三菱重工業と仏アレバの企業連合がトルコで原子力発電所の建設を受注することが確実となった。中国や韓国などの企業と競合し受注は難しいとされたが、日本政府の後押しなどにより優先交渉権を獲得。総事業費2兆円規模とされる原発プロジェクト参加への道が開けてきた。
三菱重工は2012年度に2100億円だった原発設備事業の受注額を、中長期的に最大6000億円規模に増やす目標を掲げる。拡大分の多くは海外向けで、目標達成に向けてトルコ案件は重要な意味を持つ。
三菱重工はこれまで米国で原発建設を先行して進めてきたが、新興国では初の実績となるからだ。米国ではドミニオン電力のノースアナ3号機(バージニア州)とルミナント電力のコマンチピーク3.4号機(テキサス州)の新設計画に参画。政府への申請や初期設計などを進めているが、プロジェクトは遅れてきた。トルコが先に進む可能性もある。
また、三菱重工が当初思い描いた「日仏連携」が機能する形となり、今後の商談にも弾みがつく。三菱重工は07年、フランスの国策会社のアレバと提携した。中型原子炉の共同開発が柱。開発費の負担軽減のほか、営業面でも日仏両政府の後押しを得られるという効果も期待していた。
トルコは日本と政治的に親密な関係にある。それが今回の優先交渉権獲得に結びついたとみられる。建設する原発の運転は豊富な実績を持つ仏電力会社GDFスエズが担う。新興国での受注では原発の運営への参画を求められるケースが多い。原発大国のフランスの電力会社と連携できることは強みとなる。
今後ヨルダンなどの商談でも日仏連合として丸抱えで請け負えることを訴えられるからだ。
他の日本メーカーも日立製作所が英ホライズンを買収するなど、原発事業の海外展開を急いでいる。ただし日立の受注がほぼ確実となったリトアニアで実施された国民投票で「建設反対」が多数となるなど、先行きには不透明感もある。
国内で原発を建設できる可能性は当面低い。メーカーが長年にわたって原発の建設に関与しなければ、圧力容器や蒸気発生器といった主要な機器の生産に必要な技術を熟練層から若手に伝承できない懸念もある。各社は原発技術を維持するためにも、海外事業へ一段と力を入れる構えだ。