代表選から読む"民意"と円高と仙谷官房長官の失言
民主党代表選挙の結果は、既に御存じであろう。
今日はこれに関連し様々な動きがあった。
まず、菅政権に対する嫌気から、小沢氏が個人的には総理にふさわしいと思っていた私にとっては、菅政権が続くことにはウンザリするのであるが、そういう個人的感情は別として、今回の代表選の結果について簡単に私見を発したい。
マスコミや野党議員の一部は、党員サポータ票のポイント差と国会議員票のポイント差を比較し、「民主党の国会議員は、民意とこれだけかい離している」との指摘をしているが、これは民意を読み取る能力の乏しい発言である。少なくとも、こういう発言をしている議員やマスコミに国民の声を読み取る力は無い。
一部のジャーナリストが等が指摘するように、"民意"、つまり、"民主党員・サポーターの声"を判断する上で、ポイント数だけを考慮すると、多くの死票を無視することになる。
つまり、今回の選挙制度で、党員・サポーター票は、Winner Takes All、「勝者総取り方式」なのであって、この制度下で生まれる死票を無視してしまうと、正しい"民意"の読み取りはできない。
THE-JOURNAL編集部のツイートによれば、「党員・サポーター票の総得票数は小沢:90,194、菅:137,998。比率では小沢39.5%、菅60.5%」という結果だったという。
この結果からすれば、党員・サポーターの4割は小沢氏に投票しており、5割が小沢氏を支持をした国会議員票と1割しか違いがない。
したがって、1割の違いをもって、民意とかい離しているという評価は妥当でないし、むしろ、死票を無視する評価であって、これこそ民意軽視の評価であろう。
マスコミや野党議員だから、政府与党を批判するのがある意味、役割という側面もないではないが、あまりにも薄っぺらい、形式的批判は、自らの信用力を毀損すると思うので、もっと深い視点で、批判を繰り広げてもらいたいものである。
さて、問題は、4割近くが発足3カ月の菅政権に対し、Noを突き付けたわけである。
当初、党員・サポーター票のポイント数だけが発表された時は、「やはり、小沢氏は嫌われているな」と思ったが、総得票数を見て、「マスコミで言われているほど、一般人への小沢氏への嫌悪感は和らぎ始めているか、むしろそれ以上の危機感を菅政権に対して感じているのかもしれない」と感じた。
さらに言えば、脱小沢をメディアが争点とした今回の選挙で、民主党内は党員・サポーター、地方議員、国会議員を含め、4~5割近くが脱小沢に必ずしも好意的ではないという結果が出たと読める。
菅直人首相は、今までのような幼稚な人気取りの発言、パフォーマンスでは、身内の党員・サポーターからも支持を取り付けることはできないところまで追い込まれているのである。
他方で、菅直人首相は脱小沢を掲げて、当選した。5~6割はそれを支持したといえる。ここで、方向転換をすれば、「やっぱり、口先だけだ」という誹りを受けるだろう。
脱小沢を争点としてしまった(マスコミが争点にすることを許してしまった)菅直人首相は、自分自身をジレンマに追い込んでしまったといえる。
しかし、党内バランスやポスト争いに時間を費やしている暇はない。
問題は山積している。市場は素直であり、代表選で菅首相の当選が決まって、円高は一時82円台まで進んだ。
政府は介入を決定し、85円台まで円安が進み、ロンドンやニューヨーク市場でも介入を継続しているようである。
しかし、私はこれに対しても、介入失敗するのではないかとの懸念している。
ブルームバーグによれば、仙谷官房長官は、「82円台が防衛線かとの質問に対しては、『財務相の方でそう考えていると思う』」との不用意な発言をしたようである。
当然この発言はCNNニュースでも取り上げられており、世界中に82円が防衛線であることが伝わったと言える。
Yoshito Sengoku, chief cabinet secretary, suggested to reporters that the finance ministry saw levels of Y82 as a line of defense for the economy.
経済、為替が素人の私でも、このような手の打ちを明かすような発言が百害あって一利ないと感じる。
なぜならば、暗に82円台まで落ち込んでも介入しないと言っているようなもので、介入による円安効果を減殺する発言と言えるからである。
自民党時代であれば、マスメディアがこぞって取り上げ、批判したであろうが、なぜかほとんどのメディアが取り上げていない。
私は、今回の仙谷発言は、漢字の読み間違いとは比べ物にならない大失言だと思うのであるが、なぜ批判の声が聞こえてこないのであろうか。
どういう意図を持ってかわからないが、このような不用意な発言をしてしまう官房長官が留任するというのであるから、介入は税金の無駄遣いに終わり、今後も円高は続くのではないかと感じている。
今後、この介入を市場がどう判断するのであろうか。
最新の日経新聞の報道では、過去最大の2兆円超での介入であるという。
私は経済には素人なので詳しいことは解らないが、スイスの失敗という事実を考えると、これだけの金額を投入したにもかかわらず、日本政府の円安誘導戦略には、「大した効果がない」とさらに円高の加速に弾みをつけ、結局今まで以上に国益を失う結果になるのではないかと危惧してしまう。そうならないことを祈るばかりである。
既に同じような懸念を示す経済記事も散見される。
為替介入には副作用が多いことも認識する必要がある。今回介入を行った午前10時35分の水準は1ドル=83円ちょうど近辺。市場では83円ちょうどが日本の当局の「介入ライン」とみなされることになる。今後、再びドル・円が下落して83円割れが迫った際に介入が行われなければ、「当局は円高容認」と受け止められて投機的な円買いが一気に強まるリスクが伴う。直近では、スイス中銀がスイスフラン売り介入の実施を宣言しつつも、対ユーロでのフラン安誘導に失敗した例がある。
民主党代表選を勝ち抜き、「第2次菅政権」の樹立に動きだした菅直人首相。その出発にあわせて円売り介入に踏み切ったものの、円安誘導はままならず、日本経済のデフレからの脱却も容易には行かない。
個人で外国為替取引をする人が増えているという話を聞くが、マネーゲームに利用されて、大損をしないように気を付けてもらいたい。
いずれにしても、私が菅首相の立場であれば、真っ先に、防衛ラインという手の打ちを明かしてしまうような誤まったメッセージを送る仙谷官房長官の更迭をし、その理由として、発言が軽いことを挙げ、民主党議員の自覚と引き締めを図るであろう。
しかし、菅首相にそのようなことができるか否かは、彼のリーダーシップなき言動を見ていれば明らかであろう。
今の民主党政権に「自覚と引き締め」を期待するだけ無駄なのかもしれない。
なお、要の財務大臣には民間からあの人を登用するというくらいの行動があれば面白いと思うが、財務省のポストもおそらく論功行賞で留任となり、日本経済が一層弱まるのではないかと思う。
引き続き今回も紹介します。
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