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11/04/2009

前哨戦の知事選では共和党がすべて勝利しオバマ大統領に暗雲。日米外交に影響も。

おかげさまで、ココログに移転して以降の累計訪問者数が9万人を超えました。

今後も、できるかぎり、既存のメディアとは違った独自の視点を紹介できればと思います。

さて、昨日のツイッターでつぶやいたのですが、アメリカでは今後のアメリカ政治を占う上で、重要な3つの選挙が行われ(選挙自体は3つ以上行われたのですが注目されたのが3つと言う意味です)、その結果がでました。

なぜ、アメリカ政治に重要かというと、アメリカでは来年、連邦議会下院の改選、いわゆる、中間選挙が行われ、今回の3つの選挙区は、その前哨戦として注目を集めていたわけです。

まず、バージニア州の知事選。

同州は伝統的に民主党優位の地域ですが、今回は事前の世論調査でも、共和党候補が11ポイント差を付けていました。結果は58%を共和党のボブ・マグドーネル(Bob McDonnell)候補が獲得し、41%の民主党候補を破りました

次に、ニュージャージ州、ここも民主党の牙城ですが、事前の予測では、共和党とデットヒート状態でした。

結果は、泡沫候補の無所属が5%を獲得、現職の民主党候補、ジョン・コージィーン(Jon Corzine)知事が41%にとどまったのに対し、共和党の新人、クリス・クリスティー(Chris Christie)氏が49%を獲得して、共和党の知事が誕生しました。

最後に、ニューヨーク州第23選挙区選出の連邦議会下院議院選挙です。

なぜ米国メディアの注目を集めているかと言うと、同州には保守系の政党として共和党の他に保守党というのがあり、この地域は、保守分裂選挙となりました。

しかも途中で共和党候補が棄権し、民主党候補を支援するという動きも…。

このような保守分裂という混沌とした中であるにもかかわらず、最新の世論調査では保守党の候補が民主党の候補に対し5%から17%の差をつけて優位といわれており、本来保守分裂選挙で、有意であるはずの民主党候補が苦戦していることでも注目を集めました。

ここで、もし保守系が勝利すれば、「中間選挙で民主党が大きく負けるのでは?」とオバマ政権の行き先に暗雲が立ち込めているわけです。

結果は、かろうじて民主党候補が、保守党候補に4%リードし死守した報道がなされました。

さて、このアメリカ情勢ですが、日本にとっても極めて重要な問題です。

アメリカCNNの報道では、今回の選挙が前哨戦という位置づけから、「オバマ大統領へのリファレンダム」という意味があったのではないかとの分析をする政治アナリストが多くいます。

もちろん、民主党系のアナリストは地方選に過ぎないとこれを否定し、共和党系のアナリストはこれを強調しているという状況で、どっちもどっちです。

ただ、今回の結果から明らかなのは、オバマ大統領に対するリファレンダムという意味があるかどうかは別として、オバマ政権に批判を強める共和党陣営が重要視された2つの知事選でかなりの大差で勝利し、そのことはオバマ政権も無視できないということでしょう。

今回の結果を受けて、共和党が、オバマ政権の進めようとする国民皆保険制度に対する批判と反対運動を強めることは予想されます。

また、最新のCNNの世論調査では、この問題に対するオバマ大統領への支持が42%であるのに対し、57%が不支持という数字が出ています。

こうした状況を考え併せると、オバマ政権は今までのようなリベラル色の強い政策を打ち出しにくい状況に追いやられていると言えます。

例えば、共和党はもちろん、民主党の保守系議員がリベラル色の強い国民皆保険制度に対して抵抗し、本年度中の成立が困難になる可能性がでてきています。

さらに、アフガン問題に対する糸口が見いだせていない状況の中、オバマ政権は国内だけでなく、国際問題においても未解決の問題が積み重なっており、今回の選挙結果は、いわゆる風が共和党に吹き直している(少なくとも民主党やオバマ政権への風は止まってしまった)ということが明らかになったわけで、来年の中間選挙を考えると大きな痛手といえます。

さて、これが日米外交にどういう影響を与えるかですが、このように国内問題で失点が続いているオバマ政権にとって、日米首脳会談で、さらに、米軍問題に対する日本の抵抗に会うとなると、オバマ政権の失点はさらに増えてしまいます。

このような国内状況を見越して、オバマ政権は、先日ゲーツ国防長官を使って、日本に日米合意を覆す動きをさせないように、暗黙のプレッシャーをかけて来たわけです。

今までの自民党政権なら、問題なくホワイトハウスの思惑通りの展開になったのでしょうが、現在の鳩山政権では、鳩山首相や岡田外務大臣といったアメリカに対して、はっきりと日本側の主張を伝えるという意思を表明している閣僚が多いことから、ホワイトハウスの思惑通りには現在のところ行っていません。

そこで、考えられるホワイトハウスの戦略としては以下のことがありえます。

まず、日米首脳会談を突然キャンセルし、自民党への水を向ける。

日本のメディアも、日本の国民も、アメリカの国内情勢の分析はできていませんから、突然日米首脳会談をキャンセルすれば、日米関係が鳩山政権により悪化したと大々的に報じるでしょうし、自民党もそういう批判をするでしょう。ホワイトハウスが、今の民主党政権を来年の参議院選挙で終わらせたいと思えば、このような強硬な手段を使うことも考えられます。

また、日米首脳会談をこのまま開催した場合に、オバマ政権が得られる利益は非常の乏しいわけですから、こうした会談キャンセルという手法もないとはいえません。理由は、アフガン情勢や国内問題の見通しがつかないという理由でいくらでも作れます。

ただ、この強行手段はもろ刃の剣です。オバマ政権も馬鹿ではありませんから、日本の民意の分析を十分に行っています。

やはり衆議院での300議席超えは大きく、補選でも民主党が勝利していることに鑑みると、強行手段は日本国民のアメリカに対する抵抗感を増幅させることにつながることはわかっているでしょう。

また、民主党政権が日本で基本的には4年間続くことを考えれば(念願の政権交代を氏、300議席以上あるのに簡単に解散をするわけありませんから)、下手に日本の民主党政権との関係をこじらせるのは得策ではありません。

そこで、今回の日米首脳会談では、沖縄の問題を抽象的にしか取り上げないということが考えられ、これが一番有力だと私は思っています。

というのも、鳩山首相はあまりアメリカ国内の情勢を読み込んで、弱みに付け込んで外交を優位にしようというほど戦略的なリーダーではありませんから、アメリカの状況を慮って、沖縄問題に踏み込まないという予測です。

日米関係悪化というわけのわからない批判を真に受けて、民主党政権が上記のような行動をとってしまうように私は思います。

私見としては、弱っている今がチャンスなのですから、オバマ大統領に対し、日本の、沖縄の直近の選挙で示された民意を伝え、政権としては現在の日米合意は受け入れられないという強い姿勢で臨むべきだと思います。

オバマ大統領も、日本に来た以上、日本の意見を無視するような反論は彼のリベラル色の強い政治姿勢からはすることができないでしょう。

また、アフガン問題で他国の負担を求めたいアメリカの現状を考えれば、日米関係悪化のイメージが出てしまうことも、避けたいはずです。

日本にとっては今が沖縄問題解決の絶好の機会のはずです。

このような機会に付け込まずに、アメリカに恩を売るという日本的な発想で、自民党政権がやってきた外交の結果が、沖縄への負担増大とアメリカの思うがままの日米同盟だったのではないでしょうか。

知り合いの外務省職員にも多いのですが、どうも日本人は外交交渉になると下手に出てご機嫌伺いをするのが効果あると思っているようですが、友人の米国国務省職員にいわせれば、外交交渉とはいかにふっかけるかが重要だということでした。

日米の外交官の意識には大きな差があります。

先日の国会の予算委員会の質疑でも、従来型の外交姿勢から抜け出せない自民党の町村信孝議員は「オバマ大統領が来日とり辞めたらどうするか」と鳩山首相に言ってましたが、米国の「お菓子をくれなきゃ行かないよ」っていうのに付き合う必要ありません。外交はハロウィーンではありません。

今日も、自民党の石破議員が、「日米同盟が危機にひんしている」などと国民の不安をあおるような大衆迎合的発言をしていましたが、これもおかしな話です。

アメリカに沖縄の負担の軽減や、沖縄県民の声を日本政府が代弁すれば、日米同盟が危機にひんするほど脆弱な関係だと本当に思っているのでしょうか。

そうだとすれば、日本は敗戦国としてアメリカの言うことを未来永劫聞き続け、自国の意見を発することができない状況になければ、日米同盟は堅持できないのでしょうか。

そんな日米同盟なら、だれも望んでいないはずです。

石破議員や町村議員のいうような脆弱な日米関係ならば、北朝鮮が攻めて来たって、アメリカがきちんと対応し日本の防衛に寄与してくれるとは思えません。それこそ、日米同盟に固執せず、日英同盟や日豪同盟、日加同盟などアメリカ以外の民主主義、自由主義という価値を共有する国と軍事協力をし、日本の防衛力を高める方が日本にとってより安定的な安全保障をもたらすことになるでしょう。

アメリカの言うことを何でも聞く外交は、アメリカの国際的プレゼンスが著しく低下し始めている現状では、日本の国益に適いません。

にもかかわらず、国民を犠牲にし、「対等」ではない日米地位協定の存在なども無視し、日米関係は対等と言い張る町村信孝議員や、米国を恐れて、「日米同盟の危機だ」と煽り、アメリカの言うとおりにすべきと主張する石破茂議員ような、国民を犠牲にする政治家は要りません。

もっとも、私は鳩山政権の外交方針を積極的に評価しているわけではないことも付言しておきます。というのも、現状では外交方針を評価しきれるだけの実績がなく、評価の対象が存在しないからです。

したがって、鳩山外交に下での日米関係のあり方はこれからが勝負なのであって、今の段階で、アーダコーダ言っている自民党議員も、メディアも薄っぺらく感じるわけです。

自民党議員も、既存の主要メディアも、そういう下らないことに時間を費やす前に、対米外交を本当に考えるのであれば、今回のアメリカの重要な前哨戦の2州の知事選とニューヨーク州第23区連邦議会下院選挙の結果がアメリカの国内政治に与える影響をしっかり分析すべきでしょう。

なお、今回のアメリカでの選挙ですが、このほかにも注目すべき選挙がありました。

例えば、ニューヨーク市長選もあり、結果は現職のブルームバーグ市長が事前の予想に反して苦戦はしたものの、4%リードして勝利しました。

オハイオ州ではカジノの合法化の住民投票が行われ、賛成がややリードしています。

また、メーン州では同性間の婚姻を認める法案の廃止をめぐる住民投票が行われ、結果は53%の得票率で現在リードしている廃止派が既に勝利宣言をしています。

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