません。
選挙は30日に終わっていますから、二週間以上もありました。ですから、急遽次の人を決めるのは不可能ではありませんでした。
しかし、人気のある系の人はこの状況で手を上げるのは嫌だと渋ってだれも「我がやる」と言いません。私がなります、という人が出てきての解決は起こりませんでした
じゃあ誰かにやらせようと、長老(選挙で生き残った人には古株が多く若手は壊滅している)が相談をして「○○さんにしましょう」と決めてしまうと、これまた悪印象となります。
かといって「麻生」も嫌だといって反対意見が出てしまいます。
自民党は酷く混乱していて、何も決められ無くなってしまったのです。
そこで首相指名選挙では、仕方なしに「誰も名前も書かず」に投票すること(白紙投票)も検討されている始末でした。
ですが「白紙投票」はダメだという反対意見が出ていました。ある意味当然の主張です。元のニュースでも、
「白票という自殺行為は断じてあってはならない」(谷公一衆院議員)。
しかし、現実的には「誰にするか決められるわけが無い」状況です。
党の幹部としては、決められないからと言って投票をどうするか決めないわけには行きません。結果として「白紙投票」しかありませんでした。だって、誰の名前にするか決められないわけですから、
「白票は権利放棄ではない」(甘利明行政改革担当相)。
細田博之幹事長ら執行部は当初、総裁選が特別国会後に実施され、新総裁選出が間に合わないため、「白紙投票」で臨む方向で調整していた。
ですが、白票にはやはり反対意見が出てしまいます。そしていつまでたってもどうするか決まらずに揉め続けました。そして、結末はこうなりました。
業を煮やした細田氏が「白紙投票がいいという人は手を挙げてほしい」と求めたのに対し、挙手したのは20人程度。執行部方針はあっさり覆され、細田氏が若林氏への投票を提案すると、拍手で了承された。
揉めに揉めた大混乱は、「若林さん」の名前が出されたところ「拍手で了承」されてひとまずの解決を得た、とのことでした。
ところで、この大混乱を収拾した「若林さん」とはいったい誰なのでしょうか?
◆困った時の「若林さん」
実は「若林さん」はこういう人です。
2006/09/26 松岡利勝:農林水産大臣に
2007/05/28 松岡利勝:事務所費問題等で・・(「ナントカ還元水」)
2007/05/28 若林正俊:農林水産大臣の臨時代理
2007/06/01 赤城徳彦:農林水産大臣に
2007/08/01 赤城徳彦:不祥事により就任2ヶ月でスピード更迭
2007/08/01 若林正俊:臨時代理で農林水産大臣に
2007/08/27 若林正俊:内閣改造で臨時の農林水産大臣を辞任
2007/08/27 遠藤武彦:農林水産大臣に
2007/08/27 若林正俊:環境大臣に
2007/08/27 遠藤武彦:金銭問題で就任7日後にスピード更迭
2007/09/04 若林正俊:臨時代理で農林水産大臣を兼任
その後、福田内閣では「臨時ではない」農林水産大臣をしていますが、福田内閣自体が臨時っぽい内閣になってしまいました。
また現在は「両院議員総会長」をやっていますが、
・山崎正昭参院幹事長が体調不良で辞任
・参院幹事長の後任に谷川秀善さんが就任
・両院議員総会長が空席になったので、いわば臨時で若林さんが就任
つまり若林さん、結果的に
「臨時のプロ」
とでも言うような人なのです。
◆「白票」と「若林さん」の違いは何だ
さてもう一度引用しましょう
細田氏が若林氏への投票を提案すると、拍手で了承された。
大敗しましたが、大敗したからこその必死の議論というものもあります。次の希望は失敗の反省の中からしか生まれないのですから。
・民意は麻生太郎で問うたのだから、麻生で行くべきだ
・麻生ではダメだ
・麻生さん自身が身を引くと言っている
・新しい総裁を立てるべきだ、ないしは臨時でも代表を決めるべきだ
・密室で決まったような印象は絶対にだめだ
・○○さんにすべきだ
・いや○○さんだ
・オープンにやっていたら誰にも決まらないじゃないか
・水面下で:○○さんはどうですか→いやです
・決まるわけないじゃないか、現実的には白票しかない
・白票はいやだ
こういう状況がずっと続きます。
そしてその結末はなんと、
「決められないなら、とりあえず若林さんでどうでしょう?」
→拍手で了承
→じゃあ、(代役のプロの)若林さんに決定!
どうでしょう皆さん、この話の「面白さ」は解っていただけたでしょうか。
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コメント
http://www.asahi.com/politics/update/0909/TKY200909090008.html
asahi.comにも「困ったときの若林」なんて記事が掲載されていました。
なんというプロ臨時…
投稿: | 2009/09/09 15:00
田舎の自治会の、長年の慣習的おとしどころのようなもんですね。
投稿: | 2009/09/09 15:06
>「臨時のプロ」
おもしろいですねw
次の選挙で若林臨時総裁で勝ったらもっとおもしろいかもw
投稿: sy | 2009/09/09 19:42